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コミックもしくはアニメ『呪術廻戦』で、圧倒的強者として主人公たちの前に立ちふさがった1000年前の呪術師、両面宿儺。
この宿儺について『日本書紀』「仁徳天皇65年の条」は、実在した人物だと語る。
それによればこの年(西暦377年?)、飛騨国(現在の岐阜県北部)に宿儺という、ひとつの胴体にひとつの頭、ふたつの顔を持つ怪物がいた。それゆえに「両面」宿儺と呼ばれた。
顔はそれぞれが反対を向いており、胴体にはそれに対応するかのように、それぞれ2本ずつ4本の手があった。力強く軽捷(身軽ですばやいこと)で、左右の手には剣を帯び、また4本の手によってふた張りの弓矢を同時に用いることができたという。
宿儺は天皇の命には従わず、人民から略奪することを楽しんでいたため、和珥臣の祖である難波根子武振熊を遣わし、誅したとされる。
両面宿儺の正体については、朝廷に歯向う現地の豪族だったという説が有力だ。しかし地元の伝承を見ると、どうもそうとはいいきれない面もある。
というのも両面宿儺の伝承は飛騨国のみならず、信濃国(現在の岐阜県南部と長野県の一部)でも広く見ることができ、しかも救済者としての「顔」をもっているからだ。
たとえば両面宿儺によって開山されたと伝えられる岐阜県高山市・千光寺の縁起では、宿儺は身長18丈(約54メートル)の怪物で、やはりふたつの顔と4本の腕をもっていたとされるが、実は救世観音の化身だというのである。ちなみに千光寺には、円空による木彫り像を含め、4体の両面宿儺像が祀られており、マニアの「聖地」となっている。
また千光寺の近くには、「両面宿儺洞」と呼ばれる鍾乳洞もあり、ここは宿儺が育った洞窟といわれている。

さらに関市の日龍峯寺にも、近隣の村を襲う龍を宿儺が退治したという伝承があるし、逆に下呂市の下原八幡神社は、難波根子武振熊が宿儺討伐の際に、戦勝祈願として応神天皇を祀ったことを起源としている。いずれにせよ、ここは両面宿儺の「国」なのだ。


(月刊ムー 2025年12月号)
中村友紀
「ムー」制作に35年以上かかわるベテラン編集記者。「地球の歩き方ムー」にもムー側のメインライターとして参加。
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