「遺伝子組み換え蚊」の知られざる究極目標とは? 感染症を減らす技術とDARPAの生物兵器研究の不穏な足並み/宇佐和通
感染症を媒介する蚊を、遺伝子を改変することで減らす技術が実用化している。しかし、このような技術の究極的な目標は、私たちを助けることにあるのではないのかもしれない――!
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恋愛感情も脳の働きであるならば、科学的な視点で「しくみ」に迫れるはずだ。ひとつ真面目に、モテの科学を考えてみよう。
バレンタインである。チョコ? モテたからなんだ? という人もいるだろう。
だが人間はモテる方がいいに決まっている。なぜか? 誰だって病気はイヤだろう。健康でありたい。そして健康だと嫌でもモテる。それは生物的にそう決まっている。モテると健康になり、健康になるとモテるという好循環があるのだ。
モテると書いて、健康と読む。
貧困地域や戦争などで飢餓状態が長く続いた場合は、例外的にある程度の肥満体がモテる(私の母は昭和ひと桁で戦災を体験していたため、小さい頃、私を太らせるべくおかゆにバターを入れた。金持ちの子に見えるように、だ)。
平時では違う。「胸囲と腹囲の差が大きいかどうか」が好き嫌いの判断となる。これは生物の本能だ。この原稿では文化、文明的な視点を脇に置いたうえで、動物として考えた場合のざっくりとした傾向の話をしていく。
男でも女でもモテる人はウェストが細い。そして胸が大きい。胸囲と腹囲の差が大きいのだ。
女の胸囲と腹囲の差はそのまま妊娠可能かどうかの目安になる。女性ホルモンが減少すると男性のように女性も内臓脂肪がつき始め、ウェストが太くなり始める。生物のセックスは妊娠が目的なので、妊娠の可能性が低い個体に性的興味は湧かない。
「男は若い女が好き」というのは、若い子が妊娠可能な年齢だからというだけではなく、妊娠できない年齢に至ると胸囲と腹囲の差が小さくなる=性的魅力を感じられなくなる、ということからだ。年をとってもモテる女性は、腹は出ていない。
男の場合は老化と筋肉量の目安だ。腹が出る=老化なので、これも妊娠させる力は衰えている。筋肉量の目安が胸囲と腹囲の差だ。この差が大きければ、筋肉が多く強い個体だ。
腹が出ていないのは老化していない証拠だが、やせて腹筋が割れていても、胸筋や背筋がしっかりついていないとモテない。胸囲と腹囲の差がポイントなのだ。
だからといって筋肉があればいいというわけではなく、ボディビルダーはそこまでモテない。女性から見れば、筋肉にこだわりすぎる相手と子どもは作りたくないというのが本音だろう。もちろん熱心に打ち込む姿がカッコイイという人だろうし、モテ方はそのあたりの差し引きになる。この感情部分が人間のややこしいところだ。
太ってても、筋肉がなくても、モテる方法はないのか?
「ティファニーで朝食を」の原作者トルーマン・カポーティは、身長160センチと白人としては非常に小さかった。ところが尋常じゃなくモテたらしい。ベストセラー作家で金持ちではあったが、それを差し引いてもモテ過ぎらしいのだ。なぜなのか? 取り巻きの女の子たちいわく「彼からはとてもいい匂いがするの、うっとりしちゃう」だそうである。
体臭で異性がうっとりする?
大脳には知性を司る大脳新皮質と本能を司る大脳辺縁系とがある。嗅覚神経は大脳新皮質を経由せず、大脳辺縁系と直結する。五感のうち、いきなり感情の部位に、しかも最短距離で神経がつながっているのは嗅覚だけだ。
もし発情させる香りがあったとしたら、それは有無を言わさず相手のその気にさせるはずだ。この香りは何の香りと思う間もなく、すでにその気になっている。
それって……媚薬というか、嗅ぐだけで相手をその気にさせるオスの香りってやつだろう。おいおい、カポーティの体臭の正体はなんだ?
2つ考えられる。
ひとつは「アンドロステノール」という男性ホルモン。
さわやかな汗(空気によって参加しておらず、汗に含まれる脂肪酸やたんぱく質が皮膚の雑菌に食べられてもいない)に含まれ、女性は反応することがわかっている。
歯医者にアンドロステノールを噴霧した椅子と噴霧していない椅子を比較すると、噴霧した椅子の女性が多く座ったという実験があるそうだ。なぜ歯医者だったのかわからないが、いい話だ。
問題はある。アンドレステノールは鼻の細胞に感知されにくく、18センチまで近づかないと匂わないのだ。
18センチ? 横にしたスマホの長さぐらいの距離に相手の鼻が来ないと匂いを嗅いでもらえないのだ。しかも嗅いでもらうのは自分の臭いである。これは言い換えれば、「自分の近く18センチまで、女性が自分に顔が寄せている状況」ということである。
その時点でモテている。もうすでにお前はモテている。
願わくばカレーの臭いぐらい射程が長いとありがたいのだが。
もうひとつは「ムスク」。ジャコウ=ムスクの香りは人間にも有効らしい。
ムスクの香り成分は分離され、ムスコンと名前が付けられた。このムスコン、人間の嗅覚細胞にも専用の受容体(ムスコのためのムスコン受容体)が見つかったのだ。
東京大学の白須未香らはネズミの嗅球の内側前部に受容体を発見、人間にも同様の受容体があるとしている。
受容されてしまえば、ジャコウ鹿が発情するように、人間も発情してしまうかもしれない。しかしながらムスクは香水に使われてきた。ムスクの臭いなら、嗅げばわかるだろう。カポーティの体臭がなんだったのか、謎のままだ。
惚れ薬、飲ませると相手がムラムラとなる薬はある。2001年に発見された神経ペプチド(神経伝達に関わるペプチド)の「キスペプチン」は、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの放出を指令するキスペプチン神経細胞を刺激する。
ちなみにキスペクチンという名前は、発見した大学と同じ住所にハーシー社があったので、その代表製品であるキスチョコから、キスペクチンと名前が付いた。アメリカのことなので、広告がらみかもしれない。
遺伝子名が企業に売買される、まさに未来らしい未来を感じる時代に、惚れ薬キスペクチンの効果はどうか?
簡単に言えば欲情させる。実験ではヤギは発情する、マウスも発情する。
そして人にもキスペプチン神経細胞があるらしい。では人間も発情するのか?
残念ながら、男女とも性的興奮レベルは上がるものの、そのレベルはMRIで脳の興奮度を測らないとわからないほど低かったらしい。
飲んだらムラムラして、そばにいる男にだきつくなんて薬はまだまだ先の未来らしい。モテたい人はあきらめて、健康のために運動するしかないだろう。
久野友萬(ひさのゆーまん)
サイエンスライター。1966年生まれ。富山大学理学部卒。企業取材からコラム、科学解説まで、科学をテーマに幅広く扱う。
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