霊人ケイティを召喚! フローレンス・クック/世界の霊媒師

文=並木伸一郎

関連キーワード:

    近代以降、霊と交信する方法を確立、または会得した霊媒たちが世間を賑わせるようになる。彼らは霊界の存在から超常の力を借りて、この世に具現化させてみせた。 今回は、無形の霊を物質化した「フローレンス・クック」を紹介する。

    霊魂を呼び出し、物質化する

     ヒュームのように精霊の力を借り、奇跡を具現化する霊媒もいれば、固有の霊魂を呼び出して物質化し、操る霊媒もいる。フローレンス・クックはその代表ともいえる人物だ。
     イギリスに生まれた彼女は、幼い頃から霊視ができ、15歳のころには空中を浮遊した。そして、〝ケイティ・キング〞なる女性の霊を物質化することに成功した。
     ケイティは18世紀にジャマイカ総督になった海賊の娘アニーの霊魂だという。いわゆるエクトプラズムだろうが、全身を出現させ、自由自在に動いたという点が興味深い。
     その降霊法も独特だ。交霊会でケイティを出現させる際、フローレンスは椅子に手足を縄で縛られ、スピリット・キャビネットと呼ばれる小部屋にひとりとじ籠る。だが、しばらくすると白いローブを羽織った、蝋のように真っ白な肌の美しい女性、ケイティが、参加者の前に登場するのだ。その女性、ケイティは参加者と微笑みながら会話をし、室内を徘徊し、観客の横に座って体に触れさせ、生きているようだったという。

    フローレンス・クックが呼び出したケイティ・キング。生きている人間と同じような姿で、参加者と交流した。

    ケイティの正体は…?

     ひとり二役説や、別人がいたという説など、さまざまな解釈が飛び交ったが、「ケイティの体温は人間のようだったが、皮膚は大理石のようになめらかだった。手首をつかむと骨がない。ケイティにそのことを告げると、もう一度手を差し延べてきた。すると骨ができていた」という肯定的な証言も多い。また、ケイティの体重はたった約25キロだったという研究や、ケイティが〝溶ける〞様子を目撃した人もいる。
     しかし、ある日突然、ケイティ・キングは消えた。「役目が終わったので霊界に帰った」ということだった。同時にフローレンスは結婚し、降霊会も行われなくなった。
     しかしフローレンスは後に〝マリー〞なる霊を呼び出すようになる。またしても世間は肯定派と否定派に分かれて論戦を始めたが……。1904年、フローレンスが48歳の若さでこの世を去ると、その真偽もまた、闇に消えた。

    フローレンス・クック(Florence Cook、1856~1904年)。イギリス、ロンドン出身。

    関連記事

    おすすめ記事