遮光器土偶はサトイモの精霊!竹倉史人氏の「土偶を読むお話会」に参加してみたら…
縄文時代のさまざまな土偶は、食用植物の精霊を表している!? 書籍『土偶を読む』で画期的な説を唱えた竹倉史人氏の話をうかがい、目からウロコの視点を獲得!
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それは10年前に突然、起こった。どこからともなく品物が出現。あるいは菓子などが食べられるといった数々の「イタズラ」が発生するようになったのだ。はたしてその原因は何なのか? 現場からリポートする!
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「アポーツ」──聞きなれない言葉だろうか? それとも本誌読者ならおなじみの用語だろうか?
アポーツ(アポート)とは、いわゆる「取り寄せ」とも呼ばれる、心霊現象または超能力のことだ。J・ゴードン・メルトンによる『宗教現象の百科事典』( 原題:The Encyclopedia of Religious Phenomena/2007年)における「APPORTS」の項目を引いてみると、こんな内容が書かれている。
「20世紀初頭の交霊会でよく行われた、霊的な働きによって、物体がいきなり出現(または物質化)する現象。❶ゼロから物質が形成されることもあれば、❷遠く離れた場所より物質を瞬間移動させるケースもある」(筆者要約)。とはいえ近年のスピリチュアル・シーンでは、❶と❷は区別されており、前者のパターンならば「物質化」と呼ばれることが多い。
現状、「アポーツ」といえば、物体をテレポートさせる「取り寄せ」を指す印象が強いのだ。
そんなアポーツ現象が、とある人々の集まりにて、たびたび発生しているそうなのだ。しかも10年前から現在にいたるまで、数えきれないほど。さらにいえば、そのアポーツを引き起こしているのは「ザシキワラシ」のような子供の霊らしいのだが……?
「アポーツ」と「ザシキワラシ」の組み合わせとは、まさしく現代的な心霊現象ではないか。情報をキャッチした本誌編集部は、さっそく現場取材を敢行した。
「私自身は、あまりそういう怪現象は信じない人間なのですけど……。どうしてそんなことが起こるのか、という興味はありますよ。まあ、僧侶という立場上、あまり大っぴらにいわないようにしていますけどね」
そう笑顔でコメントするのは、釈正輪(しゃくしょうりん)氏。1978年に出家してから、僧侶として海外などでも多くの活動を行っている。千日回峰行も成し遂げた大阿闍梨(おおあじゃり)ながら、現在は日本各地での「講話会」や日本の文化継承のための眞日本龢法(まことのやまとほうわ)宗家として活動をしている。その人柄から出席者たちからは「釈老師」と呼ばれ、親しまれている。
問題のアポーツ現象は、秘書の赤荻由那さんが主催する釈老師の講話会や稽古で、10年以上にわたって起こりつづけている。そこで実情を確認すべく、2021年5月に行われた会にお邪魔させていただいたのだが……。
その「出現」はもう、講話会が始まる前に発生していた。
筆者が到着したときには、すでに色とりどりのアクセサリーが、テーブルの上に並べられていたのである。
「これ、さきほど天井から降ってきたんですよ」
参加者の説明によれば、これら小物がなんの前触れもなく上から落ち、畳の上に散らばっていったのだという。
「全部で24個。ちゃんと参加者の人数分ありますね」
アポーツで発生した物品は、参加者たちで分けあうのが恒例となっている。だからなのか、いつも人数分ぴったりなのだ。といっても高級品の類ではない。100円均一ショップに並ぶアクセサリー・パーツとおぼしき品々だ。
ちなみに、これは比喩でもなんでもない。釈老師の講話会に「出現」するのは、100円均一ショップの商品や市販のお菓子など、現実に存在するものばかりだ。つまりこの現象はゼロからの「物質化」ではなく、物体を移動させる「取り寄せ」ということになる。
「なんだか、そういう不思議なことが毎回起こるんですよ。まあ、私はまだ正直なところ、完全に信じてはいない。でも現実に起こっていることだから興味はある。物理的にどうして起こるのか? という興味ですね」
釈老師自身は、このアポーツ現象からは一歩引いている立場のようだ。しかし、会の主催者である赤荻由那さんをはじめ、周囲の人々は現象の「犯人」をこう呼んでいる。
「モモちゃん。小さい女の子のようだから、私たちはモモちゃんと呼んでいます。10年前からずっと、その子がいろいろな現象を起こすようになったんです」
きっかけは2011年後半。まだ東日本大震災の傷跡も生々しいころだった。毎年恒例の講話会のため、釈老師と赤荻さんは、車で山形県を目指していた。
ちょうど山形の心霊スポットともされる「笹谷峠」のトンネルを通過していたときである。
いきなり何者かの声が、車内に響いた。人間では出せないような甲高い声であり、その様子を録画したデータも残っているという。
それが、すべての始まりだった。
このときから赤荻さんはたびたび、小さな子供のような声を聞いたり、気配を感じたりするようになる。やがて物体が「出現」するようにもなるのだが、その最初は講話会後の打ち上げで、10人ほどが座敷の長いテーブルに座っていたときのことだという。
ふと気づくと、全員の足下にそれまでなかったものが現れていた。パンジーの花びらが、ひとりにつきひとつずつ、並べて置かれていたのである。まるで今さっき、切ったばかりのような花弁だったという。なかには、テーブルの裏から畳に落ちる瞬間を見た人もいたそうだ。
「なんだか不思議だね……ってお店を出て、少し歩いたところでした」
道ばたに置いてあった花壇を見て、驚いた。そこには、花弁の部分だけが切られたパンジーが、ちょうど10本植えられていたからである。
「ここからとったんだ!」
その場にいた全員の意見が一致した。
このようなアポーツ現象が、その後もたびたび起こっていく。
春、地方を車で走っていたとき。たまたま桜並木の脇を通ったので、「老師、桜がキレイですね」と赤荻さんがつぶやいた。すると桜の花びらが、ちらちらと車内に舞ったのだ。
「あれ?」と思った矢先、今度はバサリ、と花びらのついた枝がまるごと一本、天井から落ちてきた。そんなこともあったというのだ。
「はじめのうちは花ばっかり。芳香剤なんて置いてないのに、ふわあっとお花の香りがしたり。老師からも、不思議な存在が出るときはいい匂いがするものだと聞いていたし……」
そんな折、桃農園の前を車で通過していた赤荻さんの頭に、ふとこんな名前が浮かびあがってきたのだという。
「『モモちゃん……ていう名前にしていい?』って聞いたら、『にゃあーん』と猫みたいな声が響いたので、これでいいんだな、と。それから、モモちゃんの名前が定着しました」
実は、このエピソードを取材していた途中、異変が起こった。赤荻さんがモモちゃんについての説明を始めて、数分たったタイミングである。「クウ〜」という小動物の鳴き声のような甲高い音が、どこからか響いたのだ。
「聞こえた!」
「聞こえましたね」
その声は、取材用に回していたレコーダーでも捉えられており、会場の人々がざわつく様子とともに、しっかり録音されている。
不思議なことはもうひとつあった。「モモちゃん」の名づけに伴い、猫みたいな鳴き声が聞こえたとのエピソードを話した直後である。
筆者が「さっきも、確かに猫っぽい声でしたね。レコーダーにとれていると思いますが……」と指摘したあたりで、やはり「にゃあーん」という、まさに猫そっくりの鳴き声が録音されていたのだ。
ただ、これについては会場のだれも気づいていなかった。筆者も釈老師も、そのまま会話を続けているし、他の人からの指摘もない。本稿を書くため、者が録音の文字起こしをしたことで、初めて気づいた現象だったのである。
猫の鳴き声は、よく赤ん坊に似ているといわれる。では、小さな女の子のモモちゃんは、いったいどのような存在なのだろうか?
「最初のうちは、お花やドングリ、お手玉やおはじきなど、お金のかからないものが出たり、お菓子が置かれていたりしたんです」
そうした子供っぽさや、出現のキッカケが山形だったこともあり、「東北地方のザシキワラシがついてきたのではないか?」と思っていたそうだ。
ただ時間がたつにつれて、出現する物体がサンリオやディズニーのぬいぐるみ、100円均一ショップのアクセサリーなど「現代的」なものへと変化していく。赤荻さんの運転する車の助手席に、いきなり巨大なぬいぐるみが現れたこともあったという。
「あるとき、私の頭のなかにふっとイメージがわいたんですね。小さな女の子が私たちにくれるものを、100均ショップみたいなお店で買っている場面です」
そうしたときには、釈老師の財布からお金が抜き取られていることにも気づいた。ほとんどは100円単位なので大した金額ではない。ただ2020年末の集まりでは、参加者ひとりにつき1000円ほどのヘアピンやブローチがどんどん出現し、老師の財布からは2万円以上のお金が消えてしまっていたそうだ。
「とにかく盗んだり、勝手に持ってきたりはしていない。どうにかして、ちゃんとお店から買っているものだから、皆さんも安心してもらっていただければと思います」
赤荻さんが笑ってコメントする。また、そうした物品は、なぜか人数分きちんと出現するそうだ。
「あれ、1個多く出たけどなんでだろうと思っていたら、急に飛び入りで参加される人がいたこともありました。ああ、帳尻が合っているな、と」
いちばん驚いたのは、ある年のクリスマス会だった。
ふと気づくと、入り口のマットに大量のおはじきが散らばっている。見ようによっては、サンタクロースとトナカイの絵になるよう並べてあるように思えた。しかもそれは、参加人数である87人ぴったりの個数がそろっていたのである。大人数の集会で、出入りも激しかったので、だれも人数まで把握していなかったにもかかわらず、だ。
「皆、ザシキワラシにはオモチャやお菓子をお供えするじゃないですか。モモちゃんの場合は逆で、ひたすら私たちがもらいっぱなし。だからザシキワラシとは別のなにかなのかな、と。霊能者の人に聞いたら、太古の昔、私の娘だった存在だといわれて……。
私に近くにいることを伝えたくて、私の好きそうな物をいろいろと出してくれているということにやっと最近気づきました。私や、集っている皆さんが喜ぶのが嬉しくて出してくれているのです。真面目な会合や超常現象を信じない人がいると出ません。ちゃんと場をわきまえているんです」
この記事の取材中にも、筆者の周囲にどんどん小物が「出現」していた。
会場からファミリーレストランに場所を移し、これらのお話をうかがっている最中、ボール状のアクセサリーパーツや、ぐねぐねと曲がった針金などが、床に落下したり、居合わせた人の頭にぶつかるなどして、どんどん落ちてきたのである。
なんらかのかたちで、きちんとお金を払って物品を買い、こちら側へとアポートする(持ってくる)。確かにモモちゃんという存在は、昔ながらのザシキワラシとはだいぶ様相が異なっているようだ。
「あとは、包み紙のかたちを崩さず、お菓子だけ抜き取ったり、皆さんの靴の中敷きを1枚ずつすり替えたり、すごい技を駆使することもあるんですよ。やっぱり神様なのかなあ……」と、赤荻さん。
しかし、なぜモモちゃんは、このような現象を起こすのだろうか?
「こういう不思議なことがあるということを、多くの人に伝えたいんでしょう。隠したいんなら、わざわざこんなことしませんから」
この問いについては、釈老師も思うところがあるようだ。
「最初のきっかけは、東日本大震災の直後。山形の笹谷峠で声を聞いたのが始まりです。私はずっと坊主をやってますけど、こんなことは一度もなかったんですよ。ただ10年前を境に、世の中の空気が変わったという印象がある。その時期から、不思議なことを認めようという方向に進み、精神性を大事にする社会になりつつあるんじゃないかな」
10年の間、ずっと続いていたこの現象が、ようやく本誌編集部の耳にも届き、こうしてモモちゃんの取材にきたこと……それ自体が、釈老師にとっては興味深いのだという。
「現象が始まってから10年たったところで、『ムー』さんに気づいてもらい、取材にきてもらうご縁ができた。それは、モモちゃんのような現象があると、世間に広めてもいいタイミングになったからでしょう。日本は10年前からだんだん、こうした不思議な話をすることが自然になってきているのでしょうね」
吉田悠軌
怪談・オカルト研究家。1980年、東京都生まれ。怪談サークル「とうもろこしの会」の会長をつとめ、 オカルトや怪談の現場および資料研究をライフワークとする。
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