5つの見えない身体に気づいて自分を癒す!/「ムドラ瞑想」実践法(2)

監修=ガイアブックス

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    ムドラは、古代インドの聖賢たちが瞑想の中で至高の境地に至り、それを追体験するために、あるいは弟子に教えるために、自然発生的に生まれたという。現代人のわれわれも、これを実践することで、本来備わっている好ましい性質を呼び覚ますことができる。今回は、われわれのだれもが持っているが、目には見えない5層の身体に気づくためのムドラを紹介する。

    ※画像は平安時代に作成されたムドラの巻物。密教の僧侶は、瞑想や儀式の際にムドラを結んだ。

    5つの異なる「身体」に気づくコーシャ・ムドラ

    「コーシャ」は「鞘」や「層」を意味し、人間という存在を形成する、5つの異なる「身体」を表す。ここで紹介する5つのコーシャ・ムドラは各層に対応しており、それぞれへの気づきをもたらす。

    ①アンナマヤ・コーシャ(食物鞘)=アンナは「食物」を意味する。食物で維持される物質的な層、つまり肉体を指す。
    ②プラーナマヤ・コーシャ(生気鞘)=プラーナは、万物に充満する「生気」を意味する。チャクラなどを覆う微細な層。
    ③マノマヤ・コーシャ(意思鞘)=マナは「意思」を意味する。性格を形成する思考・感覚・感情を覆う層。
    ④ヴィジュニャーナマヤ・コーシャ(理智鞘)=ヴィジュニャーナは「理智」を意味する。洞察力や精神的な変容をもたらす知性からなる層。
    ⑤アーナンダマヤ・コーシャ(歓喜鞘)=アーナンダは「歓喜」を意味する。生来の好ましい特性を覆う層。

    プリティヴィ・ムドラ(食物鞘のための大地のムドラ)

     プリヴィティ・ムドラは、アンナマヤ・コーシャ(食物鞘)に働きかけて、肉体の癒しと健康に寄与する。プリヴィティは「大地」を意味する。
     このムドラは、呼吸と意識とエネルギーを上体の基盤に向け、身体を十全に生きるのに必要な、確かなよりどころや安全性や安心感を高める。このムドラを結ぶと自然界とのつながりを感じ、自信が高まり、環境への信頼感が増す。また、身体構造に支えられているという実感が生まれ、骨格系の健康が促進される。
    【核となる特性】
     身体感覚を高める。
    【核となる特性を呼び覚ます言葉】
    肉体のあり方に心からくつろぎ、自信を持って人生を歩んでいきます。
    【主な効能】
    ・姿勢を改善する。
    ・ストレスを緩和する。
    ・安心感をもたらす。
    【手順】
    ①親指の先を薬指の先と合わせ、その他の指は伸ばす。
    ②両手の甲を腿か膝の上に置く。
    ③肩の力を抜いて後方に押し下げ、背筋を自然に伸ばす。

    ヴィッタム・ムドラ(生気鞘のための生気のムドラ)

     ヴィッタム・ムドラは、プラーナマヤ・コーシャ(生気鞘)に働きかけて、微細な身体を調える。ヴィッタムは「生命エネルギー」を意味する。
     このムドラは、呼吸と意識とエネルギーを骨盤と腹部に向け、この部位が活力の源泉であるとの実感を高める。それにより、健康と癒しと覚醒の手段であるエネルギーが、存在のすみずみまで巡るようになる。
    【核となる特性】
     生命エネルギーの自由な流れを助ける。
    【核となる特性を呼び覚ます言葉】
    生気の自由な流れに同調し、命のリズムとともによどみなく歩みを進めます。
    【主な効能】
    ・微細なエネルギーが再び自由に流れるようになる。
    ・腰の凝りをほぐす。
    【手順】
    ①両手をかすかに丸め、下腹部の前で30センチほど離して手のひらを向かい合わせる。
    ②吸気とともに自然と両手を離し、呼気とともにゆっくりと元の位置に戻す。
    ③肩の力を抜いて後方に押し下げ、背筋を自然に伸ばす。

    プールナ・フリタヤ・ムドラ(意思鞘のための開いた心臓のムドラ)

     プールナ・フリダヤ・ムドラは、マノマヤ・コーシャ(意思鞘)に働きかけて、思考や感情の受け入れを容易にする。プールナは「完全な」、フリダヤは「心臓」を意味する。
     このムドラは、胸部・肋骨・背中上部の呼吸を広げ、肺活量を増すことで微細な心臓を開く。すると心が開き、思考や感情への心構えができる。
    【核となる特性】
     思考と感情を尊ぶ。
    【核となる特性を呼び覚ます言葉】
    思考と感情を歓迎することで、意思鞘を余すところなく受け入れます。
    【主な効能】
    ・思考や感情の受容が容易になる。
    ・胸部の筋肉の凝りをほぐす。
    ・免疫力を高める。
    【手順】
    ①心臓の前で両手の手のひらを向かい合わせ、指先を上に向ける。
    ②親指以外を内側に丸め、人差し指を心臓側にして、左右の指の上半分を内向きに交互に組み合わせる。
    ③親指を下に伸ばし、左右の親指の先を合わせて、ハートの形を作る。
    ④肩の力を抜いて後方に押し下げ、背筋を自然に伸ばす。

    チッタ・ムドラ(理智鞘のための観察する意識のムドラ)

     チッタ・ムドラは、ヴィジュニャーナマヤ・コーシャ(理智鞘)に働きかけて、理智を備えた内なる観察者を覚醒させる。ヴィジュニャーナは「より高き知恵」を意味する。
     このムドラは、呼吸と意識とエネルギーを首と頭部、とりわけ知恵と明晰さを司る「第3の目」に向ける。
    【核となる特性】
     内なる観察者を覚醒させる。
    【核となる特性を呼び覚ます言葉】
    自分を縛る思い込みから徐々に解放され、大いなる清澄さとともに旅を続けます。
    【主な効能】
    ・観察によって、自分を縛る思い込みから自由になる。
    ・首と肩の凝りをほぐす。
    ・知性が研ぎ澄まされる。
    【手順】
    ①人差し指の腹と親指の先を合わせ、ほかの指は伸ばす。
    ②胸の前で、体から少し離して両手を合わせる。左右の中指と薬指と小指の腹を合わせ、左右の親指の側面を合わせ、左右の人差し指の指先を合わせ、指の線と大地を平行にする。
    ③肩の力を抜いて後方に押し下げ、両肘を体から離し、背筋を自然に伸ばす。

    ハンシー・ムドラ(歓喜鞘のための内なる微笑みのムドラ)

     ハンシー・ムドラは、アーナンダマヤ・コーシャ(歓喜鞘)に働きかけて、真の自己との同調を助ける。アーナンダは「歓喜」を意味する。
     このムドラは、呼吸と意識とエネルギーを胸の上部・首・頭部に向け、喜びと快活さの実感を高める。このムドラを結ぶと口元に笑みが浮かび、それが存在全体に広がっていき、生来持つ好ましい特性が自然と覚醒する。
    【核となる特性】
     好ましい特性を開花させる。
    【核となる特性を呼び覚ます言葉】
    存在のすみずみから内なる微笑みが輝きを放ち、本質的な好ましい特性がすべて覚醒します。
    【主な効能】
    ・生来の好ましい特性をあらわにする。
    ・あごの凝りをほぐす。
    ・免疫力を高める。
    【手順】
    ①人差し指と中指と薬指の先を、同じ手の親指の先に当てる。小指はまっすぐに伸ばす。
    ②両手の甲を腿か膝の上に置く。または、両手を体の横に掲げ、小指の先を上に向けてもよい。
    ③肩の力を抜いて後方に押し下げ、背筋を自然に伸ばす。

    108のムドラが詳細に解説された『ムドラ全書』(ガイアブックス/本体3200円+税)。癒しや覚醒を求める人の助けとなる一冊だ。なお、本稿のテキストと図はこの書籍に依拠する。

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