世界が震えた怪鳥造形から手引き霊柩車まで…呪物に愛された男・相蘇敬介の禍々しき生き様

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    昨今の「呪物」ブームのはるか昔から「呪物」に魅了され、蒐集してきたひとりの男。あの事件にも巻き込まれてしまったその男の名は……!

    「MOMO」チャレンジに巻き込まれた造形作家

     ある日突然、MOMOと名乗る謎の人物からメッセージアプリにコンタクトがある。応答してしまうと徐々に過激なミッションを課され、やがては自殺に誘導されていく……。
     5年ほど前、世界中の少年少女を震えあがらせた「MOMOチャレンジ」事件を覚えているだろうか。のちに誤報と判明したものの当時は実際に命を絶ってしまった被害者も出ていると報じられ、世界的なニュースとなった。

     そのセンセーショナルな内容とあわせ、MOMOチャレンジが注目された一因には、犯人とされる人物のアイコンがあまりに衝撃的だったからという面もある。

    2018〜19年頃をピークに世界的に報じられた「MOMOチャレンジ」事件。

     この画像に見覚えのある人も多いだろう。なにか、心の奥にある根源的な恐怖を刺激されるような、強烈なビジュアル。

     実際にはこれはMOMOなる人物の写真ではなく、あるアーティストの造形作品であることが判明している。その作家こそ本記事の主役、相蘇敬介(あいそけいすけ)さんだ。

     相蘇さんは、テレビ番組などに使用される特殊造形を扱う製作会社LINK FACTORYの社長で、本業のかたわら自身のオリジナル作品の製作もおこなっている。「MOMO」に使われたのも、そうした一環でつくられたライフワーク的な作品のひとつだったのだ。

    相蘇敬介さんと、MOMOに悪用されてしまった作品「姑獲鳥」。現物はなぜか溶け崩れてしまい、この姑獲鳥は復元された2作目となる。

     そのモチーフは妖怪「姑獲鳥」。お産で命を落とした女が変じたものとも、子どもをさらう妖怪ともいわれるものだが、相蘇さんがwebにアップしたその画像が、本人もあずかりしらぬところで無断使用されてしまったのである。

     インパクトが犯人の目をひいたのか、あるいは「姑獲鳥」というモチーフが図らずも犯人の悪意に感応してしまったのか……いずれにしても相蘇さんも被害者なわけだが、当時は相蘇さんに対しても中傷メッセージが届いたことがあったという。

     一連の経緯については海外メディアによる調査報道がおこなわれたこともあるが、今回ムーが相蘇さんに取材を申し込んだのはこの事件に関するものではない。

     じつは相蘇さん、知る人ぞ知る、特級の「呪物」コレクターなのだ!

    特級「呪物コレクター」相蘇敬介

     昨今の怪談人気やあの人気漫画の影響もあってか、最近でこそ「呪術」「呪物」ということばは割と一般的に聞かれるようになった。しかし相蘇さんが「呪物」蒐集をはじめたのははるか昔、まだ呪物ブームの「じゅ」の字もない10年以上前のことになる。

    「呪物」とは、なにかしらノロイやマジナイに関連する物のことで、広くはお守りやおふだも呪物の一種ということになる。が、一般的な「呪物」のイメージは「呪われた(呪われる)物」くらいで、喜んで集める人など普通はいない。

     相蘇さんも、当初はあえて「呪物」と意識して探していたわけではなく、本業の関係もあり、ちょっと不気味だな、造形として面白いなと感じられ、そこにプラス「いわく」がついたものに興味をもったのがきっかけだったという。

     今から10年ほど前、相蘇さんが怪談師・オカルト研究家の吉田悠軌さんや、今や「呪物」界隈でも大人気の田中俊行さんたちと一緒にタイを旅行したときのこと。現地で出会ったクマントーンというお守りにいたく心をひかれ購入したのが、「呪物」入手の第一号だった。クマントーンは胎児のミイラを加工してつくるものだというのだが……相蘇さんが入手したのはもちろんそのレプリカだ(詳細は本記事の後編で)。

    写真中央がタイの呪物クマントーン。右に写る人形はこれまたタイの呪術人形ルクテープ。

     これをきっかけに、おなじく東南アジアの胎児の呪物トヨルや、その他国内外の「いわくつきのもの」収集がはじまることになる。結果、現在では相蘇さんのお宅には一室をいっぱいに埋め尽くすほどのコレクションが並んでいる。

     こちらがコレクションルーム。棚にも床にもずらりとならぶ「いわくつき」のものたち。詳細は後編で紹介するが、民俗資料といったものから、まさに「呪物」としか形容できないものまで種類もさまざまだ。

    大型コレクションは屋外に「駐車」中

     なかには、部屋に収まらず屋外で保管されているビッグサイズの収集品もある。それがこちら、リヤカー型の手引き霊柩車だ。

     半世紀ほど前まで手引きの霊柩車は全国的に使用されていて、この霊柩車も、三重県で実際に葬儀につかわれていた歴史のあるもの。平成の頭ごろまでは現役だったがやがて時代の変化でしまい込まれることになり、壊すのも忍びないと自治体が引き取り手を募集したところ全国から応募が殺到。そのなかから最終的にくじ引きで受領の権利を獲得したのが、相蘇さんだった。

    相蘇さんが引き取ったリヤカー型の手引き霊柩車。

     応募総数は(ひやかしを含め)600件近かったというから、相蘇さんのヒキの強さがうかがえる。

     もちろん霊柩車は「呪物」ではないが、人の思いがこもったものであることは間違いない。そしてその保管のために月々駐車料金を支払っているのだから、並並ならぬコレクター魂である。

    「呪物」が引き寄せる? 相蘇家におこった奇妙な話

     ところで、家にこれだけの「呪物」があって、相蘇さんは呪われないのだろうか?

     ご本人いわく「まったく何もないです」とのこと。過去に霊能者から「あなたはとても強いご先祖さまに守られてるから大丈夫」といわれたこともあるそうだ。怪談を収集したり、呪物を集めたりする人にはこのタイプが多い印象も……。

     ただ、いっぽうで相蘇さんのご家族は、たまに奇妙な体験をしているそうだ。

    コレクションのひとつ、死者に着せる経帷子の現物をみせてくれる相蘇さん。もちろん未使用品。

     こちらは相蘇さんの奥さまの体験。

     奥さんがひとり家にいたある日のこと。相蘇邸の呪物ルームは、基本的に普段は引き戸を閉めっぱなしにしている。ところがその日、気がつくとなぜか戸が半開きになっている。
     いじった覚えはないし、家には自分しかいない。不審に思いながら閉めようとすると、その瞬間、呪物部屋からとてつもない悪臭が漂ってきたのだそうだ。それは肉の腐ったような、強烈な腐敗臭だったという。

     さらに、奥さんが「くさい!」と戸を閉め、部屋から離れかけたとき。

     ドン!と、向こうから壁を殴りつけるような音が響いた。もちろん、部屋のなかには誰もいない。

     震えて家を飛び出してしまいそうな出来事だが、さすがは「呪物」コレクターの奥さん、この音に、ものすごい怒りを感じたそうだ。家主はうちだぞ、ふざけんな、と、奥さんは思い切り壁を蹴り返したのだという。

     それでぱったり、悪臭と音はおさまったのだとか。念のため、相蘇さんのコレクションに生ものはないことを申し添えておく。

    コレクションルームには、壁面にもびっしりと古今東西の仮面が飾られている。

     また、こんなことがあったとか。

     「呪物コレクター」として、相蘇さんは何度かテレビ番組にも出演されている。

     数年前にも夏の怪談番組に出演することになり、制作スタッフとの打ち合わせで、先方に秘蔵の「オシラサマ」の画像を送ることになった。

     ところが、スマホで撮影した写真をLINEで送ろうとしたところ、原因不明のエラーメッセージが続出してどうにも送ることができない。別の方法を試したのだが、どのツールを使ってもやはりエラーになってしまう。
     どうしようもないのでスマホからの送信をあきらめ、いったんPCに転送してそこからメールしようということになった。ところが、写真を転送した瞬間に今度はPCが不調に陥る。
     不調どころか、ついにはPCのドライブひとつ分のデータが全て消し飛んでしまったというのだ。通常業務にも使用しているPCだったため、そちらまで消滅してしまってはシャレにならない。しかたなく画像の送付は断念、PCのデータも泣く泣く諦めたが、どうにか被害はそこまででおさまったという。

     怪談としても、別の意味でもとてつもなく恐ろしい話だ。その「どうやっても送れなかった写真」がこのオシラサマのものなのだが、閲覧中のデバイスに不調は起こっていないだろうか。

     明日公開の後半では、相蘇コレクションのなかから選りすぐりの「呪物」をご紹介したい。

    取材時のインタビュー動画はこちら!

    相蘇敬介さんのTwitter。気になる呪物があれば受け取りたい、とのこと。

    webムー編集部

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