フィリピンの吸血鬼「マナナンガル」出現! 伝説の妖怪を少女たちが目撃
フィリピン・セブに伝説的怪物の「マナナンガル」が出現。現地住民を恐怖のドン底に突き落としている。事件発生の経緯とは!?
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風光明媚な常夏の島には“夢を紡ぐ人”たちがいた――。夢にあらわれた女神が映し出す“ビジョン”の数々が伝統の織物に紡がれているのである。
フィリピンで2番目に大きい島であるミンダナオ島で暮らす先住民族のティボリ族は、豊かな伝統文化を代々受け継いでいることで知られる。
そうした伝統工芸のひとつ、色鮮やかで美しい幾何学的な模様が特徴の「タナラック(T’nalak)」と呼ばれる織物は、夢の中で女神とコンタクトした女性たちが目撃した“ビジョン”を織物で再現したものであるという。
タナラックは、バナナに似た植物であるアバカ(マニラ麻)の茎から剥ぎ取った天然繊維から作られている。村ではこのアバカに宿る女神「フー・ダル(Fu Dalu)」が村の女性たちと夢の中でコミュニケーションをとっていると信じられている。
熟練した織物職人の女性は夢で見た“ビジョン”をパターンに落とし込み、まさに“夢を紡ぐ”ようにしてタナラックを織り上げるのである。
1枚のタナラックを織り上げるのに通常3~4カ月かかる。 このプロセスはすべて天然の材料を使用し、完全に手作業で行われる。タナラックの織り手は熟練した女性の織物職人だが、アバカから糸を紡いだりするなどの作業は男性も行う。タナラックの製作は、神聖なアバカの女神を称賛するためのコミュニティによる共同作業ととらえられているのだ。
最も有名なタナラックの織り手の一人、故ラング・デュレイ(1928~2015)を讃えてその名を冠した「ラング・デュレイ タナラック織物センター」はタナラックの主要な生産拠点の1つである。
ラングさんの義理の娘であるセブラン・デュレイさんが同施設のメインの織り手で、ここですでに60年以上、タナラックを織り続けている。
セブランさんによれば、夢を模様に変える能力は神秘的で特殊なスキルと考えられており、誰もが夢を見る一方で、夢を紡ぐことができるのは選ばれた少数の女性だけであるという。
施設のほとんどの若い織工は、ラング・デュレイによって継承されたデザインだけを学び、織っている。ラング・デュレイはティボリの伝説的な王子である「ゲマヤウ・ロギ」からセブ湖の小さなカエルの「ソボブン」まで、それぞれに独自の名前と物語を持つ約100の印象的な柄のパターンを残している。セブランさんのような上級の織り手だけが、自分の夢を織ることができる。
女性たちがタナラックを織る一方、男性たちはアバカを植えて剥ぎ、新しく織った生地を平らにする作業を行っている。
タナラック製作の実践にはいくつかの厳しいタブーが含まれている。たとえばフー・ダルへの敬意の表れとして、女性の機織り職人とその夫は製作工程中に性行為を禁止されていることなどだ。
ティボリ村には約70世帯があり、熟達したタナラックの織り手は約25人、見習いは12人ほどいるという。
フィリピン経済歴史博物館によると、タナラック製造はかつてセブ湖周辺で広く行われていたということで、この由緒ある伝統が徐々に消えつつあることが示唆されている。
そして今の地元の若者たちにはこうした伝統工芸についての知識がなくなってきているということだが、一方でティボリの伝統を守り続けることに尽力している地元住民もいる。
トゥボリ文化大使のマリア・トーディ氏は1995年以来、湖畔のロングハウスで「Lake Sebu School of Living Traditions(セブ湖生活伝統学校)」を運営している。織物職人から教わった機織りに加えて、彼女は地元の子供たちにトゥボリ音楽とダンスを教えているのだ。
トーディ氏はまた、タナラックを含むトゥボリのさまざまな文化的伝統を記録し後世に残す作業にも取り組んでいる。たとえばタナラックはかつて通貨として使用され、結婚式の持参金として牛や水牛の代わりになることさえあったということだ。
さらにトーディ氏はトゥボリ族が急速に現代社会に同化するにつれて、トゥボリの文化も他の多くの伝統と同様にその実用的な価値を失って単なる文化的な象徴になり、今後は忘れ去られる危険にさらされていると説明する。
「私たちが生活伝統学校を設立した理由は、私たちの文化が死んだら私たちの存在も死ぬという事実を受け止めて子供たちを教育し、理解させるためです」(マリア・トーディ氏)
トーディ氏によると、トゥボリの文化は観光客に紹介するだけでなく、今も生きる伝統として家庭でも実践されるべきだと提唱している。いずれにしても伝統文化の継承は多くのケースで難しい問題になっており、意図的な取り組みがなければ消失の危機にさらされてしまうだろう。
何世紀にもわたってトゥボリの女性たちが自分たちの“ビジョン”をどのように具現化してきたのかを物語るこの由緒ある織物は、精神世界の奥深さを体現した貴重な伝統工芸である。夢で見た“ビジョン”に基づいてオリジナルのタナラックを織るセブランさんらは、ミンダナオ島の地で今後どのような夢を紡いでくれるのだろうか。
【参考】
https://www.bbc.com/travel/article/20230328-the-filipino-islanders-who-weave-their-dreams
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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