一本足の神像「夔(キ)」が7年に一度の御開帳! 山梨岡神社に祀られる鬼面の雷神の正体/鹿角崇彦
山梨県に、7年に一度しか公開されない謎の神像を祀る神社がある。鬼のような顔で一本足、雷を封じるというその神の正体とは……?
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加門七海 著
仏教と神道の根幹に関わる概念を創りだした平安時代後期の歌人「大江匡房」の謎に迫る
「大江匡房」といえば、一般的には百人一首の73番「高砂の尾の上の桜咲きにけり外山の霞たたずもあらなむ」を詠んだ、権中納言匡房の本名として知られる程度であろうか。
一応、当時は幼いころから神童と呼ばれていたようで、「予四歳の時始めて書を読み、八歳のときに史漢に通ひ、十一歳の時に詩を賦して、世、神童と謂へり」と自叙伝である『暮年記』の中で自慢している。
著者自身もまた、「英雄でもなければ悪党でもない」その生涯を追うことはともかく「退屈」に思える、と述べている。だがなぜか著者は、この男の周辺に蠢く「鬼、土蜘蛛、御霊、傀儡、占い、呪術、陰陽道など」の「奇妙な影」を目ざとく嗅ぎつけ、いつしかこの男そのものを「妖しい存在」と感じるようになってしまうのだ。
そして実際、匡房は存命中から「三帝の師」と仰がれた当代随一の学者にして博覧強記、その言葉に間違いはない、と見なされていたのである。匡房自身、自らの影響力を自覚し、その上で著作等の中にさまざまな仕掛けをちりばめていた、と著者は断じる。
その結果、匡房は標題どおり、「神を創った」。たとえば匡房は、「神道」や「絵馬」などの言葉、さらには神仏習合や本地垂迹といった、仏教と神道の根幹に関わる概念を創りだした。九尾の狐を、妖怪として日本に紹介したのも匡房である。
自らが尊敬する小野篁には地獄往還の手形を与え、吉備真備を異能者に仕立て上げ、そして大江山を鬼の住処として定着させた。その他、この男の「業績」の数々は、ぜひ本書でお確かめいただきたい。
著者である加門七海氏は、「伝奇小説・ホラー小説を執筆するかたわら、オカルト・風水・民俗学などへの造詣を生かしたノンフィクション」も手がける作家。自らも豊富な霊体験を重ねているという。本書はそんな著者が、持てる知識と取材力の限りを尽くして「大江匡房」という怪物に挑んだ、まさに渾身の力作。執筆には10年もの歳月を要したというから、その執念たるやすさまじい。
日本史や陰陽道などに関する、相当高度な知識が要求される内容ではあるが、改行を多用するリズム感あふれる文体を駆使する、著者の巧みな筆力に乗せられて、読み進めずにはいられない。読書の醍醐味がここにある。
(2023年8月号掲載)
星野太朗
書評家、神秘思想研究家。ムーの新刊ガイドを担当する。
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