三度も出現した「トイレのイグアナさん」の話など/南山宏のちょっと不思議な話
「ムー」誌上で最長の連載「ちょっと不思議な話」をウェブでもご紹介。今回は2023年6月号、第470回目の内容です。
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スペインの名門ザラゴーザ大の心理学研究グループによれば、自分がいわゆるUFOアブダクションケース――〝異星人誘拐事件〟の被害者だと信じる人たちは、普通の(人間による)誘拐事件の被害者たちに比べて、いわゆるPTSD(心的外傷後ストレス障害)つまり受けたトラウマの度合いが非常に大きいという。
2021年12月15日付「デイリーメール」紙によると、研究者たちは次のように結論している。
「彼らの記憶が真実かそれとも幻想かのいずれだろうと、彼らの恐怖そのものは本物である!」
昨年8月、トルコはデュズジェ県の自然保護官たちは、道に迷ってうろうろしている雌の仔熊を発見して保護した。
ピックアップトラックの荷台に載せられた仔熊は、ふらふらよろめいたり、よたよたしながら何か目に見えないものに向かって唸ったり、掴みかかったりして、明らかにハイな状態になっている。
保護官たちの推測では、どうやら大好物の蜂蜜を大量に摂取したのはいいが、それがあいにくマッドハニー(トルコ語でデリバル)と呼ばれるご当地特産の毒性の強い蜂蜜だったのだ。
この有毒性蜂蜜は、美しいが有毒な黄色い花を咲かせるキバナツツジから集められた蜂蜜で、強力な神経毒のグラヤノトキシンを含有する。キバナツツジはヨーロッパ南東部からアジア南西部にかけて、原野でも人家の庭でも生育する高さ数メートルの低木だ。
昨年8月11日付の「ガーディアン」紙によれば、幸い保護された仔熊は翌日になると、どうやら元通りの正常な状態に戻った。
野生に戻すか、それとも最寄りの動物園に引き取ってもらうか決定するまで、このまだあどけない仔熊は獣医師たちの管理下に置かれることになり、早くも手回しよく愛称を地元民から募集する話が持ちあがっているそうだ。
芸術の都パリの国立近代美術館が展示物の模様替えを行うことになったとき、1945年以来展示されている1点の油彩画の、展示する向きが改めて問題になった。
抽象画家ピート・モンドリアンの1942年作『ニューヨーク市1丁目』と題するその絵は、上下が逆さまに飾られていたのだ。
黄色の直線を主体に赤や青の直線が上下左右に交差している絵柄だが、仮に上下左右を入れ替えたとしても、絵柄の印象はまったく変わらなかった。
だが、同館の学芸員スザンヌ・マイヤービュザーさんが、画家のアトリエにその絵が置かれている古い写真を発見して確認したところ、美術館での飾り方は誤りで、本来は上下が逆さまだったことが判明したのだ。
でも、さらによく調べると、この絵は粘着テープで画枠に接着されていて、むりやり逆さまにすると、絵そのものを傷める恐れがあることも明らかになった。
「BBCニュース」紙2022年10月28日付の報道によると、結局このモンドリアンの抽象画は、上下が逆さまのまま展示されることになった。
英国のマンチェスターに向かう通勤者は、電車の窓から見える巨大な看板にびっくりした。
『求む超能力者:あなたなら応募先がわかるはず!』
謎のスポンサーのためにこの巨大看板を立てたマンドメディア社の話では――
「スポンサーはあくまでも真剣で決してジョークではありません。いつ、どこで、誰に、どうやって連絡すればいいかは、超能力者ならわかるはずです!」
そしてつけ加えた。
「当社はこの実験に真剣に取り組んでいます。実際にうまくいったら、それは世にも信じられない画期的な出来事になるでしょう!」
フロリダキーズ沖合いを遊泳中のシュノーケルダイバーが、海面をぷかぷか浮き沈みしている大きなビニール袋を発見した。
袋を開けると、中には〝赤いテープでぐるぐる巻きにされた黒くて硬い塊り〟が、ぎっしり25個も詰め込まれていた。
仰天したこの匿名の〝善きサマリアびと〟は、すぐさま国境沿岸パトロール隊に届け出た。
2021年3月5日付「ニューヨークポスト」紙によれば、パトロール隊員が調べた袋の中身はなんと160万ドル(約2億2000万円)相当の極上質の麻薬コカインだった!
記録的な熱波と日照りに直撃されて苦しみ悩んだ結果、インドはゴラフプールのラダーカント・ヴェルマさんは、先祖伝来の解決法に頼って〝蛙の嫁入り〟の儀式を執り行うことにした。
2022年7月20付「デイリーニュース」紙によれば、ヴェルマさんと仲間たちは、7月19日、蛙を2匹捕まえてきて、地元の住民数百人が見守る前で、祝宴の儀式を盛大に催した。
効果は覿面で、翌朝、インド気象局は該当地域一帯に豪雨襲来を予報し、その通りになった。
ロシアのバシュコルスタンで2016年、ある女性(匿名)の家族の誰かが逃げる車上から偶発的に撮影したロシア版ビッグフットのビデオ映像が、昨年5月23日、イギリスのユーチューバー・チャンネルで公開され、世界の未確認動物学者やアマチュア研究家たちの関心を掻き立てた。
といっても残念ながら、夕方の残光で撮られた映像はきわめて不鮮明で、丈の高い草叢に立つ上半身の影しか見えない。
女性の悲鳴と共にほんの一瞬だけ頑丈そうな体形が映るその黒い影は、おそらく女性の家族が乘る車をしばらくは追いかけたようだが、猛スピードで逃げる車にはかなわず、後方に取り残された――
ロシアでもアメリカ同様、ビッグフットの目撃例は数多く、アルマス(ティ)とも呼ばれている。
南山宏
作家、翻訳家。怪奇現象研究家。「ムー」にて連載「ちょっと不思議な話」「南山宏の綺想科学論」を連載。
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