未来人の予言は必ず外れる! 時空を超えたメッセージが上書きを続ける新しい世界たち/未来人の肖像(5)
未来人ウォッチャーがネットを騒がせた未来人を独自の視点で振り返るシリーズ。シメの5回目は、未来人たちの目的や存在意義を考察する。予言はなぜ「外れる」のか?
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新たに168もの「ナスカの地上絵」が発見されたことで話題の古代アンデス文明。実は、“ありえない出土品”だらけの謎に満ちた文明でもある。もう一度おさらいしておこう。
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ナスカという地名を聞いて、誰しも真っ先に思い浮かべるのが、荒涼たる黒い大地に散らばる巨大な地上絵の数々であろう。500平方キロもある広大な砂漠に点々と広がる地上絵の中には、ハチドリやサル、クモなど一目でそれとわかるものばかりでなく、宇宙人とかフクロウ人間と呼ばれる奇妙な存在も描かれている。しかも、ここ数年に限っても次々と新しいものが発見され、その総数や全容はいまだに明らかになっていない。つい最近も、山形大学の調査団が168点の新しい地上絵を発見したというニュースが飛び込んできたばかりだ。
地上絵が描かれた目的については、暦説や星座説、何らかの宗教的な理由によるもの、さらには宇宙人が描いたものとする説まで様々で、未だに結論は出ていない。
ただ考古学者たちは、これらの地上絵はかつてこの場所に住んでいたナスカの住民が描いたものと考えている。当時この場所には、ナスカ文明とも呼ぶべき古代文明が存在し、ナスカ周辺には地上絵以外にもカワチ遺跡やカンタヨックの水路跡、チャウチーヤの墓地などの遺跡がいくつも残っている。
カワチ遺跡は広さ1.5平方キロの区域に広がり、周辺集落の祭祀センターであったと考えられている。遺跡内には高さ30メートルのピラミッドや40以上の墳墓、さらに祭祀が行われたと思われる縦47メートル、横75メートルの広場などが広がっている。祭礼の時期には、ナスカ周辺だけでなく他の地域からも巡礼が訪れたのではないかと考えられている。
ナスカ文明はまた、カラフルな色彩と様々な造型を持つ土器や、精緻な織物も生み出した。ナスカ人の墓から出土した織物には、現在のパラシュートよりも繊維が細かく、熱気球に使われている物より密なものまであり、この発見に基づいてナスカ人が熱気球を用いていたと主張する者もいる。上空からしか全体像を把握できない巨大な地上絵の数々を、熱気球を用いて上空から観測し、完璧な形に修正したというのだ。
他方ナスカ文明は、遺体のミイラ化や生け贄、死体をばらばらにして一部のみを埋葬する習慣や、切り取った頭蓋骨を装飾品とするトロフィー・ヘッドの作成、さらに幼児期から圧迫を加えることで人為的に頭蓋骨を変形させる風習など、現代人からみるといささかグロテスクな側面も持っていた。
中でも頭蓋骨の人為的な変形はその後アンデス地方一帯に広がり、16世紀まで続いたインカ帝国でも行われていた。そればかりか、中米のマヤ文明も同じ習慣を持っていた。
では、このナスカ文明はどのようにして生まれたのだろうか。
ナスカ文明も含めたアンデス山脈周辺の諸文明は、アンデス文明と総称されることもある。その起源は紀元前3000年頃、つまり古代エジプト文明と同じくらい古く、15世紀に全域がインカ帝国に征服されるまで、各地域に根ざした様々な文明が栄えては消滅してきた。こうした諸文明がどのように興亡し、互いにどう影響してきたかについては、まだ不明な点も多いが、ナスカ文明もそれらの一つというわけだ。
ナスカ文明に先行するものとしては、北部で栄えたチャビン文明、ナスカとリマの中間辺りのパラカスを中心にピスコやイカなどを含む地域で栄えたパラカス文明の存在が知られている。そしてナスカ文明の母体となったのは、このパラカス文明と思われる。
なぜなら、土器や織物、地上絵やトロフィー・ヘッド、ミイラの作成など、ナスカ文明の要素はすべてこのパラカス文明において見出せるのだ。
例えば地上絵については、ナスカのすぐ北方、パラカス文明圏に属していたパルパ周辺にも残されている。ピスコ湾にも、三叉の大燭台、あるいはピスコ湾の燭台と呼ばれる地上絵が残っている。この三叉の大燭台もパルパの地上絵も、丘の斜面に描かれているという共通点がある。
パラカス文明では斜面に描かれていた地上絵をナスカ人が引き継ぎ、独特のデザインで平坦な地面に描くようになったようだ。
そしてパラカス文明圏からは、奇妙なオーパーツもいくつか見つかっている。
その一つが、イカで発見されたカブレラ・ストーンである。
カブレラ・ストーンとは1961年、市内を南北に流れるイカ川が集中豪雨により氾濫した際出土した、大量の黒い石のことで、イカの石とも呼ばれる。これらの石には奇妙な模様が刻まれているのだが、その中には、人類誕生以前にとっくに滅んでいたはずの恐竜や、南アメリカには生息しない動物の姿ばかりでなく、脳外科手術や心臓外科手術の模様を描いたとしか思われないものがあるのだ。石自体は中生代に形成されたものであるが、これらの模様が刻まれたのは1万年以上前という推定もある。とすれば、その時代にこのような高度な手術が行われていたことになる。
イカの町で診療所を営んでいた医師ハヴィエル・カブレラはこの石に興味を持ち、これらの収集、保存に努め、最終的に1万個以上も集めた。そこで彼の名にちなんでカブレラ・ストーンと呼ばれているのだが、カブレラは最後に自宅を私設の博物館としてこれらの石を展示するようになり、今ではこの博物館はイカの観光名所のひとつとなっている。
頭蓋骨を変形させる習慣もパラカス文明期に生まれたようだ。というのは、時代的にはパラカスより古くから始まったとされるチャビン文明ではこの風習は確認されておらず、最も古い例がパラカス文明に求められるからだ。
では、パラカスでまず頭蓋骨変形が始まり、それが周辺地域のみならず中米にまで広がった理由はなんだろう。
最近の研究では、この風習は、各地の支配階級に伝わる風習だという。つまり、その人物がエリート層に属する人間だと一目見てわかるよう、わざわざ頭蓋の形を変形させたのだという。ではなぜ、支配階級はそのような頭蓋骨の形を求めたのか。
そのあたりの謎を解明するかも知れない遺物が、パラカスから見つかっている。
それは、異常に長い頭部を持つ、いくつもの奇妙な頭蓋骨である。
この頭蓋骨は1928年、考古学者フリオ・テロがパラカス半島の共同墓地で発見したもので、今から約3000年前のものと見られている。正面は普通の人間だが、その後頭部だけが異常に長く引き延ばされ、頭蓋内の容積が普通の人間より25%大きく、重量も60%重い。しかも、この変異は後に行われたように人為的なものではなく、先天的なものであるという。
もしこの謎の長頭人類が、パラカス文明創世記において指導的な役割を果たした種族だとしたらどうだろう。
この種族は何らかの理由でその後死に絶えたが、後に指導権を引き継いだ者たちは彼等に習って、自らの頭部を人為的に引き延ばそうとしたのではないだろうか。それこそが頭蓋骨変形の起源であり、支配階級のみがこれを行った理由にもなるだろう。
この長頭人種が何者なのか、どこから来たのかは、今のところ明らかではないが、パラカス歴史博物館のブライアン・フォレスター館長は2020年にこの頭蓋骨についてDNA検査を行い、現生人類ホモ・サピエンスとも、ネアンデルタール人とも異なる、新種の人類ではないかと結論している。また博士によれば、黒海とカスピ海の間で発見されていた、同様の長い頭を持つ人種とも共通するDNAが見つかったという。
ナスカからも似たような頭部を持つミイラが見つかっている。このミイラは全身が残っており、マリアと名づけられたが、その手足の指は3本しかない。
パラカスの場合は頭蓋骨のみしか残っていないので断定はできないが、もしかしたらマリアとパラカスの長頭人種は同じ種族かも知れない。だとすれば、パラカスの支配種族も3本指だったということになるだろう。
さらに謎を深めるように、メキシコのタスコからも2021年、「シトラルテミニ」と名づけられた4本指の長頭のミイラが見つかっている。しかもミイラ化の手法には、マリアと共通した点があると指摘されている。
実は、アンデス文明と中米の文明には共通する要素も多い。
頭蓋骨変形の習慣は、中米のマヤでも行われていたし、メキシコに栄えたアステカ帝国とインカ帝国、そしてマヤの人々は、呼び名こそ異なるが同じ羽毛のあるヘビの姿の神を崇拝していた。他にも太陽崇拝や人身御供の習慣、ピラミッドの建設など、共通した要素も多い。これは、両文明の間ではかなり活発な交流があったことを示すものではないだろうか。
もしかしたらパラカスやナスカで発見されたのと長頭人種の一部は、中米にも住んでいたのかも知れない。
いずれにせよナスカ文明やパラカス文明も含めたアンデスの古代史には、まだまだ未解明の部分が多い。今はさらなる追加情報を期待するしかない。
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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