能町みね子が喝破した「ムー」読者の正体とは!? 書籍「雑誌の人格 3冊目」に収録
「雑誌の人格」で描かれた「ムー」はどんな人格?
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「ムー」本誌の隠れ人気記事、ブックインフォメーションをウェブで公開。編集部が選定した新刊書籍情報をお届けします。
田中俊行 著
見るも禍々しい呪物の数々が迫力満点の写真で執拗に紹介される
また何とも悪趣味な本が登場したものだ(誉め言葉)。何しろ「見るだけで障る圧倒的呪力」と、帯に堂々と謳われている。
そんなもの、「見るな」といわれているのと同義であり、普通の神経をしていたら、絶対に見る気にはならないだろう。
評者は仕事であるから、仕方なく見るハメとなったが、わざわざ「障る」と断言されているモノを、好き好んで見るという人は、よほどの異常なメンタルを備えた豪の者であろう(誉め言葉)。本欄としては、あえて本書を推奨は致しかねる。
さて、一応警告はしたところで、内容紹介であるが、まず著者の田中俊行氏は「怪談・呪物蒐集家」であり「オカルトコレクター」。以前、本欄でご紹介した『本当にあった「呪物」の怖い話』の、著者のひとりでもある。そう、本書に収録されたおぞましい呪物の数々は、すべて著者の所蔵する蒐集品なのだ。
本書は、総計54点にのぼる無気味な呪物の数々を、フェティシズムあふれる迫力満点の写真で執拗に紹介する、ビジュアル重視の一冊なのである。
所有者が次々に事故に遭う「サイコ絵画」だの、本物の呪詛が刻まれた「釘つき人形」だのといった、思わず目を背けたくなる「怨念が籠もった呪物」。
著者がわざわざ魂を入れてもらいに行った「オシラサマ」や、本物のチベット高僧の頭蓋骨「カパーラ」などの「神と信仰の呪物」。
可愛がる人を次々に呪う人形「チャーミー」に、僧侶の遺灰で作られた仏像で、謎の悪臭を発し、その悪臭が人に付いて回るという「ポン」などの「霊が憑依した呪物」。
そして京都で暴れた妖怪「鵺の手」や、夜中に勝手に捲れる仏典「死者の書」などの「数奇な運命の呪物」まで、見るも禍々しい呪物の数々が収録されている。
著者が所蔵する呪物の数は、100点を優に超えているというから、まったくどうかしているとしかいいようがない(誉め言葉)。
写真は、どれも強烈かつインパクト絶大なものばかりなのだが、そこに添えられた解説のほうは、ほんわかした関西弁の文体が、非常にいい味を醸し出している。見るだけで精神に異状をきたしそうな異様な呪物の写真に対し、呪物愛あふれるこの解説文が、絶妙な中和剤となっているといえよう。
鈴木宣弘/真田幸光/深田萌絵ほか 著
陰謀のみならず、現在の世界情勢を理解できる事典
標題をよくご覧いただきたい。本書は「陰謀論」の事典ではない。あくまでも「陰謀」の事典である。編者によれば、「陰謀論という言葉は、陰謀を策す連中が作った言葉」であり、「陰謀はあるが陰謀論はない」。そして「陰謀論自体が」「陰謀を覆い隠すための陰謀」だというのだ。
そして現在、われわれ日本人の財産と生命を奪い盗らんと、虎視眈々と狙うさまざまな陰謀が、世界規模でリアルタイムに繰り広げられ、日本人を騙している。では、その陰謀とは具体的には何か。
本書はテーマを「金融」「IT」「食糧」「環境」「製薬・ワクチン」の5つの章に分け、各章の前半で編者が、それぞれの専門家に徹底インタビュー。この専門家たちの顔ぶれがとにかくすごい。
金融は愛知淑徳大学教授の真田幸光氏、ITはITビジネスアナリストの深田萌絵氏、食糧は東京大学大学院教授の鈴木宣弘氏、環境は中部大学総合工学研究所特任教授の武田邦彦氏、そして製薬が大阪市立大学名誉教授の井上正康氏である。信頼に足る彼らの証言を読めば、日本人の置かれている、本当に深刻な状況がひしひしと実感され、背筋が寒くなる。
そして各章の後半は、理解をさらに深めるための用語事典となっている。この項目チョイスが実に絶妙で、陰謀云々よりも、現在の世界情勢を理解する上で、非常に便利な事典となっており、ちょっとしたビジネス用語集の趣がある。これは必携。
ジェイソン・モーガン 著
魂を込めて告発する現在のバチカンの真の姿
全世界に、13億人以上の信徒を抱える、世界有数の大宗教であるカトリック。だがその総本山であるバチカンは、今や、腐敗の極みにある。 本書の著者であるジェイソン・モーガン氏は、そう断言する。氏はアメリカのルイジアナに生まれ、日本や中国で歴史などを学んだ研究者で、現在は麗澤大学准教授。
氏によれば、カトリック教会は今や「共産主義、……ジェンダー主義、グローバル主義、そしてあのサタン主義に従っている悪質なグローバリストたちに乗っ取られて」いる。
カトリックの教義とはまったく相容れないLGBTQが教会を侵食し、ゲイの司祭が小児性愛に耽るという惨状。そして氏によれば、昨今やたらと喧伝されるLGBTQ等は、既存の社会の破壊を目指す「文化マルクス主義」に他ならないという。
そして今や、カトリック教会は「中国の思想的、政治的、金銭的な奴隷」に堕しているというのだ。中国といえば、もはや人類共通の敵といっても過言ではないほど「モンスター化した恐ろしい独裁の国」。バチカン支配は、中国による世界支配計画の一端に過ぎないのだ。
単なるカトリック批判にとどまらず、現在の世界が抱える諸問題を、克明にあぶり出す必読書。
心からカトリックを愛する、敬虔なカトリック信徒である著者が、魂を込めて告発する現在のバチカンの真の姿には、だれしも身震いを禁じ得ないであろう。
鈴木喜生 著
本当に行けるツアーと「行けたなら」のツアーを紹介
宇宙旅行は、もはやSFの世界だけのものではなく、「すでにはじまっている現実」である。21世紀も4分の1に達しようかという現在、ようやく一般人が宇宙を旅することも、現実的に可能となってきた。
さて、「旅する」といえば、旅行ガイドは欠かせぬもの。そこで本書の登場である。本書は文字通り、行って楽しく見て感動する、太陽系各地の名所旧跡を、コンパクトにまとめたガイドブックである。
まず第1章「ホントに行ける宇宙パッケージツアー」では、標題どおり、現時点で実際にあるツアーの数々が紹介される。
そのひとつ、ZOZO TOWNの前澤友作氏が参加した「ソユーズで行くISSの旅」は、何と費用が50億円もかかったそうだが、旅行代理店のHISが提携する「バルーンに乗って成層圏へ」という6時間のツアーなら、ひとり12万5000ドル程度と、何とも格安である。
第2章以下は「もしも行けたなら」という体で、月や火星からカイパーベルトまでの見所が案内される。
さて、まさにイマドキの本ならではの工夫が、各ページに埋め込まれたQRコードである。これをスマートフォンなどで読み込めば、そのページと関連したYouTube動画を見ることができるのだ。
無論、本自体も全頁フルカラーで、思わず溜息が出るような宇宙の写真が満載されている。実に愉しく、また美しい一冊である。
陰陽道史研究の会 編
多種多様な角度から陰陽道を研究し尽している一冊
「陰陽道」に関する研究は、1990年代以後に、急速に進展した。このころに、陰陽道とは「陰陽師等を中核とし、かれらが専門的に掌った学術・技能および職務が一体化したものとして九世紀後半から十世紀に成立した概念」と、歴史的な所産であることが明確に定義され、定説化されたのだ。
これを指針として、以後の陰陽道研究は著しい進展を遂げ、研究テーマは、今も緻密化・深化を続けている。
本書は、学界における今日の陰陽道研究を、広く一望する学術論文集である。「呪術としての陰陽道」、「学術としての陰陽道」、そして「東アジアという視点」の3部構成で、総勢25名におよぶ気鋭の学者たちが、多種多様な角度から陰陽道を研究し尽している。
とくに第3部。1996年に陰陽道は中国起源ではなく、日本で独自に成立したという説が提唱されて以来、「陰陽道中国起源説を説く者はいなくなった」。だが2020年に提出された論文で、再び大陸起源説が見直され、「東アジアの陰陽道」という視点が再浮上してきたという。
このように、学界における最先端の論争の動向を垣間見ることができるのも、本書の魅力である。
とはいうものの、何しろ専門的な学術書であるから、読み通すのは容易なことではない。
相当高度な古文と漢文、それに陰陽道自体と日本史などの関連知識は、最低限必須である。覚悟を持って臨みたい一冊である。
神沢瑞至 著
「気療理論の頂点」の全容を明かす「最後の著書」
本書は、著者・神沢瑞至氏の「最後の著書」であるという。著者は今から30年ほど前に「脳幹ショック」を体験。これをきっかけに「自他治癒力」に目覚め、「気療」の世界に足を踏み入れた。
以来、著者は気療によって数万人にのぼる人々を癒すとともに、また多数の著書を発表して、気療の原理や現象学について世に問いつづけてきた。本欄でもかつて、著者の『気療講座3 癒しの人体地動説』をご紹介したことがある。そして著者は、気療に関しては、これまでの著書ですべてを語り尽くしたと考えていた。
だがあるとき、著者は今まで触れられていなかった、「気療理論の究極の一点」の存在に気づいた。「強い〈脳幹電流〉の発生」がそれである。それによって、体質改善ならぬ「体質改造」が起こるというのだ。
本書は、これまで明かされていなかった「気療理論の頂点」の全容を明かす「最後の著書」である。本書によれば「気療ハンド」という特殊な手の形を採ることで「体内に強い気療生命エネルギーが発生・発散され」「自他治癒力を身につけることができる」という。そしてこのエネルギーはPCやスマートフォンなどの通信機器によって増幅されたうえで「瞬間伝達」されるというから驚く。
さらに本書では、理論編に多くのページが割かれ、人体や宇宙の仕組みの根源にまでさかのぼる気療の原理が説かれる。まさに気療の決定版というべき一書である。
ローレンツ・イェーガー 著
ハーケンクロイツが辿った数奇な運命をたどる
ハーケンクロイツ。いわずと知れたである。著者によれば、それは「円と十字の融合形」であり、「〈全体〉がこの世界をかたちづくる瞬間を、宗教的な次元で」捉えた図形であるという。
このように人類にとって、根源的な象徴のひとつであったであるが、ヨーロッパでは長く顧みられてこなかった。それを「再発見」したのは、あのトロイア発掘で知られる、ハインリヒ・シュリーマン。彼はこれを「我らアーリア人の父祖が抱いていた太陽中心思想を示すしるし」であると解釈した。
以後、この象徴は「アーリア人」の民族至上主義に取り込まれることとなった。そして、その思想と親和性の高いオカルティストや文学者、思想家、軍人や政治家などによって「過剰な解釈」が施されていき、最終的にはナチスのシンボルとして採用されるという結末に至る。
本書は、が辿った数奇な運命を、この象徴に魅せられた人々のエピソードを交えて徹底的に辿り尽した、研究の決定版。採り上げられる人々の中でも、本誌読者にとって特に興味深いのは、神智学の創始者であるブラヴァツキー夫人、トゥーレ協会、『二十世紀の神話』のアルフレート・ローゼンベルク、それにヴィルヘルム・ライヒにH・P・ラヴクラフトあたりであろうか。評者としては、小説『卍』で知られる谷崎潤一郎も、この系譜に組み入れられているのが、実に興味深かった。
青土社/3960円(税込)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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