金銀の龍虎図 ムー2022年11月号のカバーアート/zalartworks
「ムー」2022年11月号カバーアート解説
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2026年10月より配信およびDVDレンタルがスタートした映画『ブロート ~河童は、もう中にいる~』。頭に皿、背中に甲羅を背負ったどこか愛らしい妖怪――そんな日本人の中にある「河童」のイメージを、大胆に作り変えるデジタル・スリラーだ。
目次
まさか、河童が“憑く”とは――。
映画『ブロート ~河童は、もう中にいる~』は、日本古来の妖怪「河童」をモチーフに、オンライン通話や監視カメラ、ウェブ検索など、デジタル画面を介して恐怖が進行する“スクリーンライフ”形式で描いた異色のオカルト・ホラーである。
注目すべきは、本作が日本映画ではないこと。そう、河童をテーマにしながら、製作陣は日本人ではないのだ。
プロデュースを務めたのは、『アンフレンデッド』や『search/サーチ』など、スクリーンライフ形式のヒット作を数々送り出してきたティムール・ベクマンベトフ。
そして監督・脚本を務めたのは、パブロ・アブセント。東京を拠点に、日本の怪談や都市伝説を世界へ発信してきた女性フィルムメーカーだ。 彼女の短編ホラー『SHI』は世界各国の映画祭で受賞を重ね、オンライン公開後には800万回を超える再生数を記録。ギレルモ・デル・トロやイーライ・ロスからも称賛を集めた。さらに、あの『呪怨』シリーズの清水崇監督がプロデュースした縦型スマートフォン・ホラー『SMAHORROR』では3エピソードを監督している。
そんな欧米の感性と日本の怪異伝承が融合したとき、河童は「人間に憑依する凶暴な水怪」へと変貌を遂げる。

物語の登場人物は、イスタンブールに駐留するアメリカ軍人の父親と、日本に旅行に出かけたその家族。離れた家族をつなぐのは、スマホやPCのFaceTime(ビデオ通話)画面だ。
ある日、日本にいる息子が山間の湖で水に溺れる事故に遭う。一命を取り留めたものの、息子の様子はどこかおかしい。不気味な言動を繰り返し、精神も肉体も急速に蝕まれていく息子と、次第に狂気に陥っていく家族。海外にいる父親は、そんな家族の崩壊をFaceTimeの通信画面越しにただ見守ることしかできない……。
本作の見どころは、スクリーンライフという表現手法によって、日本にいる息子が何かに取り憑かれた様子を、“画面越しで把握する”という距離感の妙だ。FaceTime越しに伝播する恐怖のプロセスには、通信障害や映像のノイズや途切れなどお馴染みの霊的現象も組み込まれている。怪奇現象とデジタル技術がリンクし、現代社会のインフラである画面の向こう側から恐怖が侵食してくる。
またムー目線で注目したいのは、本作が河童を西洋のいわゆる「悪魔憑き」として描いたことだ。水辺の事故をきっかけに「何者か」に身を差し取られ、内側から破壊されていく子供。その姿はまさに『エクソシスト』を彷彿とさせるが、「河童の憑依には西洋的な悪魔祓いが通用しない」というのも本作のポイントである。
作中では、実は15年前にも同じ湖で、アメリカ人の少年が同様の怪異に取り憑かれる凄惨な事件が起きていたことが明かされる。その際、憑依された我が子を救おうとした父親は、悪魔祓いを試みるも効かず、最終的に息子に火を放って焼死させるという最悪の結末を迎えていたのだった。
キリスト教的な悪魔ではなく、日本の風土に根ざした古来の水怪(河童)には、エクソシズムが通用しない。本作には、そんな日本の伝承としての根深さも垣間見える。
さて、そんなチャレンジングな河童映画である本作には、日本の視聴者におなじみの人物が登場する。主人公の友人である日系人のライアン・アオキ役を、俳優のケイン・コスギ氏が演じているのだ。
そう、ケイン氏は日本の妖怪としての河童を知りつつ、本作が提示する悪魔としての河童に挑んだ人物ともなっている。そんなケイン氏に、本作の河童映画としての魅力と撮影の裏側を訊いた。

―― 本作への出演の経緯と、台本を初めて読んだときの印象を教えてください。
ケイン・コスギ氏(以下、ケイン): 本作にはオーディションを受けて参加したのですが、台本を初めて読んだとき、「こういうストーリーなのか」と驚きましたね。他の出演者と違って、僕は河童という妖怪を元々知っていますから、「河童でちゃんと怖くなるのかな?」と思ったんです。どうしても可愛いイメージがあったので。
しかも、本作に出てくる河童がどういう姿なのか、撮影中は監督からそこまで詳しい説明や指示がなかったんですよ。イメージ的にはオーソドックスな緑のやつが出てくると思っていたので、完成した作品を観て「まさかこんなモンスターっぽいとは!」とびっくりしました(笑)。
監督はすごく日本が大好きで、日本にも長く住んで詳しい方です。その監督が、「河童をフィーチャーした欧米向けのホラー」として作ったのが本作。日本人がイメージする河童とは全然違って、海外テイストの妖怪映画になっていますが、逆に海外の人間からすると、見たことがないような新しい妖怪だと思います。
全体的にはスクリーンライフという手法のラフな作りでありつつも、河童のモンスター映画になっているというバランスは、かなりレアで面白いと思います。

―― ある種、日本人にとっては新しい河童映画なわけですが、そんな中でケインさんが演じるライアン・アオキの存在感が絶妙でした。
ケイン: 監督からは「明るいキャラクターにしてほしい」と言われました。自分としては新鮮でしたね。一切アクションがない映画もこれまでで初めてでしたし、寡黙なキャラクターを演じることが多かったので、今回は明るいキャラで楽しく演じられました。
でも、正直「これなら河童と戦っても良かったんじゃないかな」とも思いましたね。あんなモンスターになっているなら、蹴り一発くらい入れても良かったかも(笑)。
―― 某栄養ドリンクをケインさんが取り出すシーンは、日本の視聴者にとってはかなりサービスカットですね。
ケイン:あのシーンは監督からの発案で、僕も驚きました。「あのCM知ってたの?」と(笑)。
―― アメリカのご友人などの反響はいかがでしたか?
ケイン: 本作を観たアメリカの友達は、「日本にはこういうモンスターがいるのかと思った」と言っていました。海外の人が思う日本のイメージって、忍者や侍が有名ですが、そこに続いて「河童」が入ってくるようになったら面白いですよね。
―― それは面白いですね(笑)。日米両方の文化を知るケインさんにとって、こういったUMAってどういう存在ですか?
ケイン: 僕はずっと戦隊モノをやっていて、怪獣やモンスターと接する機会が多かったのですが、そこで思うのは、日本の妖怪って座敷童子みたいに優しい可愛い妖怪もいて面白いです。一方で、海外だとモンスターっぽい存在が多い印象があります。
水にまつわる未確認生物で言うとネッシー、陸ならビッグフットとか。海外では僕が小さい頃から、そういうUMAを捕まえようとするドキュメンタリー番組なんかもあって、UMAは結構身近な存在でした。
今回の『ブロート』は、日本の伝統的な怪異を海外テイストで表現した今までにない映画になっているので、ぜひ楽しんでほしいです。

画面の向こう側で侵食を進める河童。『ブロート ~河童は、もう中にいる~』は、現代のデジタル社会の中で、日本古来の水の怪異が拡散されるさまを映した一作だ。本作を自室のPCやスマホの画面の前で鑑賞するとき、あなたもまた画面の向こう側の怪異と繋がってしまうかもしれない。
【作品情報】
タイトル: 『ブロート ~河童は、もう中にいる~』
監督・脚本: パブロ・アブセント
出演: ベン・マッケンジー、ボヤナ・ノヴァコヴィッチ、ケイン・コスギ ほか
配給・発売: インターフィルム
10月2日(金)より、DVDリリース&配信スタート
https://www.amazon.co.jp/dp/B0HCW85SQG
https://fod.fujitv.co.jp/title/d4x7/
https://inter-film.com/bloat/
杉浦みな子
オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。
https://foriio.com/minako-sugiura
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