刺激的な音楽で植物がよく育つ「音響栽培」を考察! かわいいトマトにはロックを聴かせろ/久野友萬
音楽を聞かせて作物の成長を促進するという「音波栽培」。胡散臭いと思われることもあるが、実は科学的な根拠があるという。ジャンルによる違いも含め、徹底考察!
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「UFO手帖」編集長の秋月朗芳氏が、視聴覚で体験できるUFOーー「UFO音楽」の世界を案内する。
目次
「UFO」は、20世紀最大の謎のまま21世紀を迎えた。空飛ぶ円盤が生まれた日、つまり1947年6月24日に実業家のケネス・アーノルドがレーニア山上空を自家用機で飛行中に編隊で飛ぶ9機の未確認飛行物体を目撃した日から、すでに70年以上の月日が流れている。
UFOに対して多くの人が望むのは、その謎が白日のもとに晒される日がくることだろう。しかし、たとえその日が永遠にこないとしても、すでにそれが我々の考え方や生活・文化に多大な影響を与えていることは間違いない。もう、それだけでも十分UFOは「実在している」と言ってもいいのではないだろうか。
そこでUFOから間接的な影響を受けているであろう大衆文化「音楽」に着目し、関わりの深い10のUFO音楽を選んでみた。
ハワード・メンジャー/THE SONG FROM SATURN(1957)
1950年代のアメリカでは、しがない男が時代の寵児となる方法として、大きな声で「宇宙人に会った!」と叫ぶという方法があった。
UFOコンタクティーの先駆けジョージ・アダムスキーに続けと声をあげたハワード・メンジャー(Howard Menger、1922-2009)は、10歳の頃にはじめて宇宙人とコンタクトし、彼らの仕事を手伝ったり(女性用の下着まで買いにいかされたらしい)、月旅行に同行したと主張している。
彼は当時のアメリカにおいて、それなりに人気があるコンタクティーだったが、彼の主張やUFO写真がアダムスキーのものと似ていたこともあって「アダムスキーの模倣者」と揶揄されることもあった。
そこで、そんな彼をアダムスキーと差別化するアイテムとしてピックアップしたいのが、この1957年にリリースされたアルバム『AUTHENTIC MUSIC FROM ANOTHER PLANET』である。
なかでもこの「THE SONG FROM SATURN」は、曲名が示すように土星の音楽であり、土星人の生まれ変わりを主張するハワード自身が演奏したものだという(※YouTubeでは「The Song of Saturn」となっているが、「THE SONG FROM SATURN」が正しい)。
聴いてみると異星の音楽としてはやや地球的すぎるような気もするが、優しい調べのピアノ・インプロビゼーションといった趣で悪くない。冒頭にはメンジャーの語りも入っている。
ディンガリング・シスターズ(ミシェル・デラフェイヴ)/Funky Chicken(1971)
ミシェル・デラフェイヴ(Michelle DellaFave)といわれても知ってる人は少ないだろう。それもそのはず、彼女はUFO目撃者でもコンタクティーでもない――でも、ある意味、宇宙人なのである。
このややこしい状況を説明するにはまず、プレアデスからのUFOを撮影した数多くの写真で有名なスイスのコンタクティー、ビリー・マイヤー(”Billy” Eduard Albert Meier、1937-)の話をしなければならない。マイヤーのことはご存知だろう。彼女はそのマイヤーと微妙な関係にある人物だ。
マイヤーは1975 年にUFOで5日間の宇宙旅行を楽しんだと語っており、その時「Asket」と「Nera」という二人の女性(?)宇宙人の写真を公開している。しかしその後、その写真が「ディーン・マーティン・バラエティーショー」(1965 年から74年まで放送されたアメリカのショー番組) を撮影したものだと指摘され、マイヤーは批判に晒されることになる。――見比べてみれば一目瞭然で微笑むくらいしかできないのだが、マイヤーは捏造を否定しているし、ここでその真偽を断ずるつもりはない。
ここで重要なのは、その写真に映る二人の女性宇宙人のうちの一人である「Asket」が、ここで紹介するミシェル・デラフェイヴだった(…よく似ていた)ということで、このあと彼女が「宇宙人」というおかしなレッテルと共に生きていかねばならなかったことだ。
この写真が撮影された当時、 ミシェルは「ディンガリング・シスターズ」というグループのメンバーで、今回紹介する動画は1971年に同番組でパフォーマンスした模様を収めたものである。メインボーカルの背の高い女性がミシェル・デラフェイヴで、ファンキーな楽曲を力強いダンスでソウルフルに歌いあげる姿はとても魅力的である。
そして、なんとも面白いのはこのミシェルが、なんと2017年にマイヤーと実際に会い、その模様が公開されていることだ。見れば普段なかなか得られない複雑な気分を味わうことができるだろう。
ビリー・マイヤー/Semjase’s Cry(2019)
さて、前項に登場するビリー・マイヤーの名を冠したバンドがあるのをご存知だろうか。紹介するのは、彼らが2019年に発表したアルバム『Sounds from Erra』からシングルカットされた一曲 「Semjase’s Cry」だ。
例えば70年代に一世を風靡したハードロック・バンド「UFO」、90年代のハウス・シーンで流行った「Adamski」といった、奇抜なイメージを強調するためにUFOに関するワードを使ったバンドはいくつかあったが、曲の内容を見るとそれほどUFOに偏ったものではなかった。
しかしこのバンドは、 マイヤーにかなりインスパイヤされているのだろう、「Semjase’s Cry」はもとより、「Beamship View」だとか、前項で取り上げたAsketの名が盛り込まれた「Asket In Wonderland」なんて、知っている人なら微笑まずにはいられない曲のタイトルが並んでいるのだ。
ご存知ない方のために若干説明を加えておくと、Semjase(セムジャーゼ)とは、マイヤーがコンタクトしたプレアデス方面から来た美人宇宙人のうちの一人のことで、シングルカットされたこの曲のジャケットには彼女と思われる(もしくはAsket?)の姿までレイアウトされている。そしてBeamship(ビームシップ)とは、その宇宙人たちが乗る美しいUFOのことだ。
音楽的にはエレクトロ・フリー・ジャズとでも言えばよいのだろうか、様々なジャンルがごった煮になったようなインストゥルメンタルだ。でも、不快なノイズや轟音はなく聴きやすい楽曲なので、是非一度ご視聴いただきたい。
ビリー・リー・ライリー/Flyin’ Saucers Rock’n’Roll(1957)
ジェリー・リー・ルイス、ジョニー・キャッシュ、そしてロックンロール最大のレジェンド、エルビス・プレスリーを発掘し、アメリカ音楽業界に一大旋風を巻き起こした、まさにロックンロールを創出した男と言っても過言でない音楽プロデューサー、サム・フィリップス。
「Flyin’ Saucers Rock’n’Roll」は、そんな彼に見出され、サン・レコードから1957年に発表されたビリー・リー・ライリー(Billy Lee Riley、1933-2009)のヒット曲である。
歌詞を読んでみると「ソーサーのニュースが飛び交っている」と始まり、どうやら円盤から降りてきたリトル・グリーン・メンがバンドを結成、宇宙人の言葉はわからないが、そのクレイジーなビートに俺は完全にやられたよ、みたいなことを歌っているのがわかる。
歌詞中にある「ソーサー」や「リトル・グリーン・メン」と言った言葉は、空飛ぶ円盤や宇宙人の、やや嘲笑的な言い方だ。
この曲が産み落とされた50年代のUFO界隈は、 戦闘機を出動させるまでに発展した「ワシントン事件」(1952) で、世間の空飛ぶ円盤に対する関心がピークに達し、またアダムスキーを筆頭としたコンタクティーが台頭、それを支持する150以上もの団体が組織されたりと、空飛ぶ円盤に関する話題が頻繁にメディアに乱れ飛んでいた時期である。
この曲は、 恐怖と憧れと嘲笑が入り混じった当時の空飛ぶ円盤を巡る喧騒を伝えるものとしての価値があるだろう。この当時はまさに、ロックンロールを刻んだ黒い円盤(レコード)と空飛ぶ円盤という二つの円盤に踊らされていたわけである。
ジ・オーブ/U.F.Orb(1992)
The Orb は、 元KLFのアレックス・パターソンを中心としたユニットである。
KLFといえば 、ダンスミュージックはもとより商業音楽そのものに大きな驚きと革新をもたらした名盤『Chill Out』を思い出す方は多いだろう。遠くから聞こえてくるヤギの鳴き声、電車の通り過ぎる音、気の抜けたロカビリー、そんなサウンド・コラージュで構成されたビートの無いダンス・ミュージックは、どこかオカルトめいた印象を与えるものだった。
この1992 年にリリースされた『U.F.Orb』は、発表されるやUKチャートのトップにまで躍り出たアルバムである。そして、表題曲である「U.F.Orb」もさることながら、収録曲のタイトルも「O.O.B.E(体外離脱体験)」「Close Encounters(接近遭遇)」「Blue room(ライトパターソン空軍基地で地球外技術の研究をしていたとされる部署)」「Majestic(マジスティック12)」など、90年代のUFO言説を象徴する陰謀論的なタイトルが並んでいる。そもそもユニット名もムー読者ならお馴染みのアイテムだろう。
彼はどうやらこの手の話が大好きらしく、2015年に発表されたアルバム『Moonbuilding 2703 AD』は、2005年に刊行された『月は誰が創ったか?(Who Built The Moon?)』という本からのインスピレーションでつくられたと語っている。
その本は、月が宇宙人もしくは未来人などの超越的存在によって作られたものだとする、月人工説(Hollow Moon)を主張するものだ。実際、月は地球の地軸を安定化させているなど、地球の環境に不自然なほど深く大きくかかわっている。もし月がなかったら、地球は今のような環境になく、人類も存在していないだろう。
そんなことを考えながら聴いてみるのも一興かもしれない。
Blink-182/Aliens Exist(1999)
2018年3月、ロックバンド「Blink-182」の元メンバーであるトム・デロング(Thomas Matthew Delonge Jr.、1975-)が主催する、科学・産業・ポップカルチャーのコラボレーションとその広報の目的で設立された「To The Stars Academy」のホームページで、 米軍公式とされるUFO動画「GO FAST」が公開され話題になった。(→関連記事:並木伸一郎のフォーティアンFILE)
この動画は、米海軍のF-18戦闘機が、2015年に翼のない楕円形の未確認飛行物体と遭遇した模様を収めた興味深いもので、今でも頻繁にメディアに取り上げられ議論されている――のだが、その動画の真偽は置いておいて、気になるのはこのバンドとトム・デロングという人物だ。
Blink-182 はゼロ年代に活躍したアメリカのポップパンク・バンドで、99年に発表されたサード・アルバム『Enema of the State』は、全米で500 万枚を売り上げているが、曲名を眺めてみると「Aliens Exist(エイリアンは実在する)」なんて、そのものズバリの曲があることに驚かされる。トム・デロングは、この頃からすでにUFOに対して多大な関心を持っていたのだろう。それから彼はバンドを脱退し、「UFO研究が俺がいま人生でやりたいこと」との発言をへて、「To The Stars」という団体(公益法人)を設立する。
そして、そこからUFO関係の書籍(Sekret Machines Book 1: Chasing Shadows)を刊行したり、またそのホームページから先のUFO情報をセンセーショナルに公開するなどの活動に邁進することになる。またその功績が認められて、 第26回国際UFO会議(2017)の年間最優秀UFO調査者に選ばれてもいる。
これまでもオカルトや陰謀論とコミットしたバンドはあったが、ここまでUFO やパラノーマル(超常現象)に接近し、最終的には音楽よりもそっちを取ったという例は珍しいかもしれない。
平野威馬雄/衝撃のUFO(1978)
この『衝撃のUFO』は、フランス文学者、UFOやおばけの研究家など様々な肩書を持つ平野威馬雄(いまお)(1900-1986)がUFOをテーマに監修したアルバムだ。また、 ジャケットワークは、UFOへの造詣が深いことでも知られる芸術家の横尾忠則によるものである。平野威馬雄を知っている人も少くなくなっているだろうが、エキセントリックな料理でテレビを賑わしている平野レミの父であると言えば親近感を持てるかもしれない。
内容は純粋に音楽のアルバムというわけでなく、臨場感あるナレーションや、UFO目撃体験者へのインタビュー、平野による詩の朗読、また有名な「ベントラ、ベントラ」と言ってUFOを呼び出す儀式の模様が収録されていたりとバラエティに富み、当時の日本におけるUFO界隈の雰囲気を垣間見ることができる貴重な資料となっている。
資料的に特筆すべきは、関東大震災時にUFOを目撃し命を助けられたとされる女性のインタビューを聞くことができることだろう。
個人的な話だが、その中で彼女が、UFOの窓から見えた人影の顔色について「白人ではなく、浅黒い肌」と語ってることがとても気になっている。人間によく似た宇宙人の容姿は、大抵の「白人によく似た」と表現されることが多い。しかし実際のコンタクト体験をていねいに見ていくと、「白」よりむしろ「浅黒い」方が多いのではないかと思えてくるのだ。
このような、あまり共有されていない事実が、UFOの事などさほど知らなそうな高齢の女性の発言で補完されることに、不思議なリアリティを感じるのだ。
またこの項の最後に日本のUFO音楽として、1980年にミステリー・マガジン『ムー』のサウンドイメージ・アルバムとして制作された神谷重徳の『ムー (mu)』を付け加えておきたい(YouTubeで検索するとアルバムの中の数曲を聞くことができる)。
このアルバムは『衝撃のUFO』と違い、きちんとした楽曲で構成されたもので、今やビンテージとなった当時のアナログ・シンセサイザーを駆使して作り上げられたフュージョンまたはニューエイジ・ミュージックといった趣である。
この頃、シンセサイザーとUFO/オカルトは、どこか引き寄せ合うものがあったらしく、例えば日本のニューエイジ・ミュージック・シーンを牽引していくことになるシンセサイザー奏者「喜多郎」が在籍していたことで知られる「Far East Family band」は1975年に『地球空洞説』というアルバムでデビューし、日本のテクノポップの先駆けとなった「YMO」も1981年に『BGM』という、ややオカルトに傾倒したアルバムを制作している(詳細は次項を参照)。
ハリー・ホソノ&ザ・ワールド・シャイネス/FLYING SAUCER BREAKDOWN(2007)
2019年11月にデビュー50周年をむかえ、様々な記念イベントが開催された細野晴臣氏。日本語によるロックを確立させた『はっぴいえんど』、さらには日本におけるテクノポップの先駆的存在である『YMO』のすぐれた頭脳として、日本のロック・ポップスを語るときに外すことのできないレジェンド的な人物である。
親しみやすい風貌から周りから「細野さん」と呼ばれている彼は、もう一つの側面としてUFOやニューエイジ・ムーブメントに造詣の深い人物としても知られている。
2007年にハリー・ホソノとザ・ワールド・シャイネスの名義で発表された『FLYING SAUCER 1947』は、そんな彼の側面を感じさせるアルバムである。
このアルバムは、カントリーテイストにアレンジされたセルフ・カバー曲が中心なのだが、唯一新たに加えられた「FLYING SAUCER BREAKDOWN」という曲は、細野氏の誕生日がロズウェル事件の発生日に近い1947年7月であることに由来してつくられたという。
他にも映画『未知との遭遇』のテーマ「CLOSE ENCOUNTERS」、つまり劇中で宇宙人とのコミュニケートにつかわれるあの音がアンビエントなカントリーとしてカバーされていたりして、UFOファン必聴と言ってもいいアルバムとなっている。
このアルバム以前の作品にも、UFOに関連した作品が多く、例えば『ソリッド・ステイト・サヴァイヴァー』(1979)で100 万枚を越えるセールスを記録したYMOが次なる方向性を示した『BGM』(1981)には、「RAP PHENOMENA /ラップ現象」や「U・T /ユーティー」(UFO 研究家ジョン・A・キールが提唱した「Ultra-Terrestrial(超地球的存在)」の略)といった、直接的に超常案件を使ったタイトルがならんでいる。
また、1984年に発表されたソロアルバム『S・F・X』には、政府によって人類の火星移送計画が極秘裡にすすめられているという衝撃的な内容が様々な憶測を呼んだイギリス制作のテレビ番組「 第三の選択(ALTERNATIVE3)」をそのままタイトルにした曲もある。
また、2019年1月にNHKで放送された『細野晴臣イエローマジックショー2』において、細野氏がUFOに連れ去られて番組が締めくくられていたことを付け加えておきたい。
ケイト・ブッシュ/Cloudbusting(1985)
「私はまだオルゴノンの夢をみる(I still dream of orgonon)~」と切ないメロディーで始まるこの曲は、イギリスを代表するシンガーソングライターであるケイト・ブッシュ(Kate Bush、1958-)が1985年に発表した曲だ。
曲自体は単に切なそうな曲という印象なのだが、この曲のミュージックビデオに登場する、どこか異様な装置を見れば、その印象は変わるだろう。見覚えはないだろうか?
曲中に登場する「オルゴノン」とは、異端の精神医学者として知られるヴィルヘルム・ライヒがアメリカに移り住んでから設立した研究所のことで、そこでは彼が発見したとする「オルゴン」という、いまだ存在が認められていないエネルギーについての研究がおこなわれていた。
ライヒは、そんなオルゴンの実験の最中に、このエネルギーが雲を消すことができることを発見する。そして、オルゴンを集中させて放射する高射砲のような、ある種の気象操作装置「クラウド・バスター」を作成する。それは雲を消せるばかりでなくUFOまでも撃退できるとライヒは語っている。
つまり、それがこの曲のミュージックビデオに映る禍々しい装置である。ちなみにライヒを演じているのは『M★A★S★H』や『バックドラフト』で知られる俳優ドナルド・サザーランドだ。
ライヒはその後、ガンが治療できると謳ったオルゴン治療器(オルゴン・ボックス)が米国食品医薬品局により訴えられ、それが元でライヒは収監され獄中死するに至る。そして、残された息子のピーター・ライヒが父との思い出を『A Book of Dreams』という本にして出版している。
それをケイト・ブッシュが読んだことで、この曲がつくられることになったのだという。
デスモンド・レスリー/MUSIC OF THE FUTURE(1960)
聴かれた方は、これが音楽なのか?と首を傾げているかもしれない。これは、 音階やメロディに頼らず生活音や人工音など「音」そのものによって構成する「ミュージック・コンクレート(具体音楽)」というジャンルに属する音楽だ。
この当時の技術ではまだ手間がかかった多重録音や電子的な人工音が駆使されたこの音楽は、当時は未来的に受け止められたのだろう。なにせタイトルが『MUSIC OF THE FUTURE』だ。また混沌としたオドロオドロしい雰囲気と合わせて、どこかUFOを想起させるものがないだろうか?
それもそのはず、このアルバムは『空飛ぶ円盤実見記』(1953)の著者のひとりであるデズモンド・レスリー(Desmond Arthur Peter Leslie、1921–2001)が1960年に発表したアルバムなのだ。
UFO研究者としてのレスリーを知っていても、音楽家としての彼はあまり知られていないかもしれない。意外な面はそれだけではない。彼は映画の制作や脚本の仕事もこなし、また音楽家としての仕事は、音楽業界の発展に大きな影響を与えた機材の開発に貢献しているほどの多才な人物だったのだ。
本稿でこれまで紹介したUFO音楽とレスリーが制作した楽曲には根本的に違うところがある。それは、彼がUFOと音楽を切り離して考えてはいなかっただろうということだ。
彼は『空飛ぶ円盤実見記』の中で、音響とUFOの関連について一章をさいている。そこではヒンドゥー教やサンスクリットの叙事詩に登場する「ヴェーダ」や「ヴィマナ」などの空挺(空飛ぶ乗り物)が現代のUFOであると語り、またそれらの推進力が音調や旋律によって得られているのではないかと考える。
そこでレスリーは、ジョン・W・キーリィというフリーエネルギー研究の元祖ともいえる個人発明家の奇妙な実験を引き合いに出して自説を展開する。キーリィはヴァイオリンの音響によってモーターを回転させる機器を発明し、さらには、それによって金属の模型飛行機を自在に操るまでに至ったというのだ。彼はこれを、音とエーテル(光や電磁波を伝える仲だちとして宇宙に満ちていると考えられた物質)の共鳴によってエネルギーが得られると概念化し、投資を募って「キーリィ・モーター・カンパニー」という会社を設立(1872年)するに至っている(この会社で開発された不可思議なモーターは、投資家前のプレゼンテーションでは成功したように見えたが、結局この会社は何も生み出さなかった)。
レスリーは、もし音響が完全に理解されれば、音響を電磁力と一体化して捉えることが可能になり、音響によって浮揚効果を生じさせることが可能になるかもしれないとまで考えた。そして、やがて音や振動の研究が、私達の世界に革命的な変化をもたらすことは、殆ど自明の事実といっても過言ではなかろうといって、この章を締めているのだ。
足早にUFO音楽に触れてみたが、いかがだったろう。
テレビや映画にUFOが登場する際にはピロピロといった電子音のSEが流れることが多いが、私が知る限りそんな音を発するUFOが目撃された例はない。というか多くのUFOは音を発しない。したとしても前項のデズモンド・レスリーのアルバムでも盛んに使われている「ジージー」といった虫の羽音程度のささやかな音であることが多い。
だからといってUFOと音は無関係なのかといえば、そんなことはない。例えば、夜空に怪しげに動く光を見たというよくある目撃証言では、それがUFOであることを補強するように、こんな言葉が添えられる――「それが飛行機やヘリコプターであったならば音がしたはずだ。でも音はまったく聞こえなかった」と。――つまり、むしろ無音であることが、UFOをUFOらしくしていると言えるのである。
現代音楽家のジョン・ケージは1952年に「4分33秒」という「沈黙(無音)」の音楽を発表して世間を驚かせた。無音もまた音楽ということであるならば、UFOは音楽を奏でながら飛んでいるとも言えるのではなかろうか。
秋月朗芳
2005年に発足したUFOサークル「Spファイル友の会」(「Sp」はJ.アレン・ハイネックの「S-Pチャート」から)代表。同会で年一回発行している同人誌『UFO手帖』の編集長を務める。
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