奇怪な蔵書を管理するだけの怪しいお仕事 『BOOK OF HOURS』で司書になる/藤川Q・ムー通

文=藤川Q

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    ゲーム雑誌「ファミ通」とのコラボで ムー的ゲームをお届け! 今月は, 本を主題としたゲーム史上最も慧眼なる神秘思想作品。

    司書だけではない!?

     ゲームというメディアを通じて表現されるエンターテインメント作品は数あれど、愛書家による読書体験をインタラクティブに描いて見せた作品は、世界広しといえども、今回ご紹介する『BOOK OF HOURS』をおいてほかにあるまい。

     一冊の本を手に難破船から見知らぬ浜に放逐されたあなたは、崖の上にそびえる屋敷"沈黙の家"へとたどり着く。門には、こう刻まれている。
    "本は不死の記憶である"と。
     その警句の通りに、広大な館のなかは、神秘学から魔術、天文学、幻想文学などのあまたの古書から奇書までが遺されていたのだった。

    『BOOK OF HOURS』では、この広大なる屋敷の内部を、ふもとの村人の協力を得ながら修理しつつ探索。そこで見つけた膨大なる蔵書を紐解きながら、分類・管理する"司書"となることに。もちろん訪問者の案内もすることもある。

     名前や上っ面の設定だけをトレースしたような作品とは異なり、本作は世界の神秘を懸想しつつ、カルト教団を設立して異世界の神を呼び出すカードゲーム『CultistSimulator』を生んだWeatherFactoryの最新作。それだけに瞑想的な"智慧の樹"に配された人間の魂を9段階に分類したチャートを開放し、啓示的な書物が暗示する時の神々の真実へと到達するといった、現実でも同様の書籍群を愛してやまない読書家なら、きっと無意識にでも惹かれてきたであろう、深奥の到達点もゴールとして設定されている。

     本作でゲームがついに到達した、広大な屋敷の気に入った場所に腰を落ち着け(やや太り気味で半長毛の猫を連れてきてもいい)、紅茶を淹れて発見した本を理解し、内容に沿って書棚に並べるという愉悦の体験。ムー民の皆様なら、きっとこの屈指の名作の上質さを堪能いただけよう。

    本作のムー民度  ★★★★★

    Steam 2800円 配信中
    © 2023 Weather Factory All Rights Reserved

    (「月刊ムー」2023年10月号より)

    藤川Q

    ファミ通の怪人編集者。妖怪・オカルト担当という謎のポジションで、ムーにも協力。

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