「死ぬために生きている人々」の死生観とは!? インドネシアのトラジャ族の墓と葬式を現地取材/小嶋独観
珍スポを追い求めて25年、日本と世界を渡り歩いた男によるインドネシア屈指の珍スポ紹介!
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珍スポ巡って25年の古参マニアによる全国屈指の“珍寺”紹介! 今回は「高野ロウソク地蔵尊」の奇祭をレポート! お地蔵さんに火を放つ壮絶すぎる光景とは――!?
以前からずーっと行ってみたかった祭りに行く。思いのほか乗り継ぎの悪い電車とバスに揺られ、田舎道をトボトボ一人歩く。
ここは茨城県古河市のド郊外。
ああ、日が暮れてきちゃった。
周囲は広々とした畑の中に家が転々とあるだけで街灯はほぼない。
段々肉眼では道が見えなくなってきた。あとはスマホのライトだけが頼りである。
真っ暗な道の先に一か所だけぼんやり灯りが点いており、そこに人が集まっているようだ。
おおお、これぞ本日のお目当て、高野ロウソク地蔵尊の祭りだ。
この祭りは300年以上前から行われている。ロウソクをお地蔵さんに供えて健康を祈願するというものだ。
祭りとしての規模は小さい。
運営するのはテント下の受付、役員的な人たちが10人ほど、お地蔵さんのある地蔵堂に3~4人ほど。そこに常時3~4人の参拝客が入れ替わりで来る感じ。2日間やっているので参拝客も分散されるのだろう。
さて。肝心のお地蔵さんだが、参拝者が自分の身体の悪い部分を世話役の人に伝えると、世話役が該当部分にロウソクを点けてくれるシステムになっている。
つまりこういう事である。
ぬおおおお! お地蔵さん、火炙りになっちゃってるじゃないの!
地蔵自体は像高1メートル程で、同じく1メートル程の台座の上に立っている。その台座の高さに板を渡して足場を作り、そこに世話役の人が立ってお地蔵さんにロウソクを供えている。
狭い足場で一歩踏み外せば自分が火達磨になってしまう可能性もある危険な作業だ。多分毎年ベテランが務めているのだろう。カッコいいぜ。
身体の悪いところにロウソクを供えて健康を祈願する。
ロウソクは一箇所コースと全身コースがある。マッサージみたいですね。
気になる全身コースだが、
こんな感じで全身を火達磨にしてくれます。
特に手や頭は形状的にロウソクを点けるのが難しいようだ。
最早ロウソク点け師と言っても過言ではない。
全身コースが始まると火柱が一気に上の方まであがり、お地蔵さんが文字通り全身火に包まれる。何でも一晩に2~3千本のロウソクを灯すのだという。
お地蔵さんというより不動明王みたいになっちゃってます。
それにしても熱い! ただでさえ気温が高いのに、近づくと炎の熱でさらにヒートアップしている。
お地蔵さんにしてみればとんだ災難である。
基本的には地蔵菩薩は衆生を救うホトケとされていて、庶民には一番馴染みの深い存在だ。それだけに他の諸仏よりもフランクに扱われている節がある。
例えば泥棒の身代りとして縄で縛られたり、塩をかけられて溶けちゃったり、味噌をべったり塗られたり、等々。
それだけ親しみがある、という事なのだがそれにしてもいくらなんでもお地蔵さんの火炙りはハード過ぎるぞ。
山梨県で雨乞いの時、川にお地蔵さんを落としちゃう祭りがあるがそれと同じくらい、いやそれ以上にショッキングな光景だった。
近くまで寄れないためお地蔵さんの表情までは判らないが、コレとかスカルっぽくないすか?
火点け名人によるファイヤーワークに見とれていたらあっという間に終了の時間が近づいてきた。
享保4年に始まったこの祭りも令和元年に300周年を迎えた。
ロウソクを点けていた人いわく、人々の病や厄を払ってくれる存在としてロウソク地蔵を誇りに思っているという。
かくして全身炎に包まれながら高野部落の夜は更けていくのであった。
帰り道? もちろん真っ暗でしたとも。
で、興奮の祭りの数日後。
考えてみたら、ロウソク地蔵にあまり近づけなくて(燃えてるし)表情や細かいところが判らなかったのでもう一度行ってみることにした。
祭りの時とは打って変わって静かな地蔵尊。
祭りの時は紅白の幕を張り、様々な飾りがなされていて良く判らなかったが壁のない建物だったんですね。
スケルトンのお堂に立つロウソク地蔵。
先日はお疲れ様でした…。
当日は全く表情など見られなかったが、火炙りにされた割には穏やかな表情をされている。
先日のお礼に手を合わせる。お勤め、ご苦労様でした。
先日見た時は表面がロウソクの蝋でテラテラしていたが祭りの後に皆さんで綺麗に掃除したのだろう。
足元に鍾乳石のように堆積していた蝋は綺麗に落とされていた。
実は石の上でロウソクを付けると蝋が石にしみ込んでしまい、結構取るの大変なんですよ。よくお墓参りの際、墓石に蝋を垂らしてロウソク立てる人いるでしょ。アレやっちゃうと蝋が石に染み込んで絶対取れないからやらない方が良いですよ。以上お墓参り豆知識でした。
多分この石像も細かい凹凸があるから蝋を除去するのに結構大変だったと思う。世話人さんたちの御苦労が偲ばれますなあ。
台座。
こちらはロウソクの跡が残っていた。
端っこを少し触ってみたが指先に煤が付いた。
後頭部より天井を見る。
中央の天井がないのは祭りの際、建物に火が燃え移らないようにしているのだろう。
そう言えば祭りの最中もしょっちゅう屋根裏や梁に水をかけて燃えないようにしていたっけ。
地蔵堂の隣に小さな祠があり、その中に初代の地蔵尊が安置されていた。実は現在の地蔵像は2代目なのだ。初代の地蔵は享保4年に建立されたが毎年ジャンジャン燃やしているものだから破損してしまい、この台座だけを残して昭和11年に再建されたのである。
胴体の右手に持った錫杖の痕跡をわずかに留めている。200回以上焼かれ続けるとこんな事になるんですね。
元来石は火には強くないのでどんどん爆ぜてしまったのだろう。それでもこうしてちゃんとお祀りしてあるところに地域の方々のこの地蔵尊に対する思いが感じられた。
今の地蔵尊も90年近く経っている訳だが、あと100年も経つとこんな風になってしまうのだろうか? 衆生の苦難を一身に引き受ける役割の地蔵菩薩ではあるが、身代りというよりは生贄のような、あまりにも壮絶な祭りであった。
小嶋独観
ウェブサイト「珍寺大道場」道場主。神社仏閣ライター。日本やアジアのユニークな社寺、不思議な信仰、巨大な仏像等々を求めて精力的な取材を続けている。著書に『ヘンな神社&仏閣巡礼』(宝島社)、『珍寺大道場』(イーストプレス)、共著に『お寺に行こう!』(扶桑社)、『考える「珍スポット」知的ワンダーランドを巡る旅』(文芸社)。
珍寺大道場 http://chindera.com/
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