黒魔術や性魔術とかかわりがある!? 「トート・タロット」が秘める西洋魔術の神髄/ヘイズ中村
20世紀最大の魔術師、アレイスター・クロウリーが生みだした「トート・タロット」の成り立ちを紹介。
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なにも質問していないのに、悩みが見出され、きっぱりと鑑定が出る。トート・タロットならではの魔術的な占い技法「クロウリー・スプレッド」をヘイズ中村が実践する!
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20世紀最大の魔術師といわれるアレイスター・クロウリー。彼が手がけたトート・タロットは、画家のフリーダ・ハリスによる独特の絵とあいまって、タロットカードの最高傑作との呼び声が高い。
そのトート・タロットを使った占いに「クロウリー・スプレッド」という技法がある。このクロウリー・スプレッド、じつは相談内容が秘された状態で占いが進行するという、驚くべき技法だ。
通常のタロット占いならば「今日のご相談はどういったことですか?」などと、占い師が相談者に尋ねてからスタートする。「クロウリー・スプレッド」は、相談者に何も語らせないまま占いが始まる。そのため、「黙って座ればピタリと当たる」を地でいかねばならないのだ。
「しかも、カードを1回だけ並べて終わりではありません。まずその人の悩みを特定するための占い。その悩みの根源を特定するための占い。それがどのように変わっていったのか。現在はどうなっているのか。これからどうなっていくのか。この5段階に分けてカードを並べ直さねばなりません」ーーそう語るのは、日本を代表する魔女にして魔術師であり、長年にわたってクロウリーについて研究を続けてきたヘイズ中村氏だ。
ヘイズ氏が魔術の世界へのイニシエーション(参入儀式)を受けたのは約40年前。以来、魔女にして魔術師という道を修めながら、執筆・翻訳・講座・鑑定など、多方面で活動を続けている。また、ともすれば闇に身を堕としそうな「危ういオカルティズム」に警鐘を鳴らすことも、役割のひとつと考えているようだ。
ヘイズ氏によれば、クロウリー・スプレッドは、占い師にとっては自分の技量を否応なく自覚させられる技法であり、相談者にとっては深層心理の部分まで迫られる技法であるという。
そのため「途中で胃が痛くなって中断する占い師さんもいますし、『もうやめてください』と、お客様からストップがかかることもあります」……という事態もしばしばあるという。
相談内容が明らかにされないまま占うことに、どんな意味があるのだろうか?
「お客さまの悩みを聞いた時点で、占い師の先入観が入ります。たとえば私のような年齢の女性が『じつは年下の男性が好きなんです』というと、どうしても『無理だよね』から始まりますから、まずそこをなくすということ。
もうひとつは、クロウリーの時代は占い師がいわば『ぼったくり』をしていました。恋愛運を占ってもらうために1か月くらい前に予約をして、今の価値で10万円くらいのお金を払って、紙切れを1枚もらうだけ。その場で占ってもらうわけでもなんでもなく、あらかじめ書かれたものを占い師の秘書が渡して終わりでした。クロウリーはそうした占い師に対して怒っていまして、そこからまあ、できるものならやってみろ! という思いを込めて豊富な知識や経験を要する技法を提示したということだと思います」
現在、このクロウリー・スプレッドを実践する占い師は、ほとんどいないという。はたしてどんな占いなのか? さっそく始めていただくとしよう。
今回、クロウリー・スプレッドの体験者となったのは「ムーやん」……ムー編集部の中のひとりだ。
というわけで、まずは「ムーやん」を表すカード、シグニフィケーター(Significator)を決める。
シグニフィケーターとは、直訳すると「意味する者」「表示者」だが、わかりやすくいえば「ムーやん」のシンボルだ。このカードがどこにあるかなどによって、「ムーやん」の内面や外界とのかかわりをリーディングすることができる。非常に重要なカードである。
シグニフィケーターを決めるに際しては、相談者(ここでは「ムーやん」)の振る舞いなどをよく観察し、その印象からカードを選ぶ。ヘイズ氏は、「中の人」の印象も加味しつつ、シグニフィケーターとして「カップのプリンス」を選んだ。
「好奇心が旺盛で優しくて、人の意見に流されやすいような今ふうの男子。カップというのは、よくも悪くも感受性が豊かで、怒りやすい・泣きやすいといった傾向を表します」
なお、本来ならば占いを始める前に「小五芒星の追儺(ついな)儀式」と「天使HRU(フールー)の召喚儀式」を行う。また、召喚儀式については各段階の冒頭にも行うのだが、ここでは割愛する。
カードをシャッフルして4つの山——占い師から見て右から順にY(ヨッド=火)・H(ヘー=水)・V(ヴァウ=風)・H(ヘー=地)——に分ける。
ひと山ずつカードをチェックして、シグニフィケーター(ここではカップのプリンス)がどこに入っているかを確認し、そこから相談内容を推測する。
「火からチェックしていきます。ここにムーやんがいたら、仕事を興したい、勝負事に勝ちたい、そういった相談になります。……いませんね。次は水です。ここにいたら、悩み事は恋愛や対人関係ということになります。……いました。ということで、ムーやんのお悩みは職場の対人関係とか、人とのかかわりがあまりうまくいかないということでしょうか」
「そうです」と、ムーやん。これで占いが続行されることになった。ここで「違います」となったら、その日は占い師と相談者の波長が合わないということで、占いは終了する。
続いて水の山にあったカードを半円形にスプレッド(展開)し、過去の状況を読んでいく。
どうやらムーやんは、これまで対人関係においてイヤな思いをすることが多く、自分のあり方について試行錯誤を重ねていくなかで、「この場所で輝こう」と思える場所を見つけたらしい。
だが、それでもイヤなことはあるし、意味なく傷つけられることもある。ならば人のことは気にしないで、自分のやるべきことに取り組もうと決めて、居場所を確保しつつある。安定した収入を得ることもできたようだ。
次に、スプレッドしたカードの両端をペアにしてリーディングしていく。
それによるとムーやんは、引き続き孤独感を味わっているらしい。縁の下の力持ちに徹するか、スポットライトを浴びてみようかなどと迷いながら、やはり自分らしく生きよう、堅実に人と交流できる道を捜そうと考えていると、ヘイズ氏はいう。
「でも、それって何? わからないから聞いてみようというのが今回のご相談です。とにかく対人関係に関して悲しみが強いようです」
はたしてムーやんの悩みは解決されるのか?
第2段階では、カードを12の山に分ける。これは西洋占星術の「ハウス」に相当し、相談者の悩みにふさわしいと思われる山(ハウス)を2つまでオープンできる。そこにシグニフィケーター(=カップのプリンス)が入っていれば占いを続行できるが、入っていなければ終了となる。
「対人関係のお悩みとなると、一般的には7室です。でも、すごく深く、自分の生き方もからめて悩んでいる場合は1室や12室ということもあり得ますので、どちらを開けようか悩んでいます。さて、7室を開けてみます。ムーやんのカードは入っていません。では、3室はどうでしょう……入っていますので、ムーやんは人間関係を研究中ということになります。対人関係については、まだ初歩の初歩ですね。かなりピュアな方だと思います」
第3段階では再びカードを12の山に分けるが、第2段階とは異なり、それぞれの山は西洋占星術の「星座」を表す。相談者の悩みにふさわしいと思われる星座を2つまでオープンできる。そこにシグニフィケーター(=カップのプリンス)が入っていれば占いを続行できるが、入っていなければ終了となる。
ヘイズ氏によれば、この段階で相談者の真の悩みが見えてくることもあるらしい。
「第1段階では仕事の悩みということで占いを進めたものの、この段階でじつは伴侶がほしいと出ることもあります。ご本人も気づいていない問題の追究ができるのは確かです」
12の山のうち、どれをオープンするのか。ヘイズ氏がまず選んだのは牡羊座だ。
「対人関係ではいろいろあるけれど克服していきたい、戦っていきたいというアグレッシブなお気持ちが見えましたので、牡羊座を選びたいと思います。……いませんね。ならば、アグレッシブの逆、パッシブを表す牡牛座を開けてみましょう。はい、先頭にムーやんがいました」
ムーやんの居場所が「牡牛座」と特定されたところで、第2段階と同様、牡牛座にあったカードを半円形にスプレッドしてリーディングした後、両端のカードをペアにして読んでいく。
それによるとムーやんは、自分からガンガンいくよりは様子を見ながら堅実な方向へいこうと考え、そのように行動してみた。しかし、それじゃダメだ、もっと頑張れといってくる上の人などがいて、どっちがよいのか悩んでいる。とはいえ、元気すぎる人はついていけないし、自分の役割を見きわめないと動きづらい。そこで、元気な人は元気に、そこまで元気でない自分はそれなりに、という方向性が見えてきた。いわば感じのよい「陰キャ」を目指してみようか、と思っている。
これで第3段階は終わる。
カードをひとまとめにしてシグニフィケーターを捜し、その下から36枚を取って円形に配置する。これは西洋占星術の「デカン」、つまり1星座を10度ずつに3分割したものを表す。
36枚のカードを並べたら、シグニフィケーターからスタートしてリーディングしたのち、両端同士をペアにして読み解いていく。
そこから導きだされたムーやんの心模様をざっくりとお伝えすると、いろいろと考えた結果、何があっても穏やかに対応できる、ある意味では仏様のようなキャラクターを目指そうとしている模様。そうすることで「相談しやすい人」と見なされて、さまざまな情報が自然と集まってくるし、周囲から頼られ、目下の人などへのアドバイスも的確にできるようになる。また、自分の力をどこに使うかもわかってくるようだ。
「そうした中でご自分の世界が開けていき、あの分野ならムーやんでなくては、という評価が得られるでしょう。かなり楽になるし、文句をいわれなくなります。そういえば、先ほどからワンドのナイトがうるさく出てくるので、元気に文句をいってくる人がいるのだと思いますが、その人が、『これはもうお前に任せた』というようになるでしょう」
これで第4段階は終わる。どうやらムーやんの近未来に光が差し込んできたようだ。
いよいよ結果が出る。これは、対人関係の悩みをいかに発展的に解消して、上のレベルへ持っていくかを見るものだ。今度はカバラでいう「生命の樹」の形にカードをスプレッドし、シグニフィケーターがどこにあるかで占う。
なお、この第5段階では、シグニフィケーターがどこにあるかを当てる必要はないので、無事に見つかるまでカードの山をオープンしていく。
ムーやんを表すカップのプリンスは、「ビナー」の山にあった。
「ビナーは悲しみを表す場所なので、いろいろと頑張ってはいるけれど、対人関係で傷ついた心を癒せるのか、トラウマを克服できるのかという不安感はあるのでしょう」
続いてビナーの山にあったカードを半円形に並べてリーディングしたのち、両端同士をペアにして読み解いていく。その結果をダイジェスト的にお伝えしよう。
「将来的には好かれる人になれます。ちょっとうるさいことをいうおじさん的なところはあっても、それはそれで好かれるというカードです。カップのプリンスと一緒にハピネスのカードが出ていますから、ムーやんが心配しているよりはよほど幸せになれるでしょう。対人関係だけでなく、仕事の成功なども一緒にくるのでは。まずは仕事でいっそうの自信がついて、そこにプラスアルファで対人関係の問題も解消しますし、馬が合わなかった人とは休戦状態に入れるので、それはそれでよしとしていけるのではないでしょうか」
……よかったね、ムーやん。幸せを祈る!
なお、ムーやんの悩みが何であったかについては、動画の最後のほうに答えがある。ご興味のある人は、ご覧いただきたい。
◆ヘイズ中村著『増補改訂 決定版 トート・タロット入門』好評発売中! 78枚のカードについての解説や、トート・タロットの歴史的・文化的背景、さらにはタロット占いの最高峰といわれるクロウリー・スプレッドのノウハウまでを網羅! あなたもクロウリー・スプレッドに挑戦してみませんか?
文月ゆう
ムー的ライター。とくにスピリチュアリズム方面が好物。物心つくかつかないかという年齢のころから「死」への恐怖があり、それを克服しようとあれこれ調べているうちにオカルトの沼にはまって現在に至る。
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