ツタンカーメンに全振りの古代エジプト展! GWは横浜みなとみらい「ミステリー・オブ・ツタンカーメン」で王墓に浸る

文=杉浦みな子

    3000年以上の歴史を持ち、今もなお多くの謎に包まれた古代エジプト王ツタンカーメンの息づかいを、横浜・みなとみらいで体感できる!

    今、日本で古代エジプトが熱い

     今年は、日本で“古代エジプト”絡みの展覧会が熱い。東京・豊洲ではエジプト政府公認の大規模展示会「ラムセス大王展 ファラオたちの黄金」が開催中だし、つい先日まで六本木ヒルズでも「ブルックリン博物館所蔵 特別展 古代エジプト」が行われていた。 

     そんな中、2024年12月から実に1年間の長期にわたって、ツタンカーメンの謎に迫る体感型展示会「MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~」も開催されているのをご存知だろうか。 
     横浜・みなとみらい地区にある特設会場「ツタンカーメン・ミュージアム(PLOT48)」にて、2025年12月25日(木)まで実施中だ。 

    旧アンパンマンミュージアムだった場所が「ツタンカーメン・ミュージアム」に変身し、2025年12月までこの姿で営業予定

     本展は、エジプト考古学者であり名古屋大学デジタル人文社会科学研究推進センター教授・河江肖剰(かわえ・ゆきのり)氏の監修のもと、古代エジプトの少年王ツタンカーメンにまつわる数々の謎に迫る“体感型”の展覧会。 
     3,000年以上の歴史を経て、今もなお多くの謎に包まれたツタンカーメン時代の遺物を再現した「スーパーレプリカ(超複製品)」や、ツタンカーメン王墓が再現された部屋など、まるでエジプトに空間移動したかのような感覚が得られる楽しいイベントとなっている。その見どころを紹介しよう。

    入り口を入ってすぐ、古代エジプトの基礎知識の解説コーナーがあり、わかりやすく学べる(真ん中に写るのが本展を監修した河江氏)。

    ツタンカーメン時代の遺物・130点以上のスーパーレプリカ 

     わずか9歳でファラオに即位し、19歳の若さで亡くなった古代エジプト王・ツタンカーメン。1922年、イギリスの考古学者ハワード・カーターによって発見された彼の王墓は、古代エジプト王の墓の中でも特に盗掘を免れ手付かずの状態を保っており、様々な遺物や棺が出土した。しかし、そこに眠るツタンカーメンの物語は、今なお多くのミステリーをはらんでいる。 

     というのも、ツタンカーメンの父であるアクエンアテンは、古代エジプトの宗教を多神教から一神教へ変更するという大変革を行なった人物。その宗教改革によって当時のエジプトは混乱に陥り、息子のツタンカーメンの代でもう一度、多神教に戻されたという歴史がある。 
     そんなアクエンアテンの行いが影響し、ツタンカーメンを含む彼の一族は、後世になって歴史から抹消=意図的に消されていた。そのせいで歴史的に伝わる情報も少なく、今も多くの謎に包まれているというわけだ。 

     本展では、最新の学術的知見や研究成果をもとに、そんなツタンカーメンの実像に迫る試みがなされている。

    「黄金のマスク」の実物大スーパーレプリカ。

     大きな見どころは、世界に3セットしか存在しないという「スーパーレプリカ(超複製品)」の展示。ツタンカーメンの墓から発見された、かの有名な黄金のマスクや玉座、副葬品など130点以上の遺物を実物大で忠実に再現している。ガラスケースの中に展示された本物とは異なり、レプリカなので直接間近で鑑賞できるのがポイントだ。 

    「アヌビス神像付厨子」。
    「カノプス人型棺容器」「カノプス厨子とその天蓋」、儀礼用具など。
    数々のシャブティ(副葬品の人形)も。
    ツタンカーメンのミイラの装飾品は、人型に合わせて配置。実際どのように取り付けられていたかわかりやすい展示になっている。
    ハワード・カーターのスケッチのレプリカまであるのが臨場感を高めてくる。
    ヒエログリフの解説コーナーもかなり充実。
    「黄金の玉座」を模したコーナー。
    “遺物同士をくっつける”といった、本物ではできないような展示方法はスーパーレプリカならでは。
    父アクエンアテンにまつわる展示は「アテン信仰」を再現したもので、なかなか象徴的。 
    アクエンアテンの王妃ネフェルティティ。彼女がツタンカーメン王墓の謎をとく鍵を握る……?

     さらに、プロジェクションマッピングを活用した映像体験コーナーも設けられている。父アクエンアテンの宗教改革から続くツタンカーメンの謎に満ちた物語や、その墓をハワード・カーターが発見した流れなど、デジタルとアナログを融合させた臨場感のある展示でわかりやすく勉強できる。

    ツタンカーメンのミイラが収められていた金箔の厨子と、人型棺を展示したプロジェクションコーナー。
    ⒸWORLD SCAN PROJECT、Ⓒミステリー・オブ・ツタンカーメン
    映像にぐるりと取り囲まれるプロジェクションによって、ツタンカーメンの物語に没入できる。
    ⒸWORLD SCAN PROJECT、Ⓒミステリー・オブ・ツタンカーメン
    3つの巨大な厨子が並ぶさまは圧巻! 包帯を含め、ツタンカーメン王は11重にも覆われて埋葬されていた。

    王家の谷にあるツタンカーメン王墓を会場内に再現 

     そして本展のクライマックスは、エジプト南部ルクソールの西に位置する通称“王家の谷”にあるツタンカーメン王墓の玄室を再現した部屋だ。 

    「TOMB OF TUT ANKH AMUN NO:62」(ツタンカーメンの墓 62号墓)。自分も発掘隊になった気分。
    ツタンカーメンの謎めいた情報をまとめた展示通路では、背丈比べもできる。

     ルクソールに行かなければ感じられないような佇まい、サイズ感、壁画や副葬品、カビの生え具合までリアルに再現した空間演出は圧巻で、まるで100年前にハワード・カーターがその場所を発見した時のような雰囲気を味わえる。 

    緻密に再現された王墓の中へ。
    かつて、角川武蔵野ミュージアムで展示したものをそのまま横浜に移築。
    壁画に染みついたカビまでミリ単位で再現されているというから驚き。

     本展は“体感型・イマーシブ”といったキーワードを謳っている。面白いのは、古代エジプト時代の雰囲気はもとより、今から100年前にハワード・カーターがそれらを発見した時の空気感や、カイロ・エジプト博物館に行ったかのような体感も得られる構成になっていることだ。 
     ちなみに、2025年5月6日の1日限定でペットと一緒に館内を鑑賞することができる「ツタン“ニャー”メンデー」も開催予定。ぜひ今年のゴールデンウイークは、“横浜みなとみらいのエジプト”へお出かけしてみては? 

    <開催概要>
    「MYSTERY OF TUTANKHAMEN/ミステリー・オブ・ツタンカーメン~体感型古代エジプト展~」
    会場:ツタンカーメン・ミュージアム
    (神奈川県横浜市西区みなとみらい4-3-1 PLOT48/みなとみらい線 新高島駅より徒歩7分)
    開催期間:2025年12月25日まで
    開館時間:11時~18時(最終入館17時30分)/GW期間は10:00~18:00(最終入場 17:30)/毎週火曜休館(5月6日は開館・翌7日休館)
    ※休館日、開館時間は変更となる場合がございます。最新情報はHPでご確認ください。
    入場料:一般2,600円/中高生2,000円/小学生1,500円 ※未就学児無料
    ※音声ガイド付きチケットあり(別料金)
    https://tutankhamen.jp/

    杉浦みな子

    オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
    音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。

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