トリムルティの御神木と黒いヴィシュヌ像の神圧におののく! リシケシ「バーラト・マンディール寺院」の神秘/ムー旅インド
3本の樹が一体となり、三神を体現するトリムルティ御神木で知られるインド古刹に参拝。そこには伝説の黒いヴィシュヌ像が迎えてくれた。
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「人の姿」をしたものは、もっとも思いや念が込められやすい対象物となる。愛らしい姿で、癒しや安らぎを与えてくれる人形。だが、ときに人形は、人々に恐怖や苦痛をもたらす恐るべき存在へと変貌することがある。 実際、人形が周囲に害をなした異常な出来事は、世界各地で報告されている。なぜ人形は呪いの媒体となってしまうのか?
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2017年に公開された映画『アナベル 死霊人形の誕生』。2013年の第1作『死霊館』以来、全世界における興行収入の累計が1000億円を突破した人気の人魚いうホラーの最新作だ。助けを求める声も、神への祈りも、十字架による神の力も、牙をむく人形の呪いにはまるで役をなさない。そんな究極の恐怖体験が次々と展開されていく。
ここで簡単にストーリーを紹介しておくと、12年前に幼い愛娘を亡くした人形師とその妻が暮らす館に、6人の少女とシスターがやってきた。なぜか館には、いるはずのない何者かの無気味な気配が漂っている。
そしてあるとき、ジャニスという少女が、気配の正体である呪いの人形アナベルの封印を解いてしまうのだ。自由になったアナベルは、執拗にジャニスを、そして少女たちを追い詰めはじめる。逃げても、捨てても、アナベルの追跡はやまない。そしてついに――。
驚くべきことにこの映画は実話が元になっている。
映画では、リアルな表情のビスクドール風の人形が使われているが、現実のアナベルは布製の抱き人形だ。人形のモデルは絵本のキャラクター、ラガディ・アン。ちょっととぼけたかわいらしい表情をしていて、アメリカでは大人気のキャラクターである。
この愛らしい人形が牙をむいたのは、1970年代のことだった。
あるとき、ドナという女性が母親からヴィンテージ物のラガディ・アンの人形をプレゼントされた。ドナはルームメイトのアンジーと暮らすアパートに、この人形を持ち帰る。
するとまもなく、奇妙なことが起こりはじめた。彼女たちが外出している間に、なぜか人形の位置が変わっているのだ。
部屋に出入りしていた男友達のルーは、人形に邪悪なものを感じ、いっそ燃やしてしまってはどうかと提案する。
彼女たちは、ある霊媒師に相談してみた。するとこんな説明が返ってきたのである。
「あなたたちの住むアパートが建つ前に、この土地で暮らして7歳で亡くなったアナベル・ヒンギスという少女がいた。この人形には彼女の霊が憑いており、しかもドナとアンジーに親愛の情を抱いている。できればすっと、ふたりのそばにいたいと願っているようだ」
ドナとアンジーは、アナベルの気持ちに報いるために、そのまま人形を手元に置いておくことにした。
だが――それは罠だった。
人形を焼こうと提案したルーは、それ以来、毎晩のように悪夢に悩まされるようになってしまった。夢のなかではいつも、人形が彼の胸元をはいあがってきて、首を強く絞めつけるのである。あるとき、ルーが彼女たちのアパートを訪れると、だれもいないはずの部屋から奇妙な声が聞こえてきた。覗いてみると、そこにはアナベル人形がいた。
次の瞬間、ルーは胸に激しい痛みを感じた。見るとシャツに血がにじんでいる。あわてて部屋から逃げだし、シャツを脱いでみると、胸には獣の爪痕のような7つの傷が残されていた。
悪意のない少女の霊が、そんなことをするはずがない。さすがになにかおかしいと感じたドナとアンジーは、超常現象研究家のエド&ロレイン・ウォーレン夫妻に調査を依頼した。するとウォーレン夫妻は、人形に憑いているのは少女の霊などではなく、悪霊だと結論づけたのである。
結論からいうと、悪魔祓いはあまり効果がなかったようだ。というのも、人形はその後もあいかわらずウォーレン夫妻の家を動きまわったからだ。
そこで夫妻は、人形を特製のガラスケースに封印し、自宅の敷地内にあるオカルト博物館に納めることにした。こうしてアナベル人形は、ようやく移動をやめたのである。
この人形は、いまも同じ場所で展示されている。ただしケースには、「絶対に開けるな!」「さわるな!」という注意書きが仰々しく貼られている。人形の呪いは、決して消えてはいないのである。
現に被害者も出ている。
あるとき、ひとりの青年が「やれるものならやってみろ!」と叫びながら、人形が入っているガラスケースを叩いた。すると博物館からの帰り道、青年はバイクに乗ったまま気に衝突し、即死してしまったのだ。
人形による恐怖を描いた映画といえば『チャイルド・プレイ』が有名だが、この人形にもモデルがある。
これは死の直前に魂を人形に移した殺人鬼が、その人形を手に入れた少年の体を奪おうとするホラー映画で、1988年の初公開から2013年までに6本が製作された。
モデルとなった呪いの人形は、海軍のセーラー服を着たアンティークな姿で、「ロバート」という持ち主の名にちなんだものだ。
彼は子供のころ、黒魔術に傾倒していた執事から、この人形をプレゼントされたという。人形をいたく気に入ったロバート少年は、いつでも一緒にいるようになる。そのうちに少年の部屋からは、少年と会話する野太い男の声が聞こえてくるようになったのだ。
あるいはまた、少年は毎日のように他人の悪口を人形に聞かせつづけ、自分の行った悪事もすべて人形のせいにしていたという話もある。
その後、ロバートが亡くなると、人形は他人の手に渡ったが、そこで人形が勝手に動き回るなどの怪奇現象が続発。結局、1980年にアメリカのフロリダ州にあるイースト・マーテロー博物館に引き取られ、現在もそこに展示されている。
その姿を見ると、顔には針で刺されたよう穴が無数にあいているのがなんとも無気味だ。愛嬌のある顔をしているだけに、より恐怖が増すのだろう。
ところで、映画『チャイルド・プレイ』で、殺人鬼の魂を移したのは、ブードゥー教の呪術師だった。
ハイチで発達したこの宗教は、人形が非常に重要な役割を持っている。とくに呪いに用いられる人形は、きわめて強力だ。
一般的には、呪いをかける相手の名前と生年月日を人形に書きこみ、呪術師が呪いをかけて、相手に送るというスタイルが取られる。
このとき、腕や胸、背中など、痛めつけたいところに針を刺しておく。足に刺せば歩けなくなり、目に刺せば見えなくなる。頭に刺せば頭痛になる。こうして相手は精神的にも追い詰められ、最悪の場合、自殺にまで追い込まれるという。
ブードゥーの呪いの人形とよく似たものが、日本にもある。
呪いの藁人形だ。
藁人形には、呪う相手の体の一部(毛髪、血、皮膚など)や写真、名前を書いた紙などを入れる。そして深夜(いわゆる丑三つ時)に、木の幹に五寸釘で打ちつけるのだ。すると相手には、不幸が訪れるというのだという。
もともとは呪いではなく、神仏への願掛けがルーツだったといわれている。だが、鎌倉時代後期の記録によると、その姿は次のように、呪いさながらの鬼気迫るものだったようだ。
「長い髪を5つに分けて角にし、顔には朱をさし、身には丹を塗り、頭には鉄の輪をはめ、そこに3本の炎を灯す」
念のために書いておくと、この時代にはまだ、藁人形は用いられていない。その後、陰陽道の呪術と結びついたことで、藁人形が使われるようになったのだという。
実は日本では、人形を用いた呪い(広い意味では呪術)あ、かなり古い時代から行われていたことがわかっている。
たとえば、縄文時代の遺跡から出土する、土偶という人間を象った土器がある。
奇妙ことに、ほとんどが手や足、あるいはそのほかの体の一部がかけた状態で発見されていて、完全なものはほとんどが存在ない。つまり土偶は、最初から壊すとを目的に作られているのだ。
なぜ壊すのか?
それは壊された部分に呪いをかけるためである。
おそらくそれは、病気や災害で苦痛を受けた場所なのだろう。そこを壊すことで呪術をかけ、治癒するとことを願い、破棄(もしくは埋葬)されたのである。
遮光器(サングラス)のようなものをつけた異形の土器(遮光器土偶)は、その呪力を高めるために、人間ではない姿をあえてさせているのだ。そうすることで、呪力はいっそう強くなるからである。
また、時代が下がって8世紀遺跡からは、胸に鉄釘が打たれた木製の人形(ひとがた)も出土している。こちらは呪術というよりは、明らかに呪詛を目的としたものだろう。
もうひとつ、興味深い話を紹介しておこう。なんとゾウが人間を呪ったいうのである。
1928年のことだ。神戸の古道具店で、世界一周中のイギリス人夫妻が象牙製の布袋像を手に入れた。予想以上に安価だったので夫妻は大いに喜び、夫人が自分
バックに入れて船に乗り込んだ。
やがて夫人は、激しい歯痛に悩まされはじめる。鎮痛剤は全く効かず、マニラに到着するまでの12日間、彼女は沈鬱な気分で過ごすことなった。
マニラに着くとさっそく歯科医の治療を受けたが、どういうわけかドリルがすべって神経に触れてしまい、痛みはますます激しくなるばかりだった。
オーストラリアのシドニーへ着くまでの間、布袋像は夫のバッグに移された。すると今度は夫が激しい歯痛を起こして寝込んでしまう。シドニーで歯科医に診てもらったが、どこにも異常はないという。確かにそのときには痛みは消えていた。だが、船室に戻ったとたん、また激しい痛みに襲われたのだった。
そこからアメリカへ向かう船の中では、布袋像が入ったバックはずっと倉庫に預けられていた。すると奇妙なことに、ふたりの歯痛はぴたりと止まったのである。
ここにきて夫妻は、さすがに布袋像と歯痛の関係を疑いはじめた。妻は布袋像を海に捨ててしまおうと提案したが、夫はそんなことをすれば報復を受けて、葉をぜんぶ失ってしまうのではないかと恐れた。
結局ふたりは、布袋像を倉庫に預けたままイギリスに帰国し、ロンドンにある東洋美術店の日本人支配人に相談をした。
いきさつを聞いた支配人は、日本の着物を着た老人を呼び、像を丁寧に調べてもらった。
老人によれば、この像は布袋という神の姿をしており、非常に魂が宿りやすくなっているという。そして、牙を抜かれたゾウの恨みや痛みが、それを手にした者に呪いとなってふりかかっているのだろうと説明した。
そして、老人はこの像を祭壇に祀ると、香を焚いて供養をした。こうしてゾウの呪いは収まったのだ。
ここまで、いくつか人形による呪いを紹介してきたわけだが、なぜこのようなことが起こるのだろうか。
そのヒントとなるのが、象牙の布袋像を調べた老人の言葉だ。彼は、件の像は神の姿をしているので、非常に魂が宿りやすくなっているといっていた。
人形の呪いも同じことで、それが「人の姿」をしているために起こるのである。
呪いであれ、祟りであれ、人の思いや怨念は、対象物に思いが込められるほど、現象も強くなる。「人の姿」をしたものは、もっとも思いや念が込められやすい対象物となるのだ。
たとえば、陰陽師が使う呪術に「式神」というものがある。
これは一枚の紙を人の形に切ったもので、術を宿す「依代(よりしろ)」として使われる。具体的には、呪文を書きこんで護符にしたり、相手の名前を書いて呪ったり、ときには実際に生物に姿を変えて操ったりしたという。
式神が人の形をしているのは、圧倒的に術を込めやすいからなのだ。
また、富山県には「人形神」という、一種の憑物人形がある。たくさんの人に踏まれた墓地の土で作られた人形で、これを祀るとどんな願いごとでもかなったとされる。
これも、呪詛が人形に憑依しやすいという特徴を活かした民間伝承のひとつだろう。
ただし代償として、一度祀った者には死ぬまでとり憑き最終的には魂を地獄へ連れ去るといわれているのだが……。
一般的な話では、人形供養ということも忘れてはならない。
もともとこの儀式は、縄文時代の土偶のように、人間に降りかかる災厄を人形に託し、供養することで身代わりになってもらうという性質のものだった。
だが最近では、長年、身近にあった人形を手放すときの「儀式」としても積極的に行われている。人形には持ち主の思いや念がこもりやすいだけに、簡単には捨てられないし、処分方法にも困る。そこで神社や寺で祈禱や供養を行い、災いや呪いから逃れようというわけだ。
いずれにせよ、そうやって人々はいつもの時代にも、人形の性質を利用してきたわけである。
ならば、どうして人形などの物質に呪いがかかるのか、その仕組みを考えてみよう。
「サイコメトリー」という超能力がある。これは、対象物に触れるだけで、それにまつわる由来や歴史、過去の持ち主の経歴まで読み取ってしまう能力だ。
なぜそんなことが可能になるのか。ひとつの説として、物質にはそれぞれ一種のエネルギー場があり、そこに過去の情報がプールされているという話がある。サイコメトリーの能力者は、そのエネルギー場にアクセスして、情報を得ているというのだ。
それが正しければ、呪いの人形も、このエネルギー場に“怨念”という悪感情がプールされたもの、と考えることができる。意図的であれ偶然であれ、深い恨みの念が、エネルギーとしてその人形を覆っているのだ。それが呪いの人形と化すのである。
では、その呪いを防ぐ方法はないだろうか。
こんな興味深い話がある。
2014年にシンガポールの道ばたで、布で目隠しをされた無気味な西洋人形が発見された。
人形はたちまち人々の間で噂になり、「目隠しを外すと悪魔が出てきて呪われる」「目隠しを外すと人形は家までついてくる」といった書き込みがインターネット上をにぎわせることになった。
見方を変えれば、目隠しをすることで人形の呪いは防げる、ということになるわけだ。それを裏づけるように、後日、目隠しを外した人形の写真が、次のようなコメントとともにインターネット上にアップされている。
「理由があってこの人形に目隠しをしたのに、だれかがそれを外してしまった。目隠しを外した人の幸運を祈る」
なんとも意味深長なコメントだが、だとすればなぜ、人形の持ち主はそれを道ばたに放置したのだろうか?
まったくもって謎だらけだが、幸いなことにその後、トラブルが起こったという話は届いていない。
(月刊ムー2017年11月号掲載)
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