ポップアートが予言の絵に!? 米国会議事堂襲撃事件とトランプ暗殺未遂事件を予言していたアートを発見!

文=ケリー狩野智映(海外書き人クラブ/スコットランド・ハイランド地方在住ライター)

    世界を揺るがすアメリカ大統領選挙。なによりトランプ前大統領の動向は何かと話題になりがちだ。そんな世相を描いていたら、現実が追い付いてしまった……? スコットランドのポップアートが、新たな都市伝説の題材になるのか?

    トランプ前大統領暗殺未遂の「右耳」

     1990年代に販売されていたアメリカのイルミナティカードゲームのなかに、世界中を震撼させた2024年7月13日のトランプ前大統領暗殺未遂事件を予言していたとされるカードがあったことは、ムー民の間で周知の事実であろう。

     だが実は、イギリス北部スコットランドの風光明媚なハイランド地方を拠点に活動するポップ・シュルレアリスム系アーティストが、この事件、トランプ前大統領の暗殺未遂を予見していたのではないかーーそう思わせる作品を描き上げていたことが発覚した。

     こちらが問題の作品。

    ニワトリを盗んで逃げるキツネを描いたこの作品は、トランプ前大統領の機密文書不正持ち出し事件を風刺したもの。©Michael Forbes

     作者であるポップ・シュルレアリスム系アーティストのマイケル・フォーブス氏(56)がこの絵を初めて自身のFacebookアカウントで公開したのは、2023年5月3日のこと。つまり、事件発生の1年以上前の話だ。
     トランプ前大統領が大統領退任時に機密文書を持ち出していたという報道について、友人たちと話し合っていたときに思い浮かんだ構想を絵にしたもので、白いニワトリは機密文書、それらを抱えて逃げるキツネがトランプ前大統領。銃弾が右耳を貫通するというアイデアは、最後の仕上げに取りかかっていたときにふと閃いたそうだ。

     弾道の向きと銃弾が貫通という点が実際の事件とは異なるが、この絵がトランプ前大統領を風刺したものであり、銃弾を受けたのが右耳で、軽傷であるという事実を考慮すると、これが予言絵であったのではないかとも思えてくる。

    米国会議事堂を占拠する暴漢

     フォーブス氏はトランプを題材にしたシュールな絵画を数点描き上げているが、それらのなかで予言絵の可能性を秘めているものは上の作品だけではない。

     下の作品をご覧あれ。

    米国民主主義の象徴を占拠するオレンジ色のキングコング。 ©Michael Forbes

     白人至上主義団体「クー・クラックス・クラン」の白い頭巾を被り、米国会議事堂を占拠するオレンジ色のキングコング、空気中に飛び交うウイルス、噴射する催涙スプレー、そして恐怖に慄くマスク姿の黒人ワンダーウーマンが描かれている。

     コロナ禍の渦中、人種主義差別者で白人至上主義者の側面をチラつかせるトランプ大統領が独裁者のように振る舞い、アメリカの民主主義を脅かしていると感じて描いた作品だ。オレンジ色のキングコングはトランプ、そして黒人のワンダーウーマンはアメリカの良識を象徴しているのだという。

     フォーブス氏がこの作品を最初にソーシャルメディアで公開したのは2020年7月7日。
     それから半年ほど経った2021年1月6日。前年11月の大統領選でトランプを破ったジョー・バイデンの次期大統領就任を正式に確定する議会が開かれていた国会議事堂を、トランプの煽動で暴徒化した支持者たちが襲撃した。これは、世界中を驚愕で包み戦慄させた、アメリカ民主主義の根幹を揺るがす事件だった。

    2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件。写真=Tyler Merbler

     フォーブス氏は己の目を疑った。自分のあの作品は、この事件を予見していたのか。
     普段は、無数の窓や柱を備えた米国会議事堂のように極めて細かいディテールのある建物は「描きたくないから描かない」フォーブス氏だが、あの作品の構想が思い浮かんだとき、米国会議事堂は絶対に外せない中核的な要素だと強く感じたという。

    マイケル・フォーブス氏。同氏のアトリエにて筆者撮影。

    トランプ氏のコロナ感染をBATが象徴する

     そしてもう1点、「もしかして予言絵?」がある。

    『Trump Repellent』と題された作品なのだが、バットマンがトランプにスプレーを吹きかけている。「Repellent」とは、忌避剤または駆除剤のこと。

     フォーブス氏はこの作品を何度もソーシャルメディアでシェアしているが、最初に公開したのは2017年2月2日。

    2017年2月2日のフォーブス氏のInstagram投稿のスクリーンショット。

    「とんでもないこじつけだ!」という声もあがるかもしれないが、この絵はトランプのコロナ感染を暗示しているとも解釈できる。なにしろ新型コロナウイルスはコウモリ(BAT)の個体群から発見されているのだ。
     トランプがコロナ感染を公表したのは2020年10月2日のこと。フォーブス氏が初めてこの作品を公開してから、ちょうど3年8か月後のことだ。

     20年近く前からドナルド・トランプを危険視してきたフォーブス氏。今年のアメリカ大統領選では、カマラ・ハリスが勝利することを期待しているものの、そうなればトランプ側が大人しく引き下がるとは思えないし、トランプ再選となれば、権力の頂点の座に君臨するトランプが、深刻な社会の分断をさらに加速させ、民主主義を一気に解体するのではないかという危惧の念を抱いているという。多くの人々がそうであろう。

     下の作品は、世界的な社会現象ともいわれるシンガーソングライター、テイラー・スウィフトがカマラ・ハリス支持を表明した翌日の、2024年9月11日にソーシャルメディアで公開したもの。

    今年9月11日のフォーブス氏のInstagram投稿のスクリーンショット。

     果たして、全世界が神経を尖らせて注視する今年のアメリカ大統領選の結果はいかに?そして、フォーブス氏の作品には、その答えがあるのだろうか……。

     さて、そのマイケル・フォーブス氏とはどんな人物か?
     後編となるインタビュー記事をチェック!

    ケリー狩野智映

    スコットランド在住フリーライター、翻訳者、コピーライター。海外書き人クラブ所属。
    大阪府出身。海外在住歴30年。2020年より現夫の故郷スコットランド・ハイランド地方に居を構える。

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