異星人たちの会話を“盗聴”することでコンタクトを目指せ! 鍵は狭帯域無線信号と惑星間掩蔽にある
同じ物理方式の下で暮らしている以上、地球外文明を無線通信を使っている可能性がある。それが検知できれば、会話内容を“盗聴”できるかもしれない――!
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空飛ぶ円盤という言葉が世に飛び出して約80年。数々の遭遇の中から忘れられない――忘れたくない事例を振り返る。 今回は宇宙に向かって情熱的な電波を発信しつづけた研究者――アーティストについて。求める限り、彼はけっして、孤独ではなかったのだ。
この広い銀河系には、どれだけの生命体がいるのだろう? そして交信可能な知的文明はあるのだろうか?
地球外知的生命体が発する電波信号を受信しようとするプロジェクトSETIや、宇宙探査機パイオニア10号、ボイジャー・レコードやMETIによる発信など、人類はさまざまな方法で宇宙の存在とのコミュニケーションを試みてきた。その手段は科学的なものから、テレパシーなどといったアプローチまで.
ここで少し視点を変えてみよう。
異星人が地球に向けて、SETIのようにアンテナを向けていたとしたら?
われわれのような一個人が送った電波を彼らはキャッチしてくれるだろうか?
そんなことを想像するのは悪いことではない。だが実際に行動に移す人間は少ない。
1960年代半ば、ミシガン州の田舎で少年時代を過ごしていたジョン・シェパードは、テレビドラマ「アウター・リミッツ」やラジオで聴いた天文学者ハイネック博士のUFO話に触発され、地球外生命体の存在に魅了されたという。10代だった1965年ごろから独学で電気工学を学びはじめた彼は、パイオニア探査機が打ち上げられた年と同じ1972年から、異星人を研究するための機材を揃えていく。
しかし、待っているだけでは〝彼ら〞は研究所(ジョンの祖父母の家)まで来てはくれまい。ジョンは何かメッセージを送るべきだと気づいた。そして、それを実行に移したのだ。
ジョンはお金をやりくりし、軍放出品の販売店や電気機器の卸売倉庫に足繁く通い、部品を集めた。そうして作り上げた放送局(祖父母の家の居間)から、彼は宇宙空間に向かって音楽とメッセージを放送しはじめた。
ジョンは、「プロジェクトSTRAT(Special Telemetry Research and Tracking)」と名づけ、以後30年間それを続けた。プロジェクトは彼の人生と、そして祖父母の生活も変えていく。
彼には両親がいなかった。父は生まれてすぐに蒸発し、母は彼に無関心だったという。長く孤独を感じていたジョンは、協力的だった祖父母の力も借りながら、異星人を捜しつづけた。当時のテレビでのインタビューでこんなことを語っている。
「一番厄介なのは孤独との戦い。波長が同じ相手と人生をともにするのは不可能に近い。でも運命の人は必ずいる」


研究所(祖父母の家)の庭には、スキーリフトの廃材などで作られた、出力6万ボルトの大きなアンテナが建てられた。祖父母は、彼が「美しくて珍しい機器」と呼ぶ電子機器に囲まれて暮らすことになった。彼の部屋から溢れたそれらは居間に押し寄せ、床から天井まで、壁一面に機器が並んだ。祖父母はそれらに囲まれて生活していたという。ジョンが自作のコンピューターを操作している傍らで、祖母が編み物をしているという、印象的な写真も残されている。
ジョンは異星人の好奇心を刺激し、地球に興味を持ってもらうための手段として音楽が最適だと考えた。彼が電波にのせた音楽は、たとえばジャズピアニストのキース・ジャレット、そしてハルモニアやクラフトワークなど初期の電子音楽、さらにはアフロ・ポップからインドネシアのガムランまで。
彼はたとえ言語が通じなくても魂や心でわかりあえると考えていた。音楽を通して人間らしさ、感情、情熱、そして一種のエクスタシーを伝えようと試みたのだ。
ジョンの放送は1972年から1998年まで続いたが、異星人からの接触はなかった。やめてしまった理由は金銭的な問題だったという。
プロジェクトSTRATは失敗だったのだろうか?
ジョンはノーと答える。異星人と接触できたかどうかよりも、その過程を重視していると語っている。
「ゼロから自分の手で機械を組み立て調整すること、それ自体がひとつの芸術であり、探求でもありました。確固たるデータが得られなくても、諦めなかった。探求心は常にそこにあった」
ジョンはアウトサイダー・アーティストともいえる。同性愛者のジョンは、ミシガンの田舎町という保守的な空気の中で、ある種の息苦しさと生きづらさを抱えていた。彼の一見突飛でイマーシブなこのアートは、彼の自己の開放だったのだろうか。
ジョンのこの物語は2020年に『エイリアンとの交信を追い求めて(John Was Trying to Contact Aliens)』という短編ドキュメンタリーとなり、ネットフリックスで公開され、高い評価を受けた。作品のラストはプロジェクトを続ける中でジョンが出会った、かけがえのない存在との逸話で締めくくられる。
1993年、ジョンはクラブで偶然に出会ったジョン・リトレンタと恋に落ちる。お互いの雰囲気に魅入られたふたりは、以後数十年のパートナーとなった。つまり、ふたりの関係はSTRATよりも長く続いていることを意味する。
ジョンは人生をかけて宇宙へ挑んだが、期待した結果は得られなかった。だが、この地球上では〝運命の人〞を見つけ出した。それはある意味で異星人との接触よりも難しく、素晴らしいことかもしれない。彼の交信は成功したのだ。

●参考
https://www.theguardian.com/film/2020/aug/23/the-man-who-tried-to-contact-aliens-from-his-grandmas-living-room
https://pitchfork.com/thepitch/meet-the-man-who-used-kraftwerk-fela-kuti-and-other-fascinating-music-to-try-to-lure-aliens-to-earth/
https://thequietus.com/interviews/john-was-trying-tocontact-aliens-radio/
NetFlix「エイリアンとの交信を追い求めて」 https://www.netflix.com/jp/title/81252991
(月刊ムー 2026年09月号)
オオタケン
イーグルリバー事件のパンケーキを自作したこともあるユーフォロジスト。2005年に発足したUFOサークル「Spファイル友の会」が年一回発行している同人誌『UFO手帖』の寄稿者。
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