音の怪異か、演奏者の霊か? 音楽室の定番「ピアノの怪」/学校の怪談
放課後の静まり返った校舎、薄暗い廊下、そしてだれもいないはずのトイレで子供たちの間にひっそりと語り継がれる恐怖の物語をご存じだろうか。 学校のどこかに潜んでいるかもしれない、7つの物語にぜひ耳を傾けて
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子どもたちの間で語り継がれてきた学校の怪談。令和のいま、アニメ「ダンダダン」で姿を変え、現代の怪異として蘇る──。
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人気アニメ「ダンダダン」は、霊媒師の家系に生まれた女子高生・モモ(綾瀬桃)と、オカルトマニアでターボババアの能力を手に入れた男子高校生・オカルン(高倉健)が、常識を超えた怪奇現象に挑む青春バトルストーリー。
作中には、ターボババアやネッシー、フラウドウッズモンスターにドーバーデーモンといった都市伝説由来の怪異が次々と登場するほか、「月刊ムー」ならぬ「月刊ポー」といったパロディも盛りだくさん。オカルトファンなら思わずニヤリとしてしまう小ネタが、随所に散りばめられている。
そして2025年7月からは、待望の第2期が放送開始。新たな仲間との出会いや未知の脅威が、モモとオカルンを待ち受ける。
今回はそんな「ダンダダン」に登場する怪異たちにスポットを当て、そのルーツともいえる都市伝説を深掘りしながら、作品の魅力に迫っていこう。
「ダンダダン」には、怪異をモチーフにしたキャラクターが数多く登場する。都市伝説をはじめ、妖怪やUMAなど、そのバリエーションは実に多彩だ。なかでも元ネタが明確で親しみやすいのが、学校の怪談に起因する異形たち。作中には、誰もが一度は耳にしたことのある以下のようなキャラクターが登場する。
白昼堂々、主人公・オカルンの前に突如現れたのは、動く人体模型・太郎。彼はある目的を胸に、行く手を阻む障害物もものともせず、ひたすら一直線に走り続けていた。
ついには校舎を飛び出し、街中を爆走する太郎。その異様な行動を目にしたモモは、「ターボババアの能力が関係しているかもしれない」と推測する。超能力を駆使して脱走を食い止めようとするが、その勢いは衰えない。
やがて一行は、廃棄物が山積したスクラップ工場にたどり着く。そこには、太郎と心を通わせるもうひとつの人体模型・花の姿があった。
「妖怪の力を使っているくせに、弱いのが気に入らない」というターボババアの苦言を受け、オカルンたちは深夜の学校で特訓を行うことに。音楽室でピアノを鳴らすと、けたたましいオーケストラの音とともに6体の怪異が現れる。
その正体は、音楽室に飾られた肖像画への恐怖心が具現化した存在。彼らは空間を「田園」に変え、触れると爆発したり、動きを封じたりする音符の弾幕を降らせてくる。
激しい攻撃に押されながらも、オカルンはターボババアから「リズム感だ」との助言を受け、反撃の糸口を見出すが……。
オカルンの同級生・凛は、オンブスマン(子泣きジジイ)に憑りつかれ、命の危機に晒されていた。その正体は、事故で死んだ友人・舞の未練が生んだ悪霊だった。
除霊のため一行が向かったのは、霊の巣窟である学校。オンブスマンをおびき出すべく、凛とモモを乗せた山車が市中を爆走すると、霊たちが次々と目を覚ます。そして姿を現したのが、学校の七不思議が融合した巨大な地縛霊・コウシャイン。
そのコウシャインを背負い山車を追ってくるのが、狂気の脚力を誇る怪異・二宮デスロード金次郎だ。しかも1体ではなく、校舎のあちこちから働きバチのように続々と現れ、執拗に襲い掛かってくる。
ちなみに「デスロード」という名前は、察しのとおり、映画「マッドマックス 怒りのデス・ロード」に由来していると思われる。メタルバンドを載せた山車を、二宮デスロード金次郎とコウシャインが追うカオスな光景に、既視感を覚えた人もいるのではないだろうか。
昔から、学校という場所にはどこか不思議な気配が付きまとうものだ。誰しも一度は、通っている学校で囁かれる「学校の怪談」を耳にしたことがあるだろう。例えば、女子トイレの3番目の個室に現れる「トイレの花子さん」や、上半身がなく腕だけで這い回る「テケテケ」などは、定番中の定番と言える。もちろん、「ダンダダン」に登場する人体模型や音楽室の肖像画、二宮金次郎像も、その代表格だ。
ここでは、AIによって生成された怪異のビジュアルとともに、まことしやかに語り継がれてきた怪談の数々を紹介しよう。
学校のなかでもひと際不気味な場所といえば、理科室だろう。ホルマリン漬けの動物標本が並び、時には解剖まで行われるその場所は、怪談の舞台として選ばれるのも無理はない。
なかでも主役級の存在として語られるのが、人体模型や骸骨模型だ。教室の隅でじっと佇むその姿は不気味で、怪談になるのも頷ける。
とりわけ多いのが、そうした模型が「勝手に動いた」という話。ある学校では、夜中にひとりでに動き出した模型が通りかかった人間に乗り移ったり、ニワトリを襲って食い殺したりしたという噂が語られている。
この種の怪談は昔から存在し、1948年ころ、岩手県和賀郡黒沢尻町(現在の北上市)にある黒沢尻小学校では、「誰もいないはずの音楽室でピアノが鳴り出し、それに合わせて骸骨模型が踊り出した」という話も残っている。死の気配が充満する理科室は、今も昔も怪異が息づく場所のようだ。
理科室と並んで、学校の怪談によく登場するのが音楽室だ。夜になると、誰もいないはずの音楽室からピアノの音が聞こえてくるという怪談は、あまりにも有名だろう。
多くの場合、その弾き手はピアノが大好きだった少女の霊だと言われる。不慮の事故で命を落とし、心残りから夜な夜な音楽室でピアノを弾いているといった話は、一度は耳にしたことがあるはずだ。
そしてもうひとつの定番が、壁にずらりと並ぶ音楽家たちの肖像画。放課後に音楽室を訪れた生徒が、「ベートーベンの目が光った」「こちらを追いかけるように目が動いた」「絵そのものの体の向きが変わっていた」と証言する不思議な噂は、全国の学校で語り継がれている。
だがどういうわけか、音楽室に現れる霊が人に危害を加えたという話はあまり聞かない。もしかすると音楽を愛する者同士、あの世にいても礼節を重んじているのかもしれない。だが、もし誰もいないはずの場所からピアノの音が聞こえてきたら──その先に待つのは、素敵な演奏ではなく恐怖かもしれない。
2000年から放送され、怪談ブームの火付け役となったアニメ「学校の怪談」や、同時期に週刊少年ジャンプで連載されていた「地獄先生ぬ~べ~」などにも登場する怪異が、二宮金次郎像だ。
語り継がれている怪談の多くは、「子どもたちが下校したあとの静かな校内を、二宮金次郎像が歩き回る」といった内容である。他にも、「目が光る」「読んでいる本のページが変わる」など、バリエーションはさまざまだ。ただし、音楽室の肖像画と同様に、生徒に危害を加えるという話はあまり聞かれない。
とはいえ近年では、そんな二宮金次郎像も「レア怪異」になりつつある。老朽化に加え、歩きスマホを助長するといった意見もあり、撤去する学校が増えているのだ。もしも放課後の校庭で、薪を背負った後ろ姿を見かけたとしたら、それは今や貴重な出会いと言えるかもしれない。
昭和から続く、子どもたちの想像が生んだ学校の怪談。その怪異たちは今、「ダンダダン」のなかで、懐かしくも新しい姿を見せている。けれど恐ろしいだけでなく、どこか愛らしく感じるのは、昔も今も変わらないようだ。
webムー編集部
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