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吉村正和 著
近代の魔術・神秘主義・秘教に関する情報を網羅
「魔術とは、想像力と意志によって個人と共同体が深層において期待しているものを〈幻想〉のなかで実現しようとする人間的な営為にほかならない」。本書は魔術を、このように定義する。
その上で、「ヨーロッパにおける魔術の歴史と理論を、とくに近代に焦点を合わせて検証」していく。内容はまさに百花繚乱で、古代・中世から近代の魔術・神秘主義・秘教に関する必要十分な情報があまねく網羅されている。
極めて細かい小さな文字で三段組み、これでもかと大量の情報が塡充されていて、その読み応えたるや、軽く眩暈がするほどである。
並の解説書数冊分に匹敵するヴォリュームに、カラーを含む貴重な多数の図版、そして学術的に全幅の信頼を置くことのできるその内容。これで税別2300円というのは、あまりにもリーズナブルである。少しでもこの分野に興味のある人なら、こぞって買い求めて書架に蓄えるべき必須文献といえよう。
著者の吉村正和氏は、近代ヨーロッパ文化史・西洋神秘思想史を専門とする碩学で、現在は名古屋大学名誉教授。
まさに斯界の最高権威であり、評者もこの方から受けた学恩は計り知れない(若かりし頃に貪り読んだ氏の著書や翻訳書は、現在も評者の血肉となっている)。
なお、本書は2013年に刊行された『図説 近代魔術』の改題・新装版ということなので、同書をすでにお持ちの方はご注意されたい。
(月刊ムー 2024年10月号掲載)
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