古代の人々が描いた異形の存在の正体とは? 異星人壁画の謎/羽仁礼・ムーペディア
毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。今回は、太古の昔に地球を訪れ、人類に文明を授けた異星人の姿とされる奇妙な壁画や岩絵を取りあげる。
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世の中が混乱しているときには、嘘か誠かこれでもか、というほどに流言飛語が飛び交います。それは近年に限ったことでは、もちろんないわけで……過去に語られ巷を騒がせた、不穏無気味で不思議な噂話の数々を補遺々々!
SNSなどに流れてくる情報は必ずしも正しいものではありません。鵜呑みにはせず、一度は疑う必要があります。画像の加工技術は年々高くなり、そこにAIまで入ってくると真実とそうでないものを見分けることは非常に困難です。
大規模な自然災害や戦争時は、とくにデマ・誤報が乱れ飛びます。世が混乱している時、さらに混乱させるような情報を流すことは当然非難されるべき行為ですが、混乱のさなかにあり、たった今、被害に遭われている当事者の人たちが、錯綜する情報から誤った解釈をし、それを信じて広めてしまうこともあります。すがるもののない混乱下にあっては止むを得ないことではありますが、誤った情報の流布により、新たな悲劇が生まれてしまった、そんな歴史もあります。
「ムー」を購読されている方なら、【地震兵器】【HAARP(ハープ)】といった言葉は見慣れているでしょう。「自然災害」とされてきた事象を人工で起こせる、とされている兵器・軍事計画です。
人工地震、電磁波による気象変化、世界中のマインドコントロールといったことを引き起こす【兵器】が実在するなどとは考えたくもないですが、こうした兵器や秘密計画について書かれた出版物や記事は世にたくさんあり、その大半は2000年に集中して出されていると、ジェリー・E・スミス著『気象兵器・地震兵器・HAARP・ケムトレイル』に書かれています。ノストラダムスの予言を無事に乗り越えた人類は、新たな脅威に注意を向けたのです。
この手の話は陰謀論という言葉であしらわれやすく、スミス氏の著書の言葉を借りるならば「アルミホイルの帽子を被った被害妄想オタク」の妄信と揶揄される向きもあります。
ですが、けっして一笑に付してはならない状況で生まれたものもあります。
『大正大震災大火災』は、1923年9月1日に発生した関東大震災、その1か月後に刊行された書籍です。そこには被災者から集められた目を覆わんばかりの光景が詳細に記録されています。その一章、「訛傳、誤報、流言、蜚語、地方騒ぎ」に、【地震を起す機械】と題された記事があります。次に引用いたします。
※ ※ ※
出所はどこか分らないが、あの大地震大火災で、下町一帯火の海と化した最中に、大塚警察へ飛込んで来た一壮漢!
『この大地震は西洋で起したんださうですが真実(ほんとう)ですか?』
『何?』と云つたが、巡査は何のことか意味が分らない。
『チェッ! さとりの悪い巡査(おまわり)さんだな、この地震は、今度西洋で地震を起す機械を発明して、日本を真先にやつゝけようとしたんだつていふことですが本当にさうなんですか? 警察の方へはまだ宣戦の詔勅の通知はありませんか?』
と息せき切って訊ねる。
これには流石の巡査も仕様がなかつたさうだが、つゞいて五六人もこれと同じ質問を警察へ持込んだ人があつたので、巡査君もボウツとして了ひ、『ハテナ、これはひよとすると、さう云ふ新発見が事実あつたのかナ? 俺が時代におくれてゐるのかナ?』と思つたさうだ。
察するに飛行機其他から、考へついた流言らしいが、さりとはウマク考へたもの。
※ ※ ※
このころから【地震兵器】の発想はあったのです。数多の人が死に、住み慣れた町が焼かれ、日常があっという間に崩壊する。そんな信じられない光景を目の当たりにした直後だからこそ、被災者のあいだに生まれた流言なのでしょう。
こういった流言は混乱の最中に限らず、過去の出来事が下地となって立ち起こることもあります。
1966年発行『週刊少年サンデー』16号の「恐怖の怪現象」内の記事には、1965年に福井県武生市行松町で起こった、ある「現象」について書かれています。以下、要約でお伝えします。
9月のことでした。人々の寝静まった午前1時ごろから5、6時間ものあいだ、ブーンという振動音が起き、町中の家の戸や障子がガタガタと震えました。付近に大きな工場や工事現場はなく、音は空中から伝わってくる感覚がありました。
だれがいい出したものか、この怪現象は、1948年に3700人以上の死者が出た福井地震のような大地震の起こる前触れではないかと囁かれだし、住人は大変恐れました。
この音はたびたび聞こえ、ある時期から止まったかと思うと、1966年2月10日から2月いっぱいまで続き、また止みました。そして、同年3月中旬、また、鳴り出したのです。
「地震の前兆」だと信じている人たちは、長く不安な日々を過ごしていたことでしょう。
京都大学災害研究所の教授が調査にあたると、この町の付近には砂利層があり、その層で地下水の変化が起こっているのではないかという見解を出した。
ーーということですが……実際はどうだったのでしょうか。
「新しいもの」に不穏な噂はつきものです。
新たな文明の利器が生活に入ってくることで、人々の中にはこれまでなかった恐れや疑いが生じます。これは昔に限らず、今も起きていることです。
近年では「5Gの電波」が人体に悪い影響を与えるという説を一部メディアで目にしました。通信システムに明るくない筆者には、この説がどこまで信憑性があるものなのか判断がつきませんが、日常的に触れているものが危険なものであったらと思うとゾッとします。
欧州では「5G」がコロナの感染を広げるといった噂もあったそうですが、日本でもこれと似たようなことが過去に起きていました。
明治23年、日本で電話サービスが始まったタイミングで、コレラが大流行しました。電話は遠くの人と通話できる機械……だから病気も感染すると考えた人たちが、「電話でコレラがうつるぞ!」と騒いだものだから大変です。政府はその情報が誤りであると新聞広告を出したそうです。
さらにもっと前の明治2年の12月25日。
はじめて東京・横浜間に電線が架設された日です。
当初、人々はこれを怪しみ、とても警戒しました。
「針金で遠くのことがわかるなんて、キリシタンの魔法にちがいない」
「処女の生き血を塗っているらしい」と、噂し、「夷狄(いてき)の下をくぐるなんて汚らわしい」と、扇子をかざして電線の下を通る人もいたそうです。
夷狄(いてき)とは外国人、野蛮人などを指す言葉です。
同じ電線からでも違う発想にいく人もいました。
「話がわかるなら手紙も届くはず」
そういって、状箱や手紙を電線に吊るす人がいたといいます。不思議な光景ですね。
またこの翌年、天然痘の予防接種法である種痘に関する噂も広まります。
「【疱瘡牛(ほうそううし)】の膿を植えるのだから、牛になる」
そういって、ワクチン接種を拒否する人たちが多くいたそうです。なんとか説得して接種して善感(種痘がうまくつくこと)しても、感染したと泣く人もいたといいます。
ワクチンの信用性に関しての問題は、このころからあったのですね。
永井豪とダイナミックプロの漫画作品『ドロロンえん魔くん』のアニメのエンディング曲「妖怪にご用心」内に「ブラウン管から手が出て、手招きをするかもしれない」といった内容の歌詞があります。鈴木光司原作の映画『リング』では、テレビ画面から「貞子」が這い出てくる場面がトラウマとなった人もいるでしょう。
ケイブンシャ『恐怖スリラー大百科』には、アニメを録画したビデオを見ていたら死んだはずの友だちが画面の中に現れたという話や、テレビから発生する【毒電波】でおかしくなった小学校教諭が自分を包丁で刺して失踪するといったショッキングな話が掲載されています。
テレビは子どもも大人も大好きな娯楽装置である一方、人を引きつけ、そして「異界」と繋げてしまう怖さがあります。
そんなテレビが、本当に「危険な存在」になったことがありました。
1967年発行『サンデー毎日』8月13日号に【カラーTVにご注意!】と題された記事が出ました。
アメリカ公衆衛生局は、ゼネラル・エレクトリック社からの申し出で、同社製のカラーテレビの所有者に「危険ですからテストを受けるまでスイッチを切ってください」という緊急指令を発しました。1966年9月から発売していたワイドスクリーンのカラーテレビ約9000台のうちの1割が不良品であり、真空管から有害な放射線を出しているというのです。
テレビを見ているだけで危険な放射線が出るなんて、とても信じられません。
ですが、危険性があると考えられる不良品のテレビが出荷されていたことは事実のようです。購入者が使用をしていなかったのか、想定していたような危険度の放射量は無かったのか、幸い被害は1件も出なかったようです。よかったですね。
今はテレビの〈言葉〉も信じることのできない時代です。
有毒な情報に支配されないように気をつけたいものですね。
【参考資料】
『大正大震災大火災』(大日本雄辯會・講談社)
「外信部のクズかご」『サンデー毎日』8月13日号 1967年発行(毎日新聞社)
「恐怖の怪現象」『週刊少年サンデー』1966年16号(小学館)
『明治大正昭和大繪巻』(大日本雄辯會・講談社)
ジェリー・E・スミス『気象兵器・地震兵器・HAARP・ケムトレイル』(成甲書房)
『恐怖スリラー大百科』(勁文社)
黒史郎
作家、怪異蒐集家。1974年、神奈川県生まれ。2007年「夜は一緒に散歩 しよ」で第1回「幽」怪談文学賞長編部門大賞を受賞してデビュー。実話怪談、怪奇文学などの著書多数。
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