アニメ「宇宙人ムームー」の重要人物を確保! ムーの無断使用疑惑やUFO技術について真相を問いただすインタビュー

文=鈴木翔子

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    宇宙人、猫、家電のフュージョンアニメに「ムー」が出てくる……? なしくずしのようなコラボを受けて、ついに関係者へのインタビューを実行する!

    「宇宙人×家電×猫」という珍妙奇漫画の黒幕は……?

     昨年11月の謎めいた情報提供に始まり、12月に「ムー」とのコラボグッズが発売されていることが判明した、漫画作品「宇宙人ムームー」(しかもコラボグッズは第2弾まで発売されている)。
     さらにこの4月からアニメまで放送されているとのこと。

    「ムー」とのなしくずしのコラボであるが、さすがにそろそろ野放しにはしていられない……。
     ということで、原作漫画の作者である宮下裕樹先生と、主人公の猫型宇宙人・ムームーの声を担当する小桜エツコさんを拉致し、真相解明を図ったのでその結果を報告しよう。

    宮下先生(左)と小桜さん(右)。そして、ふたりだけを捕獲したはずがいつのまにか現れていたムームー(中央)。さすが宇宙人、この大きさにして気配を消せるのか。

    --作品名も「ムー」を含み、ロゴまでそっくりで、我々もそろそろ放置できない事態となっています。そもそもおふたりは、「ムー」の存在を知っていたのでしょうか。

    小桜さん・宮下さん(以下、敬称略):もちろん、知っています!

    小桜:子どものころから知っていますし、読んだこともあります。オカルトのプロ中のプロが読む雑誌というイメージ。不思議なことがあると友だちと「ムーっぽいよね」と話したりしていました。

    宮下:子供の頃から都市伝説とかが好きだったので、見かけたときは手に取って読んだりしていました。漫画でいうと、「MMR マガジンミステリー調査班」とかも読んでいましたし。

    --ということはズバリ「宇宙人ムームー」のムーは「ムー」のムーなのでしょうか。

    宮下:あ、そうですね……。

    小桜:え、そうなんだ!

    宮下:宇宙人の話を描こうとなったときに、担当編集さんと名前をどうするか話していたら「ムー」が頭に浮かんだんです。まさかコラボグッズが出たり、こんな拉致されたりするまでになるとは……。

    ーー漫画雑誌「ヤングキングアワーズ」に第1話が掲載されたときから、ロゴもそっくりですよね。

    宮下:ロゴもいつのまにかできていて、担当編集の中では完全にムーに寄せていこうと決めていたんだと思います。

    「ムー」に寄せた感が否めない。
    「ヤングキングアワーズ」編集部の公式X(https://x.com/YKOURS/status/1795984470891520461/photo/3)より。「ムー」への意識が明らかな「宇宙人ムームー」ロゴである。

    ーーさておき、「宇宙人×家電×猫×ラブコメ×バトル」漫画という形容しがたい作品になったのはなぜでしょう。

    宮下:連載を考えていた時期がちょうど、蘊蓄(うんちく)系の作品が人気の時期だったんです。それでテーマを探していたところ、僕の子どもが家電の分解図を載せた図鑑を持っていて、そこに家電の仕組みを伝える漫画が描かれているのを見つけて、「これだ!」と。

    ーーえ? 宇宙人まったく関係ないですね……。

    宮下:いえいえ、ちゃんと意味はあります! というのも、家電を学ぶだけだとつまらないなと思ったんです。であれば、文明が崩壊した星に住む宇宙人が、その基礎を学び直す意味で家電を調べるという内容にしたら面白そうだなと。そこで、宇宙人が出てきたわけです。

    ーー宇宙人目線での家電学習作品なんですね。でも猫型なのはなぜ……?

    宮下:地球に潜伏するときに、宇宙人であることがバレにくい存在ってなんだろうと考えて、猫は比較的自由に生きられるし、おかしなことをしてもとがめる人が少ないだろうということで選びました。

    小桜:「家電→宇宙人→猫」という順で設定が決まっていったんですね! てっきり宇宙人から始まったのかと思っていました。

    ムームーは、遠い宇宙から地球にやってきた異星人。滅んでしまった母星の文明復活のため、家電を通じて技術を勉強している。チャックの中身はまだ誰も知らない……。
    ちなみにアニメのムームーはこちら。なぜ襟が付いているのか、これも誰も知らない。

    ーームー的にはもっと宇宙人が出てくるのを期待していたのですが、家電8割の漫画ですよね。……実は、担当編集であり「ヤングキングアワーズ」の編集長でもある星野さんとムーは、10年ほど前からご縁がありまして、本作の黒幕は担当さんなのではと予想しています。

    星野:幽霊がテーマの作品を担当していたときに、ムー編集部の望月さんと渋谷・代々木エリアの心霊スポットを一緒に周る回がありました。幽霊は出ずに、羽化するセミを見つめて終わりましたが……。ずっと「ムー」を読んできたムー民としては、宇宙人要素が少ないというご指摘に忸怩(じくじ)たる思いです……。

    宮下:そうですね。名前をお借りしていますし、今後もっと濃くしていかなければならないですね。

    星野:ただ漫画の最近の話では、青森のキリストの墓の話がでたり、オーパーツの話が出てきたりしているので、少しずつ濃くなってきているとは思います……!

    宮下:確かに濃くなってきてはいると思いますし、これから新しい宇宙人ももっと出していきたいと思います!

    ーーぜひ、お願いします! もし宇宙人について監修が必要でしたら、お引き受けしますのでおっしゃってください。

    ムームーが乗ってきた宇宙船。

    町田を舞台にリバースエンジニアリングの逆をやる

    ーー本作は東京の町田が舞台になっていますが、なぜなのでしょう? 町田は、全国でも珍しい天狗道祖神がありますが、猫型宇宙人は本作以外で聞いたことが……。

    宮下:僕が学生時代に住んでいたのが小田急沿線だったからです。小田急線沿線上に住んでいると、町田を東京じゃないといじる慣習があり、作品内でネタとして使わせていただいています(東京対象のクーポンが使えないという描写があります)。

    アニメでははっきりと町田が舞台として設定された。

    小桜:今日ここに連れて来られる前に、町田市役所にご挨拶に行ってきたんですよね!

    宮下:プロモーションのはずなのに、全体的に町田をディスる形になってしまって……。ただ、みなさん言われ慣れているようで、あたたかく受け止めてくださいました。

    漫画では僕が住んでいた神奈川側の描写が多いのですが、アニメは完全に町田が舞台になっていて、実在する場所が出てくるので「あ、これはあそこだ!」と楽しんでいただけると思います。

    町田市役所を訪問した際の様子。町田市でのインタビューはこちら(https://keeponloving-machida.com/special/mumu/)。

    ーー「墜落したUFOから技術をフィードバックして電子レンジが発明された」という話のように、リバースエンジニアリング説があるなかで、今回はその反対、「UFOの修理のために家電を研究する」という設定に驚かされました。

    宮下:普通自分ではスマホの修理ってできないですよね。なんならバッテリー交換も難しいのが現実。つまり、普段自分が使っているモノでさえ、僕たちは修理ができないわけです。そして、おそらく宇宙人もそうなのではないかなと。しかも高度なものになればなるほど、分業になり、部分的にしか直せる人はいない。であれば、量産されている家電から高度なモノに通じる技術を学ぶという設定があってもいいのでは、と考えました。

    ーー家電を修理したり改造したりする描写も多く、いち生活者として勉強になりました。断線したコンセントを自分で直す方法など、今度やってみたいなと。

    宮下:コンセントのお話は、漫画を監修してくださっている家電ライターの藤山哲人さんがブログに書かれていて、ネタにさせていただきました。なので、実は僕もまだやったことがありません(笑)。

    ーー監修がついているとはいえ、マニアックな内容が多く、宮下さん自身にもある程度知識がないと、ストーリーに落とし込めない気がしています。

    宮下:実は、工学部出身ではあるんですよね。一応理系なので、大きく分けるとそちらの方面の知識も多少は持っているんです。登場人物や学生生活の描写も、僕の学生時代の記憶を生かしています。

    ーーとなると、宮下先生も作品に出てくる家電を修理・改造するサークル(「人類再生研究会」)所属だったとか?

    宮下:いえ、普通の美術系のサークルでした。ただサークル棟に、自動車やバイクのサークルがあったので、あの人たちあんなことしていたな〜なんて思い出しながら描いています。

    頭から湯気を出す人が現れる奇怪なアフレコ現場

    ーーそんな設定が盛りだくさんの謎作品ですが、小桜さんは、初めて読んだときにどう感じましたか?

    小桜:今までにない面白い作品だなと思ったんですが、そもそも私自身、PCすらろくにいじれないレベルの人間なので、家電の仕組みの説明が難しく、それらを説明するセリフを見てどうしようかなと思いました。でも実際にやってみたら、動きと音が加わることで、意外と理解しやすくて。アニメになることで、より幅広い人にわかりやすく届く気がしますね。もちろん漫画好きの人であれば、漫画をじっくり読み込んで理解するのも楽しいと思います。

    宮下:僕もアニメを見て同じことを感じましたね。文字で説明されていた部分が、セリフになって耳から入るのでわかりやすいですし、アニメなら3Dモデルを動かしなら説明できるので、直感的に理解できるんです。

    小桜:大事なところがピコピコ光ったりね! なので、お子さんが見ても理解できるんじゃないでしょうか。とはいえ、演者からすると、一文が長く途中で切れないので大変ではあります(笑)。

    専門用語も多いですし。「人類再生研究会」部長の天空橋役を演じる木内さんは、とにかく説明セリフが多いので、冬でも半袖を着て、頭から湯気を出しながら頑張っていました!

    「宇宙人ムームー」は家電の分解や構造の解説も多く、学べる作品。

    ーー宮下さんはリアリティを出すために、家電工場なども見学されたとお聞きしました。

    宮下:漫画の33話で出てくるんですが、特に印象に残っているのはパナソニックの「アラウーノ」というトイレ便器の工場ですね。下ネタになってしまいますが、便器の開発のために大便・小便の特性を徹底的に研究していて、例えば男性の場合、小便ってねじれるようにして出てくるので、そのねじれを再現しないと便器に当たったときにどのようにハネるかわからない。ということで、そのねじれを再現する機械を作って試しているんですよ。

    ーーゴールとなる「便器」を作る前に、実験用の機械作りでもたくさんテストをしているんでしょうね。……それはすごい熱意です。

    宮下:大便も、本物以上にこびりついたり、油分も多くしたりといったことなんだと思いますが、「本物以上の本物」を作っていると自負されていました。材料の配分は企業秘とのことで漫画には描けなかったんですが、とにかく小便・大便に対する熱意を感じました。

    小桜:アニメでも、「アラウーノ」の回があるのでぜひ楽しみにしていてください!

    ーー漫画だと、便器の回のラストがハートフルで、宮下さんのストーリーテラーとしての手腕を感じました。アニメ版も楽しみです!

    32歳の青年を降臨させると「ムームー」の味が出る

    ーーところで小桜さんは、これまでアニメ「ケロロ軍曹」でタママ二等兵という宇宙人を、「妖怪ウォッチ」でジバニャンという猫型妖怪を担当していて、今回はある種そのハイブリッド。「宇宙人×猫」の役作りはどのようにされたのでしょうか。

    小桜:宇宙人という設定は物語の最初で説明されているので、演技で宇宙人っぽさを出そうとは特に意識していませんね。ただ、ジバニャンとの差別化は考えています。具体的には、ジバニャンは少年のイメージで演じるのに対し、ムームーでは32歳ぐらいの男性をイメージしています。というのも物語が進むと男性声優さんが演じるキャラクターとバトルをしたりするので、負けないようにしないといけないから。ただ、じゃれあったりするかわいいシーンはいつも通りの声です。

    *アニメのPV冒頭の声がまさに、真面目モードのムームー。「同胞の未来を担っている役でもあるので、それを伝えるモノローグなどは、青年の声じゃないとしっくりこないんです」(小桜さん)

    宮下:実際に小桜さんの声を聞くと、ジバニャンよりも知的というか、皮肉も言うのでIQが若干高めな感じがしますよね。初めて聞いたときに、ムームーのこにくたらしさもちゃんと感じられて、感動しました。

    小桜:ジバニャンは「コロコロコミック」、ムームーは「ムー」というイメージでもあります(笑)。

    最初の1、2テイクは少年っぽい声だったが、監督からの「ムームーの登場シーンはもう少し青年っぽく」というリクエストを受けて臨んだ3テイク目には、完全にムームーが憑依していたそう。「あ、今ムームーが生まれた!って感じで、ほんとすごかったです」(今回の取材現場に同席していた、アニメの制作スタッフさんより)

    宮下:小桜さんをはじめ皆さんの声が役に見事にハマっていて、最近は漫画を描くときにみなさんの声が聞こえてくる感じがするんですよね。

    アニメになるとノーマルキャラがサイコパスに豹変

    ーー他にアニメならではの見どころや、新たな気付きはありましたか?

    宮下:気付きといえば、「人類再生研究会」に所属する六郷というキャラクターがいるんですが、ほかのキャラクターがあまりにも濃いので、僕としてはクセのないキャラクターだなと思っていたんです。でも、アニメになったら声優さんの演技も相まって、実は最もサイコパスなキャラだったんですよ。アニメを見てそっちの方が面白いなと思いました。

    小桜:個性が強い声優陣が集まっているので、漫画でも十分濃いキャラクターたちが、それを超えるくらい濃くなっているので、原作ファンの方にも面白く思ってもらえると思いますね。でもセリフやストーリーはかなり原作に忠実で、原作の世界観は壊していないので安心してください!

    ーー世界観といえば、エンディング曲が作品にぴったりですよね。たまの懐かしの名曲「さよなら人類」のリメイクで、ムームーとヒロインの桜子が歌っていますが、かわいくて頭から離れません。

    小桜:ありがとうございます! この曲は、宮下先生が使いたいとリクエストしたって聞きました。

    宮下:一応、僕のアイデアという体にはしているんですが、正確にいうとアシスタントの子に「『さよなら人類』ってムームーっぽくないですか」って言われたことがあって、僕も「もしアニメ化することがあったら絶対にこの曲を使いたい!」って思っていたんです。そしたら本当に実現しちゃいました。ぜひ、エンディング曲まで、楽しんでいただけたらうれしいです。あとは動きが加わることで猫のかわいさも倍増しているので、そこもぜひ!

    小桜:でも宮下先生、猫を飼ったことがないって……。

    一同:えーーー!

    宮下:あ、そうですね。猫の仕草はいっぱい出てくるんですが、実は飼ったことがなくて。なのでムームーの動きには、自分の子どもの動きを投影しています(笑)。例えば抱っこしたときに、嫌だと体をねじって脱力するようにして逃げるので、たぶん猫もこれやるんだろうなーって思って取り入れたり。そんな裏ネタも想像しながら楽しんでいただけたらと思います(笑)

    ……と、だいぶ長くなったので、今回の調査報告はここまでとしよう。後編では、ふたりがこれまでに体験した不思議体験をお届け予定。ムー編集部がその謎に迫るとか迫らないとか……。乞うご期待を。

    アニメ「宇宙人ムームー」
    遠い宇宙から地球にやってきた猫型異星人・ムームー。その目的は、自らの種族が失ったテクノロジーを取り戻すため、地球で家電の技術を学ぶこと。主人公・桜子の平凡な大学生活は、ムームーの登場で一変! 予想外の同居が始まり、次々と起こる騒動に巻き込まれることに。ムームーとの化学反応が巻き起こす、スーパースペクタクル×家電あれこれ×にゃんコメディ。

    アニメ公式サイト https://ucyujin-mumu.com

    【放送情報】
    TOKYO MX/BS11にて毎週水曜24:00〜、MBSにて毎週土曜26:38~、群馬テレビにて 4月9日より毎週水曜日25:00~、北陸放送にて 4月14日より毎週月曜日26:00~、AT-Xにて 4月14日より毎週月曜日22:30
    放送中 ※放送時間は変更になる可能性があります

    【配信情報】
    〈最速配信〉ABEMA/dアニメストアにて 4月9日より毎週水曜日25:00~
    〈見放題サービス〉バンダイチャンネル/DMM TV/FOD/Hulu/Lemino/MBS動画イズム/Prime Video/U-NEXT 各配信プラットフォームにて順次配信 4月14日より毎週月曜日25:00~
    J:COM STREAM 見放題/milplus/TELASAにて 4月16日より毎週水曜日0:00~
    〈都度課金サービス〉バンダイチャンネル/ニコニコチャンネル/Prime Video/Rakuten TV/Video Market 各配信プラットフォームにて順次配信4月14日より毎週月曜日25:00~
    J:COM STREAM/milplus/TELASAにて 4月16日より毎週水曜日0:00~
    MBS動画イズムにて 4月22日より毎週月曜日25:00~
    〈最新話無料サービス〉ABEMAにて 4月9日より毎週水曜日25:30~、MBS動画イズムにて 4月14日より毎週月曜日25:00~、TVerにて 4月14日より毎週月曜日25:00~、U-NEXTにて 4月14日より毎週月曜日25:00~、ニコニコ生放送にて 4月15日より毎週火曜日22:00~
    ※放送時間は変更になる可能性があります

    ©宮下裕樹・少年画報社/京急大学人類再生研究会

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