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政治・経済を世界規模で俯瞰し、長大な歴史物語を眺め、さらにその奥底に蠢く勢力を三上編集長がMUTubeで解説。
明治末期、1904年にはじまった日露戦争で、明石元二郎率いる明石機関はロシア帝国内で反政府活動を活発化させるなど、世界史に残る謀略をしかけた。明石機関が放った謀略の火は、ロシア革命を引き起こし、ロマノフ朝ロシア帝国は崩壊。その後の混乱、内戦を経て1922年にソビエト連邦(ソ連)が建国された。
ロシア帝国を滅ぼして共産党独裁によるソ連を建国することは、ある勢力のプログラムだった。建国から69年後の1991年にソ連が崩壊したとき、世界のマスコミは「壮大な実験が終了した」と報道したが、実験を行った勢力が何者なのかはだれも口にしない。この勢力については、のちに明らかにしていく。まずはソ連の歴史を大ざっぱに眺めてみたい。
レーニンを継いでソ連の指導者となったのは、ロシア革命の戦士スターリンである。スターリンは「大粛清」と呼ばれる大量虐殺で知られ、粛清された者は2000万人ともされる。この数は毛沢東の「文化大革命」による虐殺8000万人(一説では1億人)に次いで、人類史上2番目の虐殺数だ。
スターリンはなぜこれほどまでの大虐殺を行ったのか。権力を掌握するために、対立する人々を処刑したとか、旧指導者層を壊滅させるためと解説される。それは間違いではない。だが最大の目的は、全土からロマノフ朝の名残りを一掃することだった。のちに毛沢東が文化大革命で清朝の残滓を取り去った手法と同じである。
スターリンの死後、ソ連の指導者はマレンコフ(半年間)、フルシチョフ(11年間)、ブレジネフ(18年間)に引き継がれるが、これらは重要な意味を持たない。東西冷戦が継続され、軍事・科学技術の競争が繰りひろげられただけの話だ。
ソ連の歴史の中で、スターリンに次ぐ重要な人物はアンドロポフである。
アンドロポフはKGB(ソ連国家保安委員会)議長から政治家に転身した人物。改革派として知られるが、就任半年で病に倒れ、改革を後輩のゴルバチョフに託すことになる。
アンドロポフの役目は、スターリンによって築かれたソ連という「壮大な実験国家」を破壊することだった。自分の死が近いことを理解していたアンドロポフは、ゴルバチョフを異例なまでに引き上げたが、アンドロポフが死去したときのゴルバチョフは52歳の政治局議長。書記長の椅子は遠かった。
アンドロポフの後の書記長は守旧派のチェルネンコとなり、改革は小休止する。しかしそのチェルネンコも、就任1年余で、なぜか突然肺気腫を悪化させて死去。書記長にゴルバチョフが就任し、直ちに「ペレストロイカ(建て直し)」を断行。憲法を改正し、ソ連に複数政党制、大統領制を導入。1990年にはソ連の初代大統領に就任する。ソ連はゴルバチョフの代に崩壊し、ロシア連邦が誕生。ロシア初代大統領エリツィンからプーチン大統領の時代となる。
プーチンはアンドロポフがKGB議長の時代にKGBに入り、アンドロポフが創設した第5総局で思想戦、反体制派弾圧を学んでいる。師であるアンドロポフをプーチンが崇拝していることはよく知られる。アンドロポフの執務室を再現し、その銘板を復活させ、サンクトペテルブルク(旧レニングラード)市に銅像を建てたほどだ。
ロシア帝国滅亡にはじまりソ連崩壊、ロシア連邦誕生に至る物語を俯瞰すると、この地に存在した歴史、文化をすべて抹殺し、実験的な枠組を作ろうとしてきた道筋が見えてくる。それはプーチンの「歴史的な立ち位置」を暗示する。
だがプーチンの奥底を知るためには、別の角度からの分析も必要だ。
「プーチンはフリーメーソンの一員だ」と主張する人々がいる。この主張に同調する陰謀論者も多い。結論からいうと、これは間違いだ。
だが、まったくの見当はずれでもない。そもそもフリーメーソンに対する認識がいい加減で、誇張や妄想が入り混じっているから、こうしたデタラメが通ってしまう。
ハワイの島から沖合に出て海に飛び込めば、太平洋のことが理解できると考える人はいないだろう。フリーメーソンの内部に飛び込んでも、その正体など理解できるはずがない。私自身、1971年にフランマソン研究者の犬塚きよ子氏のご自宅を訪ねてこの秘密結社を知り、以来何度も犬塚氏を訪ね、本を読み漁り、フリーメーソン員と称する人々とも語りあったが、その実態は理解できなかった。イルミナティやブナイ・ブリスも同様だ。
フリーメーソン、イルミナティ、ブナイ・ブリスはイエズス会と同質である。どこをどう切り取っても金太郎飴で、同じ形の、真面目で勤勉で高邁な顔を見せる。だがイエズス会とは史上最強の諜報機関なのだ。
第2次世界大戦の末期に世界ユダヤ人会議の議長を務めていたのは、ハンガリーの名門ラブ一族出身のスティーブン・サミュエル・ワイズだった。ブナイ・ブリスのトップでもあったワイズはトルーマンを副大統領に推挙した人物。ルーズベルトの急逝を受け大統領になったトルーマンは、国務長官バーンズらの意見を汲んで日本への原爆投下を発令するが、その背後に世界ユダヤ人会議が存在した。
ラブ家一族は当初、天皇制に疑問を持っており、日本を完全に潰すつもりだった。終戦になったとき、ラブ一族の御曹司しスチュワート・ラブがGHQ情報将校として日本に赴任した。S・ラブは一族の指令にもとづき天皇の本質を知ろうと、久原房之助や秋山定輔、鬼倉足日公などに接近。やがて天皇制を存続させることが日本だけでなく世界にとって有益だと結論し、ブナイ・ブリスにその報告を挙げる。
世界ユダヤ人会議は日本国憲法成立に重要な役割を果たしたが、全8条から成る第1章「天皇」には、S・ラブの思いが凝縮されている(「象徴天皇」はGHQの草案にはなく、渡辺楳雄を初めとする仏教界、神学界の意見が反映されて作成されたものだが、その複雑な経緯は省略する)。
余談になるが、S・ラブの実弟ジョセフ・ラブは兄に刺激されて来日し、日本文化に心酔。イエズス会の上智大学の教授として活躍し、1992年に東京で逝去している。
(文=志波秀宇)
続きは本誌(電子版)で。
webムー編集部
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