UFO・異星人と臨死体験・死後の世界の共通性とは? すべては異次元「数のない世界」に属する仮説
“この世”にいる我々にとって、“あの世”はわからないことばかりだ――。気鋭のジャーナリストは死後の世界もUFOも“あの世”に属するものであり、そこは“別次元”であるとの自説を展開している。
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素晴らしい冬晴れの午後、街路を歩いていた女性の目の前で突然繰り広げられた“ビジョン”とは――。半年先の光景をありありと“予見”したジャーナリストの初撃体験に迫る!
近未来に起こる出来事を“予見”した体験を持つ者は少なくないが、戦前戦後に活躍した著名な女性ジャーナリストが実に具体的な半年先の未来を“予見”した体験を語っている。
女性ジャーナリストの草分けであったアイリーン・コーバリー・クーン(1898-1995)は1920年代と30年代にジャーナリズム活動でアメリカと中国を行き来して輝かしいキャリアを積み重ねていた。
1938年に出版された回想録『Assigned to Adventure』の中で、彼女はこの時期の仕事と私生活についての個人的な物語を綴っている。
1922年、アイリーンは上海に駐在しアメリカ系中国紙「チャイナ・プレス」のニュース編集者を務め、記者仲間のバート・クーンと結婚した。翌年に娘のルネが誕生し、共に海外赴任中の夫婦の生活は充実ぶりを見せていた。
しかし1925年5月、ストライキに参加した紡績工場労働者たちの有罪判決に抗議していた上海の中国人学生の大規模なグループにシーク教徒の警察官が発砲したことで騒乱が拡大した。
止まぬ混乱の中、各地で暴動も起きるようになり、市民生活レベルでもきわめて危険な状況が生み出された。状況の深刻さを理解した夫のバートは、自分は上海に残るが、アイリーンに娘を連れてひとまずアメリカに帰国するよう促し、最終的に彼女は夫の進言に従ったのだった。
話は同年12月に移る。
アメリカに戻り順調な生活を送っていた12月のある日の午後、心地良い冬晴れの空の下、シカゴのミシガン大通りを散歩していたアイリーンは、実に神秘的で生涯忘れられない体験をすることになる。同著で彼女はその神秘体験を次のように綴っている。
「……突然、何の前触れもなく、空、大通り、人々、湖、すべてが消え、まるで失明してしまったかのように完全かつ迅速にすべてが私の視界から消え去りました。そして私の前には、暗い劇場のスクリーンに映っているかのような、鉄柵に囲まれた緑地が広がっていました」
季節は12月であったが、目の前に広がる光景は明らかに春の陽気に包まれていたという。
「春の新緑の中、片隅に3本の若木が立っていました。木々や柵を越えた先のはるか遠くで、工場の煙突が空に煤煙をくゆらせていました」
遠くに喪服姿の少人数のグループが見えたという。つまり、そこは墓地であったのだ。
「木の向こうに、黒い服を着たほんの一握りの男女のグループがいました。そして、草むらの砂利道にリムジンが止まり、急ぎ足で降りてきた2人の男性が後部座席のドアを開け、出てきた黒服の女性に手を差し伸べていました。その女性は、私でした」
なんとアイリーンは、喪服に身を包んだ自分を発見したのである。
「“私”を迎えにきた人たちに連れて行かれるのを見ました。“私”は泣き叫んではいなかったものの、気が進まないのか、彼らの導きに抵抗していました。しかし“私”は一歩踏み出し、そして立ち止まりました。2人の男性が“私”を優しく一歩ずつ前に進ませ、ついに“私”も他の人たちの中に加わり、草地に開けられた小さな穴――60センチ四方にも満たない穴――を眺めました」
その穴から故人の姿を見たということなのか。
「“私”は穴を一度見ると背を向け、逃げ出したい様子を見せていたのですが、何か抗えない力によってそこに留められていました。誰かが無限の優しさで地面に置いたような小さな箱があり、私はかがんでそれを見ました。その箱は非常に小さくて軽いようで、手に持ってもほとんど重さを感じていないようでした」
“私”はその小さな箱を手に取っていたという。
「“私”はここで何をしていたのですか? “私”はどこにいたのでしょうか? “私”にとってとても大切なものが入っていたこの小さな箱を、誰が地面に置いたのでしょうか? そのとき私は、涙に濡れて悲しそうな夫の家族の人々の顔を認識しました。(中略)全員がそこにいましたが、夫だけがいませんでした。次の瞬間、箱の中に何が入っているかが分かり、うなだれて私はその場にしゃがみ込みました」
箱の中に入っていたのは夫、バートの遺灰であったということなのか。そうであれば、あまりにも不吉すぎる“ビジョン”であった。
この“ビジョン”が視界から消え、道端にしゃがみ込んでしまったアイリーンはその後数日、体調を崩したという。
アイリーンはこの一件は単なる想像の産物だと自分に言い聞かせようとしたが、生涯忘れられない光景として記憶に刻み込まれたのだった。
年が明けて1926年2月、アイリーンはバンクーバーを発つカナダ太平洋汽船の客船「エンプレス・オブ・カナダ (Empress of Canada) 」に乗船し、夫のいる上海へ向かった。
しかし出航が迫る中、客船にアイリーン宛ての電報が届いたのだった。電報はシカゴに住むバートの家族からのもので、病に伏しているバートの容体が危険な状態にあることを知らせる内容であったのだ。
いったん旅の予定を仕切り直す必要を感じて船を降りたアイリーンは、続けてショッキングな電報を受け取ることになる。なんと夫、バートの訃報であった。
悲劇に打ちひしがれたアイリーンであったが、ジャーナリストとして果たさなければならない仕事に追われていたことも事実であった。バートのことは彼の家族に任せることにして、当座は目の前の仕事に取り組むことになった。
そして夫側の家族のすべての作業が終わった同年5月30日、アイリーンは2人の義理の兄弟とともにリムジンに乗って、初めて訪れるローズヒル墓地へ向かったのだった。
「私たちを乗せた車は街を横切り、墓地の門をくぐって止まりました。男性たちは先に出てきて、私をエスコートしようと待っていました。(中略)足元には春の草が生い茂っていました。そこには若葉で覆われた3本の若木がありました。そこには鉄柵があり、はるか彼方には工場の煙突も見えました」
それは、半年前に見た“ビジョン”の光景であったのだ。そして墓にバートの遺体はなく、遺灰が入った小箱のみがあった。
バートの家族はバートの遺体がないことをアイリーンには伝えていなかったのだが、アイリーンが遺灰しかないことを予め知っていたようで、少し驚かされたという。
そしてアイリーンは自分に何が起こったのか、答えを見つけることは生涯できなかったということだ。
この話題を取り上げた「Anomalien.com」の記事によれば、これらの現象には科学的なものから超常現象まで、さまざまな説明が考えられるという。科学的仮説には量子物理学現象説、パラレルワールド説、タイムスリップ説、脳の不具合説、心理現象説などが挙げられるが、これらの説明はどれも決定打に欠けるものであることは否定できないだろう。
はたしてアイリーンはあの日、半年先の未来を“予見”したのだろうか。当時、現役の敏腕ジャーナリストが体験した超常現象体験だけに、貴重なケーススタディになることは間違いない。
【参考】
https://anomalien.com/traveling-through-time-the-story-of-irene-corbally-kuhn/
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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