兵庫県・福崎町に河童が潜む! 柳田國男の故郷に妖怪続発中/日本不思議再興計画

文=中村友紀

    各地のムー的ミステリースポットを紹介!

    日本民俗学の父・柳田國男の故郷は妖怪であふれていた!

     養老4(720)年ごろに編纂された「播磨国風土記」に、すでにその名を見ることができる兵庫県福崎町。ここは、日本民俗学の父として知られる、柳田國男の出身地としても有名なところだ。

     この福崎町には、妖怪があふれている。
     柳田の生地と妖怪──どんな関係があるのか、不思議な感じがするかもしれない。
     実は柳田の著書『故郷七十年』には、故郷・福崎町に棲む河童の記述が見られる。
     それによると、同町の辻川地区には「ガタロ」と呼ばれるいたずら者の河童がいて、毎夏ひとりくらい、川で泳いでいるときにガタロに尻を抜かれ、犠牲になる子供がいたというのだ。

    いたずら好きの河童が子供たちを引きずりこんだという、市川の駒ヶ岩(写真提供=藤田裕文/福崎町地域振興課)。

     現在はガタロのオマージュから生まれた河童の「ガジロウ」が福崎町のゆるキャラ、PRキャラクターを務めている。
     本人が「日本一小さい家」と書いた柳田國男の生家は、辻川山公園に移築・保存されていて見学することもできる。その家のそばの池のほとりにはガタロのオマージュのガタロウが、そして池のなかにはガジロウが潜んでいる。
     町内を流れる市川の駒ヶ岩という大岩の近くで、子供たちを次々と川に引きずりこんでいたこの河童の兄弟は、だれも川遊びをしなくなってしまったことで反省し、柳田に謝るために辻川山公園にやってきた。ところがガタロは頭の皿が乾いて動けなくなってしまい、ガジロウは今も池に潜ったまま、柳田を待ちづけているのだという。
     また福崎町には各所に、全部で22の妖怪が座る「妖怪ベンチ」もある。リアルであったり、コミカルであったり、個性豊かな妖怪の姿を訪ね歩くのも楽しいものだ。

    河童と将棋が指せるユニークな妖怪ベンチ。

     ほかにも少年時代の柳田が読書に没頭した「大庄屋三木家住宅」や、柳田がまたがって遊んだ狛犬が残る「鈴の森神社」、彼ら兄弟の業績を伝える「柳田國男・松岡家記念館」など、見どころも満載だ。

    福崎町立柳田國男・松岡家記念館のそばで町を見守る、柳田國男の像。

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    https://web-mu.jp/mu-tabi/

    (月刊ムー 2026年01月号)

    中村友紀

    「ムー」制作に35年以上かかわるベテラン編集記者。「地球の歩き方ムー」にもムー側のメインライターとして参加。

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