ビッグバンはホワイトホールだった!! /MUTube&特集紹介  2025年12月号

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    ブラックホールはすべてのものを吸い込み、光さえも脱出することはできないといわれている。ところが、新たなシミュレーションによってブラックホールがホワイトホールに変化する可能性があることがわかった。そして、ビッグバンもホワイトホールだったのではないかというのだ! この記事を三上編集長がMUTubeで解説。

    ワームホールは存在する?

     ワープ航法は、数百光年、数万光年の距離を一気に縮め、宇宙を庭のように駆け巡ることができる夢の技術だ。光速の壁を打ち破るワープ航法にはいくつもの理論があり、ロマンに溢れているが、その中で一番有名なものがブラックホールを入り口としてワームホールというトンネルを通過、ホワイトホールを出口とするワームホール航法だろう。
     これまでワームホールはあくまで理論でしかなかったが、どうも量子もつれとそれに伴う量子テレポーテーションがワームホールではないかという新説が登場した。それが間違いないのなら、私たちはすでにワープの基礎技術を手にしており、量子コンピューターはテレポーテーションマシンとしての可能性を秘めていることになる。星間移動も可能になる?
     2022年11月30日、ハーバード大学などの研究チームは「ネイチャー」に「Traversable wormhole dynamics on a quantum processor= 量子プロセッサ上の通過可能なワームホールダイナミクス」を発表した。グーグルの量子コンピューターチップ「シカモア(Sycamore)」を利用し、ワームホールのシミュレーションを行ったが、研究チームの実験は「ワームホールと量子テレポーテーションの等価性」を検証するもので、ワームホールと量子テレポーテーションは同じものだというのだ。
     検証に使われた量子コンピューターチップ「シカモア」は従来のコンピューターで1万年かかる計算を200秒で行い、グーグルは困難だった量子超越性(量子コンピューターが古典コンピューターより圧倒的に速い計算能力を持つ)を達成したとされる(ただし疑う向きも多い)。「シカモア」で量子もつれを使った量子テレポーテーションのシミュレーションを行い、それがワームホールとして機能することを証明したのだという。

    時空を渡るアインシュタイン・ローゼン・ブリッジ

     ワームホールは理論上存在する時空の穴だ。最初のアイデアを提供したのはドイツの数学者ヘルマン・ワイルといわれている。理論上では、空間と別の空間をつなぐことが可能なことを証明した。
     さらにアルベルト・アインシュタインとネイサン・ローゼンは一般相対性理論から「アインシュタイン・ローゼン・ブリッジ」を導いた。アインシュタインはブラックホールのように物理法則が及ばない特異点を嫌った。なぜなら数学的に存在するならともかく、物理学で特異点を認めると宇宙に無限大の質量を持つ、物理法則が及ばない空間=特異点が実在することになるからだ。それは直観的に受け入れがたいとアインシュタインは考えた。
     特異点を回避する方法として彼らが考えたのが、空間の歪みが重力で一点に集約していくのではなく、別の空間につながることで特異点が回避できる「アインシュタイン・ローゼン・ブリッジ」だった。
     特異点が発生する解はシュバルツシルト解と呼ばれ、特異点は通常の空間を分けるシュバルツシルト半径上に相対する2点が求められる。そこで、このふたつの特異点をつないでしまえば特異点は消えてしまうというのがアインシュタインとローゼンのアイデアだった。
     これは一種のブラックホール(当時、まだこの名称は生まれていない)で、ワームホールの概念でもある。無限の質量で空間が曲がると、曲がった空間同士がつながってしまうのだ。ブラックホールの中は特異点なので宇宙法則が通用しないが、ブラックホール同士をつないでしまえばシュバルツシルト半径のトンネルで空間同士がつながり、特異点はトンネルの壁(あくまで概念であり、トンネルの長さは無限小だ)になってしまう。数学上、特異点は存在しなくなるわけだ。
     とはいえ、特異点で形成されたトンネルを作ることで特異点を消すというのは数学上でも無理があるようで、後年、ブラックホールの概念が登場してから再計算を行うと、トンネルが維持できず形成と同時にワームホールは閉じて特異点に戻ってしまうことがわかった。
     最新の量子論である量子重力理論では、ワームホールは常に存在すると考える。ただしブラックホールのような巨大なものではなく、もっとも小さな量子の世界、プランクスケールの世界での話だ。
     プランクスケールは宇宙にある時間や空間が維持できる限界のスケールの世界で、それより小さくなると量子は特異点になってしまう。
     先の研究チームのシミュレーション実験のもとになっているのは、量子重力理論だ。量子重力理論では、ワームホールはプランクスケール以下の特異点で常に発生している。というよりも量子の世界はワームホールですべてつながっている。なぜならそこは特異点であり、時空がないからだ。アインシュタイン・ローゼン・ブリッジは空間の2点がブラックホールで結ばれるというものだが、量子重力理論では宇宙にあるすべての物質がプランクスケールではワームホールでつながっているとされる。
     研究チームは、この量子重力理論が本当で、すべてがワームホールでつながっているのなら、量子もつれを使った量子テレポーテーションもワームホールの原理で情報が超光速で移動するのではないかという仮説を立てた。

    (文=久野友萬)

    続きは本誌(電子版)で。

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    webムー編集部

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