ウクライナの戦場に現れた「正体不明の黒い影」! 兵士も驚愕したUFO飛来は何かの兆候か!?
劣勢が伝えられるウクライナだが、最前線で飛ばしたドローンが奇怪なUFOの姿を捉えていたという。これは何かの兆候なのか――!?
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毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、火の気のないところで突然人間の体が燃えあがるという、未解明の怪現象を取りあげる。
「人体自然発火」と呼ばれる奇妙な現象がある。
英語では Spontaneous Human Combustion なので、頭文字を並べて「SHC」と略称されることも多い。
人が焼け死ぬということ、それ自体は珍しいものではない。
だが時折、人体が原形を留めないほど完全に燃え尽きているにもかかわらず、周囲の物品がほとんど燃えていないという事例が報告される。
イスラム圏では「ジン」と呼ばれる存在が信じられており、ジンはケガをすると体内から炎が吹きだして燃え尽きるといわれるが、まるでこのジンのように人体そのものが火元となったとしか思えない状況で人が焼死しているのがSHCである。
こうした事例が記録されるのは17世紀以降のことだが、おそらくは古代からこのような現象が起きていたと推定される。
「人体自然発火(SHC)」という呼び名が生まれたのは、1731年に起きた、イタリアのバンディ伯爵夫人焼死事件がきっかけらしい。
コルネリア・ザンゲリ・バンディは、イタリアの貴族フランチェスコ・マリア・ザンゲリ伯爵の子として、1664年にイタリアのロンジアーノで生まれた。長じて、やはり伯爵であるフランチェスコ・バンディと結婚し、バンディ伯爵夫人となった。
彼女は7人の子をもうけたが、そのひとり、アンナ・テレサの子、つまりバンディ伯爵夫人からみれば孫にあたるジョヴァンニ・アンジェロは1775年にローマ教皇ピウス6世となっている。イタリアでもかなりの名門というわけだ。だが、その最期は非常に奇妙なものだった。
死の前夜、もはや老齢となった彼女はブランデーを飲み、節節の痛みを和らげるため自分の身体にもブランデーを振りかけた。肥っているうえ、酔ってしまった彼女をメイドが寝室まで連れていき、メイドは彼女が眠ったのを見届けてから部屋を出た。
翌朝、伯爵夫人がいつもの時間に起きてこなかったので、心配したメイドが部屋まで起こしにいった。すると室内はすすだらけになっており、ベッドから1メートルほどのところに灰の塊が積もっていた。
そこには伯爵夫人の膝から下が靴下をはいたまま残っており、その間に頭蓋骨が半分ほど焼け残っていた。灰の中からは、黒くなった指3本が見つかった。伯爵夫人の肉体は、これらを除いてすべて灰になっていたのだ。
すぐ近くのベッドにはいっさい焼け跡はなく、シーツと毛布がめくれていたことから、伯爵夫人は何らかの理由でベッドを出て歩きはじめたところで、燃えてしまったらしい。
人間の肉体を完全に灰にするには、かなりの高温である程度時間をかけて燃やす必要があるはずだが、バンディ伯爵夫人の例も含め、SHCの場合、近くにある家具や、時には燃えやすい新聞や犠牲者が着ていた衣服、座っていた椅子でさえ、焼け跡がないまま残っていたりする。また、脚の先など身体の一部のみが燃え残っていることも多い。
いわゆる超常現象に分類される現象の中では比較的報告が多く、過去300年ほどの間に200件ほどが報告されているという。おそらく、通常の焼死として片づけられている事例もかなりあると思われるから、実際にはもっと多発しているだろう。
また、チャールズ・ディケンズやハーマン・メルヴィル、エミール・ゾラといった各国の文豪もこの題材を取りあげており、その意味でもかなり知られた現象である。
SHCは、医学や生理学、化学的な見地からも研究が行われているが、いまだに明確な説明が得られていない現象でもある。
SHCの犠牲者には、日ごろ酒類をたしなむ者やアルコール依存症の者が多いとして、体内にアルコールが染みわたって身体そのものが燃えやすくなっていたところへ、タバコなど何らかの原因で火が点いたという説も唱えられたこともあるが、最早そんな見解を信じる者はいないだろう。
犠牲者には老人も多く、じつは何らかの原因で自然死した後、近くのタバコやロウソクなどの火が燃え移り、死体を燃やしたとの説明がなされることもある。
あるいは、老人や酔っ払いであれば、衣服に火が点いても迅速に適切な対応ができず、そのまま火に包まれたのだともいわれる。
こうした説を唱える者は、遺体が灰になるまで燃焼している理由として、キャンドル効果というものを挙げる。
つまり、衣服に火が点いて皮膚が焼かれると、皮下脂肪が染みだして衣服の繊維に吸収される。すると、芯を通じてロウソクが燃えるように、じわじわと皮下脂肪が燃え、その熱で身体全体を焼き尽くすというのだ。
周辺の家具に被害がない点については、このような場合、炎は比較的小さく、上に燃え広がるため周囲に広がらないのだと説明される。
他方、目撃者の目の前で人間が燃えあがるという事例もいくつもあり、こうしたケースはこの説では説明できない。
たとえば1938年8月27日、イギリスのエセックス州チェルムスフォードの舞踏会で婚約者と踊っていたフィリス・ニューカムという女性は、突然炎に包まれ、数時間後に死亡した。
1967年9月13日、イギリスでロバート・フランシス・ベイリーが焼死した現場では、消防士が犠牲者の腹の裂け目から青い炎が勢いよく吹きだしているのを目撃しているし、1982年9月、やはりイギリスで起きたジーン・ルシールの場合、彼女が口から炎を吹きだすのが目撃されている。
こうした事例を見ると、やはり人間の体内で何らかの発火現象が起きているのではないかと考えざるを得ない。このような場合、吹きだした炎の色は「青い」と形容されることが多く、奇妙な発火事件を運よく生き延びた人々は、不思議なことに熱さをいっさい感じなかったと述べている。
では、どのようなメカニズムで人間の体内から火が出るのだろう。
この点に関しては、さまざまな仮説が提唱されている。
まずは、人間の体内で生成される何らかの物質が原因とする説がある。
可燃性のアセトンやジフォスフェン、クレアチン酸などという物質が体内で過剰生産されるという説もあるが、たとえ体内にこうした可燃性物質が蓄積されたとしても、何らかの火種、それに充分な酸素がないと激しく燃えあがるとは考えられない。
SHCを研究してきたラリー・アーノルドは、「パイロトロン」という超微小高エネルギー粒子なるものを提唱し、パイロトロンが人体を構成するクオークと衝突することで、瞬間的に非常なエネルギーを生みだすのではないかとも述べているが、もちろんこのパイロトロンなる粒子の存在は確認されていない。
人間が持つ思念の力に原因を求める説もある。
サイコキネシスの中でも、火を起こす能力は「パイロキネシス」と呼ばれ、横山光輝の漫画『バビル二世』や宮部みゆきの短編小説『燔祭』、それを基にした長編小説の『クロスファイア』など、SFの世界ではかなりおなじみの能力であるが、現実にもいくつか報告がある。
1886年、ウィリー・ブロウという少年は、見たものに火を点けることができるとして、実際に教師の衣服を燃やしたという。透視や念写で有名な日本の三田光一も、念ずるだけでマッチ棒を燃やしたことがあるというし、旧ソ連の超能力者ニーナ・クラギーナもまた、自らの発する念力で誤って自分の服に火を点けたことがあるという。
ポルターガイスト現象においても、しばしば謎の発火現象が見られる。
ただ、こうした現実の事例では、発火したのは衣服やマッチ棒など、火の点きやすい物品ばかりであり、『クロスファイア』の主人公のように、人間を灰にするほどのものではない。
さらにSHCについては、地球の磁場や月の位相、さらにレイラインの影響が関連すると考える者もいる。
前述したラリー・アーノルドは、SHCは地磁気のレベルが高いときや新月のときに発生しやすいとし、またレイラインの中には、炎を起こしやすい特殊なパワーを持つ線も存在すると述べている。彼はこの特殊なラインのことを「ファイアーライン」と命名した。
ほかにも球電によるとする説、UFOと関連させる説、体内で強力な電流が発生するためとする説などがあるが、いずれも決め手にはなっていない。
他方、球電説については、ある女性が突然居間で炎に包まれたとき、奇妙な火の玉が室内で目撃された例もあるので、一部のSHCについては球電が原因となっている可能性も残る。
もしかしたら、一口にSHCといっても、その原因はすべてが同一ということではなく、それぞれのケースに応じて個別の説明が求められるべきなのかもしれない。
●参考資料=『謎 戦慄の人体発火現象』(ラリー・アーノルド著/二見書房)、『オカルト探偵ニッケル博士の不思議事件簿』(ジョー・ニッケル、ジョン・フィッシャー著/東京書籍)、『世界不思議百科』(コリン・ウィルソン、ダモン・ウィルソン著/青土社)/他
(月刊ムー2021年4月号掲載)
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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