睡眠で時間を超え、集合的無意識に触れる…「夢の中で意識は多元宇宙を旅する」研究論文発表!
我々は人生の3分の1を眠って過ごすが、ひょっとすると就寝中の夢の中ではもう一つの人生を送っているのかもしれない。この睡眠中のオルタナティブな人生の舞台は、時空を超えていることが最新の研究で示唆されてい
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17世紀フランスの哲学者・パスカルによれば、人間は「考える葦」であるが、ある先鋭的植物学者によると人間とはサイケデリクスに魅了された猿であるという――。
1960年代のアメリカで生まれたカウンターカルチャーであるヒッピー文化は、反戦や自然回帰、自由や博愛などの崇高な理想を標榜していた一方で、ドラッグの影響も色濃く受けていた。
またこの時代のアーティストやミュージシャン、作家などのクリエイターの中にはドラックを服用した状態で創作活動を行う者も少なくなく、広い意味でのドラッグカルチャーが隆盛を見せていた。
ひょっとすると人類の知的活動とドラッグは密接に結びついているのだろうか。猿から進化したとされる我々の祖先は、どこかの時点で幻覚を引き起こすサイケデリクスを摂取して知的能力を大幅に向上させてきたのだろうか。
アメリカの民族植物学者、神秘主義者、向精神薬の提唱者であるテレンス・マッケナ(1946〜2000)は、1992年の著書『Food of the Gods』(邦訳版『神々の糧』)で「ストーンドエイプ仮説(stoned ape theory)」を提唱し、シロシビン成分が含まれたキノコの常用が、ホモ・エレクトス(現代人に非常に近い親戚)からホモ・サピエンスへの進化の過程で脳サイズの劇的な増加を促進したと主張した。
ストーンドエイプという、いわば“我を忘れた猿”が人類のオリジナルの姿であるというのだ。
彼の考えでは、シロシビン成分が低用量では狩猟のための視力が鋭敏になり、中用量では社会的絆と性欲が高まり、高用量では抽象的思考、霊的認識、象徴的言語につながる神秘的な状態が引き起こされ、意識が飛躍的に拡張されたという。
「ストーンドエイプ仮説」は主流のサイエンスではあまり検討されることはなかったが、海外の高名な科学系メディア「Popular Mechanics」の記事によれば、向精神物質が脳に与える影響に関する新たな研究が続いていることから今日、この理論に再び注目が集まっているという。
2024年に学術誌「Nature」に掲載されたメタ分析では、幻覚剤が通常は相互作用しない脳ネットワーク間のコミュニケーションを促進し、新たなコネクションや創造的な洞察に通じており、また個々のネットワーク内の従来型の密接なつながりを弱め、思考パターンを混乱させ、拡張された意識状態を引き起こすことが報告されている。
同様に心理学系メディア「Psychology Today」の記事では、幻覚剤が精神パフォーマンスを超越し、脳の“再配線”を促進できることを示す研究が取り上げられている。
やはり人類とドラッグは不可分の本質的な関係にあるのだろうか。
「ストーンドエイプ仮説」に科学的根拠はあるのだろうか。
神経科学者のエイミー・クレア・ライヒェルト博士は、この理論は「推測の域を出ない」と表明しており、脳の複雑さは幻覚剤による突然の飛躍ではなく、長期にわたる遺伝子と環境圧力の相互作用から生じると指摘する。
「シロシビンの摂取は脳内の神経可塑性関連プロセスに変化を引き起こすことが実験的に証明されていますが、マッケナのストーンドエイプ仮説は、向精神性植物の摂取と複雑な神経進化の間に直接的な因果関係があると仮定しています。これは化石証拠(fossil evidence)の裏付けがないため、おおむね推測の域を出ません」(ライヒェルト博士)
ほかの科学者もこの懐疑論に同調しており、特に進化を促す生物学的メカニズムに関しては疑惑の眼差しが強く向けられている。
「おそらく最も重要な反論は、幻覚剤がDNAに及ぼす影響についての証拠がないことです」と語るのは、神経科学者でケタミン補助精神療法を提供する組織「Hive Bio」の共同設立者でもあるナタリア・ボロビエワ博士だ。
「進化が起こるには、DNA鎖が変化しなければなりません。そして、その変化は有益でなければなりません。シロシビンは意識に短期的な変化を引き起こしますが、それだけでは自然淘汰が機能するには不十分です」(ボロビエワ博士)
やはり、「ストーンドエイプ仮説」はサイエンス的には無理がある理論ということになるのだろうか。
ただし、一部の専門家は、幻覚剤が人間の生物学的特徴を直接変えたわけではないとしても、人間の経験に大きな影響を与えてきたと考えている。
メンタルヘルス治療用ソフトウェアを開発する会社「SoundSelf」の共同設立者兼最高科学責任者であるサンディープ・プラカシュ博士は「人間は、環境中で見つけた植物や菌類を食べたり、さまざまなエクスタシー儀式を通じて、非常に長い間、非日常的な状態、つまり意識が拡大する状態にアクセスしてきたという圧倒的な証拠があります」と説明し、「ストーンドエイプ仮説」への興味を持ち続けていることを表明している。
とはいえプラカシュ博士は、マジックマッシュルームが現代意識の出現の原因であると言うのは大げさだと認めている。幻覚剤は人間の文化の集団儀式に関係したものであるということだ。
「私たちは『儀式的意識』を失っています」とプラカシュ博士は言及し、かつては儀式や地域の集まりでマジックマッシュルームが摂取されており、それによって高められた意識、実存的な意味、つながりを人々が得ていたことを指摘する。
「“科学的唯物論”では私たちが自己反省的な意識、芸術、音楽、象徴的な言語をどのように進化させたのかを説明することはできません」とラカシュ博士は説明し、しかし「これは私たちが決して知ることはないかもしれません」と結論づけている。
「ストーンドエイプ仮説」は意識の謎に足を踏み入れている理論でもあり、今のところは“科学的唯物論”では解けないハードプロブレムということになりそうだ。
【参考】
https://www.popularmechanics.com/science/a64234723/consciousness-stoned-ape-theory/
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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