謎多き中世南アフリカの王国「ツラメラ」とは!? 発掘記録から幻の黄金都市の姿が判明へ

文=仲田しんじ

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    南アフリカにかつて存在した謎の王国「ツラメラ」。1990年代にその遺跡が調査されたものの、解明が進んでいないこの失われた都市に新たな光が当てられている。

    ツラメラ遺跡の解明に向けた新たな調査

     南アフリカのクルーガー国立公園内にあるツラメラ(Thulamela)遺跡は、アフリカで最も重要な中世の王国の一つであった可能性を秘めていることが新たな研究で示唆されている。

     同国ムプマランガ大学とウィットウォーターズランド大学の研究チームが今年5月に学術誌「Conservation and Management of Archaeological Sites」で発表した研究によれば、15世紀から17世紀にかけて繁栄したツラメラはアパルトヘイト後の南アフリカで最も重要な遺産の一つと見なされてきたにもかかわらず、考古学的記録が十分に調査されてこなかったという。

     1990年代の発掘調査により、石積みの壁、住居、通路、牛舎、穀物貯蔵台、巨石構造物などを含む9ヘクタールの集落が発見された。放射性炭素年代測定の結果、この遺跡にはマプングブウェとグレート・ジンバブエの最盛期後、主に西暦1447年から1643年の間に人々が居住していたことが判明した。

    ※画像は「Taylor & Francis Online」より

     研究チームは中世後期の南部アフリカの政治権力、交易、工芸生産の発展を理解する上で、このツラメラ遺跡はきわめて重要であると述べている。

     ツラメラが注目を集めるようになったのは、1990年代に考古学者たちが遺体とともに埋葬された金製品を発見したことがきっかけだった。しかし今回の研究は、金製品はツラメラの全体像を語るうえでごく一部の要素にすぎないと主張している。発掘調査では鉄や銅の工芸品、ビーズ、陶器、紡錘車、動物の遺骸なども発見されており、熟練した職人に支えられた豊かな共同体と明確な社会階級が存在していたことを示唆しているのだ。

     研究者らはまた、金の残留物が付着した陶器の破片を発見したことから、ツラメラが富と交易の中心地であっただけでなく、金の一大加工地だった可能性まで浮上している。

    多くの発掘物が未分析

     1993年に発見された2つの埋葬遺体は、これまで王(イングウェ王)と女王(ロシャ女王)のものと考えられてきた。しかし、今回の新たな研究はその説に慎重な姿勢だ。年代測定の結果、両者が同時期に生きていたとは限らないことが示唆されており、この集落が王族によってのみ築かれたという長年の定説に疑問を投げかけている。

     研究チームはこれらの埋葬は明らかに高位の葬儀慣習を示しているものの、ツラメラの支配者や政治組織について確固たる結論を出すには、さらなる発掘調査、年代測定の精度向上、そして過去の発見の再分析が必要であると主張する。1990年代の発掘調査で回収された多くの遺物は、包括的な分析が行われることなく、プレトリアのディツォング博物館に保管されたままになっている。また、発掘記録の大部分はこれまで完全に公表されたことがない。そのためツラメラの政治構造や社会階層に関する多くの解釈は、十分に分析された証拠に基づくものではなく、憶測に基づいたものだという。

     今回の研究はまた、同地の先住民族であるマクレケ族とツラメラとの関係にも踏み込んでいる。先住民族であるマクレケ族は1969年に強制的に移住させられたが、1994年の南アフリカ土地返還法によって土地を取り戻している。研究チームはツラメラを特定の現代の民族集団に結びつけることには慎重であるべきだとしながらも、この地域と関連のある民族の文化への理解を深めつつ、考古学的証拠に基づいて王国の歴史を再構築すべきだと主張している。

    ※画像は「Taylor & Francis Online」より

    先進技術を活用した調査を予定

     ツラメラは洪水、浸食、野生動物の活動、盗難、そして不十分な環境保護活動といった脅威にも直面している。新たな保護措置がなければ、王国の歴史が完全に解明される前に貴重な考古学的史料が失われてしまう可能性があると研究チームは警告する。

     現在、保管されている収蔵品の再調査、新たな発掘、そして周辺地域の詳細な調査が計画されている。LiDAR、マルチスペクトルリモートセンシング、3Dマッピングなどの先進技術を活用することで、数々の遺物が失われる前に地域の詳細を記録する予定だ。これによってツラメラがいつ出現したのか、政治権力はどのように組織されていたのか、周辺地域はどのように王都を支えていたのか、そしてなぜ王国は最終的に衰退したのかといった、長年の疑問に答えることができると期待されている。

     今回の研究では、謎多きツラメラが単なる孤立した丘の上の集落以上の存在であったと結論づけている。そこは政治権力、農業、高度な生産活動、そして地域交流の中心地であったのだ。中世の南部アフリカに対する理解を根本的に変え、最も重要な王国の一つを歴史上の正当な地位へと回復させることができるのか。今後の調査に大いに期待したい。

    ※参考動画 YouTubeチャンネル「HISTORY AFRICA」より

    【参考】
    https://www.ancient-origins.net/thulamela-african-kingdom-00102968
    https://greekreporter.com/2026/07/10/african-kingdom-powerful-state-south-africa/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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