ブラジルに銀色の長身エイリアンが出現していた! 知られざる「ホセ・ヒギンズ事件」の顛末

文=オオタケン

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    ガラスドームをかぶり、銀色のスーツをまとう長身の怪人たち。円盤から降り立ったそれらはやはり、宇宙人だったのか?

    ガラスドームをかぶった銀色の宇宙人

     先日、1954年にフランスで起きた「デワイルド事件」についての記事を書いた。ファミマオンラインのオンラインくじに因んだ紹介記事であった。

     ファミマオンラインでのオンラインくじでは、「ムー」とのコラボで、5種類のエイリアンが様々なグッズとなって登場している。イラストレーター前田麦氏の描いたそれらは……フラットウッズ・モンスターにモスマン、有名コンタクティーのアダムスキーが会ったと主張した美麗な金星人オーソン、そしてデワイルド事件のロボット型宇宙人……ここまではUFOマニアであれば答えられるであろう。ではもう一体。ガラスドームを被った、銀色のつなぎ姿ではしゃいでいる彼の名前は答えられるだろうか?

    これはいったい?

     今回はUFO大国ブラジルで起きた古典事件、ホセ・ヒギンズ事件を紹介しよう。近代UFO史の黎明期における最も重要な事件の一つとも言われながら、今ひとつメジャーに成れていない当事件に迫りたい。

    長身の宇宙人に誘拐されかける

     世界的に見て、UFO事件の中心地はアメリカと言っていいだろう。次いでヨーロッパというイメージだろうが、熱心なUFOウォッチャーであれば、ブラジルのUFO事件数も相当に多いことに思い当たるはずだ。そして、欧米の事件とは明らかに質感が異なることにも気がつくだろう。

     ヒギンズ事件の筋はこうである。
     1947年7月23日、当時39歳の地形学者(測量士という説もある)ホセ・C・ヒギンズは、パラナ州のカンポ・モウランにあった農業地帯で仲間と作業中、笛のような奇妙な音を聞いて空を見上げた。すると直径30メートル、高さ5メートル程のレンズ状の物体が、約50メートルほど離れた地点に落下するのを目撃した。その物体は灰白色の金属製で、外板からは複数の管が突き出ており、笛のような音はそこから聞こえているようだったという。また下部からは少し湾曲した金属製の脚が出ており、物体を支えていた。

     他の仲間は恐ろしさのあまり逃げてしまったが、ヒギンズは恐怖よりも好奇心が勝ったようだ。
     彼はUFOに近づき、それを観察した。船体には黒っぽいガラス窓があり、中に2人の人物が見えたという。暫くするとUFOの下部の扉が開き、3人の生物が現れた。彼らは透明なスーツに身を包んでおり、それは「空気を入れた車のタイヤチューブ」のように膨らんでいるように見えた。背中には金属製のバックパックを背負っていて、シャツとショートパンツ、サンダルを着用していたが、それらは布というより光沢のある紙で出来ているようだったという。

    現場の再現イラスト。https://vigilia.com.br/caso-jose-higgins-precursor-do-pacifismo-antinuclear-dos-aliens/#google_vignette より。

     彼は後日、パラナ州で発行されていた夕刊紙『Diário da Tarde』に宛てた手紙の中で、生物の姿を「丸くて大きな目、眉毛はないのに睫毛があり、頭は剥げていた。髭はなく、頭は大きく丸く、脚は私たちよりも長かった。身長は1メートル80センチの私より30センチも高かった (2.1メートルは有ったということだ) 」と書き残している。全員が双子のようにそっくりだったのが特徴的だった。
     ヒギンズはUFOの中にもそっくり同じ外見をした生物が居たのを確認している。外にいた生物の一人は、宇宙船と同じ金属で出来ていると思しきチューブ状の物体を手に持っていた。生物たちは聞いたことのない言語を話したが、その響きは美しかったとヒギンズは語っている。

     3体の生物はヒギンズの周りに集まると、チューブを持ったリーダーのような一体がUFOの中に招くような仕草をした。
     しかしヒギンズは躊躇したという。
     その生物は地面に7つの円に囲まれた丸い点を描き、何かを説明しようとし始めた。それは宇宙地図であり、これからヒギンズを連れて行く先を説明しているようだった。彼らは太陽と思われる丸い点を指して「アラモ(Alamo)」という言葉を発音し、さらに7番目の円を指して「オルケ(Orque)」という言葉を発した。ヒギンズは生物たちは日光に弱いのか、日陰に移動していることに気づいた。

     ヒギンズは機転を利かせ、ポケットから妻の写真を取り出し、身振り手振りで「彼女を迎えに行かないといけないのだ」と伝えた。3体の生物は納得したようでヒギンズは解放されたが、彼は茂みの陰に隠れて彼らをしばらく観察し続けた。生物たちはその体格とは裏腹に機敏に動き、遊んでいるのか大きく飛び跳ねたりし、巨大な石を遠くへ投げ飛ばしたりもしていた。30分後、生物たちは船に乗り込み、北の方角へと飛び去っていった。

     新聞社への手紙の中で、ヒギンズは脱出できたのは幸運だったと記し、さらわれずに済んだことに安堵しているようだった。一方で、一連の体験が夢だったのか現実だったのか、疑問も持っているようだったという。彼は「もしかしたら、奇妙だが美しい夢だったのかも知れないから」と事件を回顧している。

    アーノルド事件、ロズウェル事件と同時期のCE3事例

     当事件はブラジルの研究者の手で詳細な調査が行われており、事件の存在自体はでっちあげなどでは無いことが証明されている。1947年8月8日には「Diario Da Tarde」と「Correio Do Norroste」という2紙に事件が掲載され、その後、ジャーナリストのジョアン・マルティンスによって1954年11月13日発行の雑誌「O Cruzeiro」にイラスト付きで掲載されて有名になったようだ。
     ブラジル外では1961年になってからUFO研究家オラヴォ・フォンテスによって英語に翻訳され、アメリカのAPRO(空中現象研究機構)の機関紙および『Flying Saucer Revie』紙で紹介され、知られるようになったようだ。

    『O Cruzeiro』1954年11月13日号。https://vigilia.com.br/caso-jose-higgins-precursor-do-pacifismo-antinuclear-dos-aliens/ より。

     なおこの事件、1965年8月にスウェーデンのウッデバラで発生したリチャード・ホグランドの接近遭遇事件(Richard Höglund、火星に人工物があると言う説で有名になったリチャード・ホーグランドとは別人物)とも類似が指摘されている。
     UFOは甲高い音を発して着陸し、その搭乗員は完全に毛が無く、全身を透明なカバーに包まれていた。円筒物を持って目撃者に近づき、地面に絵を描き、やや友好的に、だが子供っぽく振る舞った、という共通点だ。

    1965年スウェーデンでホグランドが接近遭遇した事件の再現。 https://www.reddit.com/r/StrangeEarth/comments/179vv37/the_august_1965_richard_h%C3%B6glund_contactee_case/ より。

     もしヒギンズの接触した生物が宇宙人であったならば、彼らもおそらく同じ星から来た存在であるに違いない。なおホグランドは英語がまったく出来なかったとされ、APROの機関紙やFlying Saucer Revieを読んでいた可能性は低いとされるが、真実は不明のままだ。

     このようにユニークで、後のUFO接近遭遇事件にも影響を与えていそうな重要性の高い当事件だが、マイナー感が否めないのは、この事件がアメリカやヨーロッパで起きた物では無かったことが大きな理由だろう。

     この接近遭遇話は近代UFO事件の幕開けと言えるケネス・アーノルド事件(1947年6月24日)とロズウェル事件(1947年7月4日)の直後に起きており、もしアメリカで起きていればこれらと同列に語られるべき重大事件になっていた筈である。

     なお、ヒギンズがロズウェル事件を知っていた可能性はあるが、彼は既に亡くなっており、これ以上の調査は不可能になってしまっている。ブラジルの研究者によれば、この話は当時のブラジルでは一般的ではなかったSFジャンルの現代的な要素が含まれており、熱心なSFファンでなければこのような創作は難しかったろうと言う。また、宇宙人が日光を嫌うなど、吸血鬼伝承などを思わせる面もあり、単純なUFO遭遇例とも言えない、奥深いものだった。

     約80年前、地球の裏側で起きた第三種接近遭遇事件は、アメリカやヨーロッパのそれとはまた違う、ブラジル的なおおらかさを感じる事件であった。ファミマオンラインくじの景品となる前田麦氏の描いた当事件の宇宙人イラストは、この事件のおおらかさを上手く表現していると思う。楽しそうに飛び跳ねる宇宙人のイラストを見るだけで、こちらも笑顔になるではないか。

     景品に登場する宇宙人たちの中でも最もマイナーかも知れないヒギンズ事件の宇宙人だが、この機会に皆さんが興味を持ってくれることを願ってやまない。

    参照
    https://vigilia.com.br/caso-jose-higgins-precursor-do-pacifismo-antinuclear-dos-aliens/
    https://www.thinkaboutitdocs.com/1947-7-ft-aliens-spotted-brazil/

    オオタケン

    イーグルリバー事件のパンケーキを自作したこともあるユーフォロジスト。2005年に発足したUFOサークル「Spファイル友の会」が年一回発行している同人誌『UFO手帖』の寄稿者。

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