大予言者ノストラダムスの素顔と、残された未来予言/世界ミステリー入門
難解かつ謎めいた四行詩によって、数多くの歴史的大事件を予言したノストラダムス。特に、「1999年7の月」ではじまる内容の詩は、「終末予言」として現代のわれわれにも衝撃を与えた。しかし、その生涯や予言
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どせいさんは90年代オカルトの具現化か…⁉︎ スーパーファミコン時代の名作RPG「MOTHER2 ギーグの逆襲」発売30周年を記念して、ムー的視点で作品世界を考察する。
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テレビゲームのソフト史を語る時、絶対に外せない名作と言えば何だろう? もちろん年代によって答えは変わるだろうが、筆者と同じアラフォー〜アラフィフ世代の多くが名を挙げるであろうタイトルのひとつが、「MOTHER」シリーズ(発売元:任天堂)だ。コピーライター・糸井重里氏が生み出したRPGの3部作であり、傑作である。
1989年発売の第1作「MOTHER」はファミコン、1994年発売の第2作「MOTHER2 ギーグの逆襲」(以下、MOTHER2)はスーパーファミコン、そして2006年発売の第3作「MOTHER3」はゲームボーイアドバンスと、任天堂ゲーム機の世代をまたいで登場した。現在は3作品とも、「Nintendo Switch」でプレイできる。MOTHERとMOTHER2は任天堂の有料オンラインサービス「Nintendo Switch Online」への加入、MOTHER3は同「Nintendo Switch Online + 追加パック」への加入で遊べる。
なお、特にシリーズの中でも名作と名高いのが、2作目のMOTHER2だ。
物語の舞台は199X年の地球。地球の未来を救うため、4人の子供たちが冒険をする。大人もクスリと笑える「ゆるふわな世界感」、そして暖かいユーモアに溢れつつ、どこかセンチメンタルなそのストーリーは、「不思議の国のスタンド・バイ・ミー」とでも表現するのが良いであろうか。
スーファミのドット絵が醸すチープ感が映えるビジュアルセンスと、糸井節が炸裂するセリフやワードには、当時の既存のRPGへのカウンターとも言える斬新さがあった。本作は熱烈なファンと次世代に続くフォロワーを生み、令和の世にも、各分野でその影響を受けたと語るクリエイターは多い。
しかしその「ゆるふわな世界観」の中に、実はムー的な暗号が散りばめられていたことにお気付きだろうか…?
思えばMOTHER2が発売された1994年当時の日本は、70年代から続いたメインストリームとしてのオカルトブームが成熟期に達したピークだった。今改めて本作をプレイすると、そんなブームの総決算と言わんばかりに様々なオカルトモチーフが出てきて震える。
今年、発売から実に30周年を迎えたMOTHER2。今回はそんなアニバーサリーイヤーを記念して、90年代オカルトを軸に、ムー的視点で作品世界を振り返りたい。
〜イベント情報〜
渋谷PARCO 8階のショップ「ほぼ日曜日」では、本作の誕生30周年記念展覧会「『MOTHER2』のひみつ。」が2024年8月1日から開催! 「MOTHER2」が完成するまでに生まれた貴重な資料を一堂に見ることができる機会を、ぜひお見逃しなく。
https://www.1101.com/n/s/mother_project/mother2_himitsu/2024-07-12.html
いきなりだが、まず本作のラスボスであるギーグの存在が90年代を象徴的に表しているので、そこから触れたい。
MOTHER2の冒頭では、「10年後(2000年以降)の地球は、宇宙からの侵略者ギーグに支配され、地獄のような暗闇の世界と化している」と語られる。それを阻止すべく未来からタイムリープしてきた未来人ブンブーンによって、地球を救う4人の子供たちが見出され、彼ら(プレイヤー)はギーグを倒すための旅に出る。
つまりは映画「ターミネーター」シリーズに代表される「救世主モノ」で、元を辿ればキリスト教の審判の日=メシア思想的なイメージがあるわけだが、仏教と神道が多めの日本でも1994年当時からすんなり受け入れられた設定だった。
理由として、もちろん「ターミネーター」が大ヒットしたからというのもあるだろうが、かの有名な「1999年7の月、地球に恐怖の大王がやってきて人類は滅びる」というノストラダムスの予言が日本中に知られていたことは無視できない。
当時を覚えている人も多いだろうが、この人類滅亡予言は、完全に信じるかは別としても普通の大人が「1999年に人類って滅びるらしいね」と日常会話に出すほど一般的なものだった。
つまり、1994年の日本ではノストラダムスの予言が生きており、人類滅亡の可能性をみんなが共有していた。「宇宙からやってきた侵略者ギーグ」と聞けば、誰もが「ああ、恐怖の大王っぽいヤツね」と、すんなりイメージを重ねられる下地ができていたのである。
同時に、それがこうしてゲームになっていたということは、人類滅亡予言を世間がおおらかに受け入れていたとも言える。1999年を目前に控え、終末思想がカジュアルに雑談に上っていたのが90年代だった。 今MOTHER2をプレイして、そんな感傷にも浸るのである。
続いて注目したいのが、主人公たちが目覚める「PSI(超能力)」だ。ここには、1960〜70年代から続いたニューエイジ(精神世界)ブームの影響が見て取れる。人間は皆、超能力的なものを秘めていて、精神の内側に宇宙の真理を持っている…という思想だ。
本作をプレイする中で、主人公たちの中に眠る超能力が目覚めていくストーリー展開は、まさにニューエイジ思想の最たるものであろう。しかも途中で立ち寄る街の住人たち(モブ)も超能力に目覚めているパターンがある。
街の施設にはヒーラーがいて、主人公たちが敵からかけられた呪い的なものを解いてくれたりする。また、悪の心につけ込まれた住人が、超能力を悪い方向に使って新興宗教団体を設立したストーリーが出てくるのも、時代として象徴的だ。
他にも、主人公の仲間であるランマの王子(プー)は、己の力を高めるために「ムのしゅぎょう」という名前からして意味深な修行をするし、主人公はラスボス戦の直前に精神世界で自分自身と戦い、勝利の末、自分の中で宇宙の真理に一瞬だけ触れたりする。まずは自分の心に打ち勝つ必要があるという考え方も、どことなく平成っぽさがあって懐かしい。
ここまでは90年代を覆っていた終末ムードとニューエイジムーブメントを軸に語ってきたが、MOTHER2にはもっとわかりやすいオカルト的モチーフもたくさん登場するので、一気に挙げていこう。
そもそも冒頭から近所の裏山に隕石が墜落するわ、タイムリープしてきた未来人と出会うわ、UFOと宇宙人もわんさか出てくるわである。さらにネッシーっぽい生き物(タッシー)とか、雪男とか、ビッグフットとか、ストーンヘンジとか、地底大陸とそこで生き残っている恐竜とか、90年代に誰もが聞いたことのあるトピックが出まくりで、オカルトブーム総決算祭りの様相を呈している。
何なら早くも「パワースポット」の概念まで登場していて、それがストーリーの進行上、大きな意味を持つことも興味深い。
ちなみにUFOはアダムスキー型っぽいのを筆頭に色々登場するが、「ひとくちユーホー」など可愛いキャラもいて楽しい。宇宙人も何種類かと戦うが、逆にグレイタイプが出てこないのは何か事情があるのか…? なお、ネッシー的生物のタッシーはプレシオサウルスタイプで、しっかり“UMA”している。
さらに、埋蔵金を発掘している団体が現れるのもノスタルジー感がすごい。これに関しては90年代当時、糸井氏が実際に徳川埋蔵金発掘プロジェクトを行なっていたことが下敷きにあるのだろう。同プロジェクトを先導した糸井氏による「あるとしか言えない」は名フレーズである。
さて、ここまでムー的要素が満載のMOTHER2であれば、オカルト界のセオリーとして、作品のどこかに制作者の暗号が隠されているはずである。ダ・ヴィンチ・コード的なアレだ。
ムー的思い込みと言われることは重々承知だが、それがセオリーだから仕方ない。というわけで、続いてはMOTHER2に隠された「イトイ・コード」を推理しよう。
暗号がありそうなステージが多すぎる本作の中でも、有力な候補として最初に思いつくのは、「ムーンサイド」ではないだろうか。4番目の街「フォーサイド」の中にある“とある場所”から迷い込んでしまう異世界の街だ。
漆黒の建物と派手なネオンに染まった街のフィールドと、鳴り響くサイケデリックなBGMが強烈なインパクトを与えるステージ。住人たちに話しかけても、ほとんど狂気のようなセリフしか返ってこなくて会話にならず、何となく精神的に詰む。本作をプレイした子供の多くが、この街でトラウマを抱えたであろうことは想像に難くない。
この街の演出は、スーパーファミコンがバグった時のように感じる面もあり、「狂気感をポップに表現する」という点で、当時としては相当新しかったと思う。しかしこのステージにイトイ・コードを見つけようとすると、たまに変なところにワープさせられたりするので大変だ…。
そしてもうひとつの有力候補は「サターンバレー」だろうか。そう、いつその名前が出てくるのかとヤキモキしていた方も多いかもしれないが、MOTHER2といえば「どせいさん」である。
サターンバレーという村に住む少数民族(?)のどせいさんは、MOTHERファン人気不動の1位を誇る愛されキャラだが、いかんせん、今回のオカルト考察でも取り上げ方に迷うほど正体が不明。ここまで来ると、どせいさん自体がイトイ・コードを隠すために作られたキャラクターの可能性もある。
あとは、実家で主人公の帰りを待って美味しい好物を作ってくれるママ(MOTHER)や、出張先から電話してくれるパパの存在も、深読みすれば何となく怪しい。実はママとパパのセリフに何かが隠されていたのでは…?
また有名な話だが、ゲーム冒頭でキャラクター名などの設定画面で流れる「OKですか?」というボイスは、スタッフに隠し録りされた糸井氏ご本人の声だ。実はこのボイスを逆再生したら何かのメッセージになるのでは…?? なんてことも考えられる。
なお、本作の開発には「大乱闘スマッシュブラザーズ」や「星のカービィ」で有名なハル研究所が関わっている。90年代当時、同社の社長兼プログラマーであった岩田聡氏(のちの任天堂社長)が、他社で難航していたMOTHER2の制作を糸井氏から依頼された際、「いまあるものを活かしながら手直ししていく方法だと2年かかります。イチからつくり直していいのであれば、半年でやります」と申し出てハル研で作業を請け負い、実際にやり遂げた逸話も有名だ。コレそもそも、イトイ・コードを隠すために開発が手間取っていた可能性はないのか…?
しかしここまで来て、ふと筆者は気付いてしまった。一発目に挙げた「ムーンサイドの街」というネーミングの中に、堂々と「ムー」が入っているではないか…! 灯台下暗しだった。まさか、糸井氏がムーを意識していたなんて…。
…とまあ、ここまで好き勝手言っておいてなんだが、実際は「プレイする人それぞれに受け取ったイトイ・コードがあった」というのが真実かもしれない。コピーライター・糸井氏の生んだテキストは、スーファミのドット絵にアナログな温もりを与えることに成功していて、そこからプレイヤーの人生に影響を及ぼしたワードは数知れずであろう。
なお、筆者が個人的に受け取った(と思っている)イトイ・コードは、全ての戦いが終わったエピローグにあった。最後にそれを紹介して本記事を締めくくろう。ここからは、ムー的目線よりもっと個人的な考察&少々ネタバレを含むことをご承知の上で、お読みいただきたい。
◇
無事にラスボスのギーグを倒し、人知れず世界を救った4人の子供たち。彼らはエピローグでそれぞれの家に帰っていくが、別れ際に少女(ポーラ)がこう言う。
「みんなと おわかれするのは さみしいけれど もとの ただのこどもに もどらなきゃね。」
MOTHERシリーズを通して個人的に一番好きなセリフで、筆者にとってのイトイ・コードはこれである。
普通の少年が地球を救うヒーローになる物語なのに、また普通に戻るというのが好きだ。何者かになった人間が、ヒーロー性を保とうと無理せず普通に生きて良いという、高い自己肯定感を与えてくれるオチは、正直かなり時代を先取りしていたと思う。
この「世界を救ったヒーローが伝説にならない」という締めくくりも、冒頭で触れた既存のRPGへのカウンターになっている。
なお、この観点で作品全体を見た時、主人公の自己肯定感を育んでくれる場所として、「実家=MOTHERのいるところ」が存在しているのもまた良い。4人の子供たちの家族はみんな、彼らが人知れず地球を救ったことをちゃんと知っていて、エピローグでたくさん褒めてくれる。ペットの犬まで激励してくれるのが泣ける。
さらにランマの王子(プー)にとっては、側近の老師たちが家族的存在になっていて、「自己肯定感を高めるMOTHERは、決して血のつながった実母(親)である必要はない」ということがきっちり描かれているのも、今にして思えばかなり時代を先取った感覚だ。
そう考えると、「露悪的」とか「シニカル」とかやや後ろ向きなワードで語られることもある90年代に、時代を画する高い自己肯定感を内包したMOTHER2が、熱狂的ファンとフォロワーを獲得したことにも納得するものがある。
…というわけで少々長くなったが、まずはここまで読んでいただいた方に心からお礼申し上げたい。かんしゃ ベリマッチです。
記事の冒頭で述べた通り、MOTHERシリーズは3作品ともNintendo Switchでプレイすることができる。ぜひ本記事を“HINT”に、実際プレイしながら各ステージ内にあるオカルト的モチーフを見つけたり、あなたにとってのイトイ・コードを受け取ったりしてほしい。
では、最後はやはりこのセリフで締めくくろう。さあ皆さまご一緒に… PKサヨナラ! だ!
〜イベント情報〜
『MOTHER2』のひみつ。
https://www.1101.com/n/s/mother_project/mother2_himitsu/2024-07-12.html
場所:渋谷PARCO 8階 ほぼ日曜日
期間:2024年8月1日(木)〜9月8日(日)
時間:11:00〜20:00 19:30最終入場
入場料:1500円 ※小学生以下無料/会期中再入場可(事前予約制の日を除く)
※8月1日(木)~4日(日)、10日(土)〜12日(月)の入場は事前予約制となります。
予約についての詳細はほぼ日曜日のページをご覧ください。
https://www.1101.com/hobonichiyobi/exhibition/6644.html
杉浦みな子
オーディオビジュアルや家電にまつわる情報サイトの編集・記者・ライター職を経て、現在はフリーランスで活動中。
音楽&映画鑑賞と読書が好きで、自称:事件ルポ評論家、日課は麻雀…と、なかなか趣味が定まらないオタク系ミーハー。
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