耳に残る歌と強烈パンチ!「ドーバーデーモン」/ダンダダン考察ファイル

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    1977年、少年たちの前に2日連続で姿を現した奇妙な生物。「ダンダダン」でも強烈なインパクトを残したドーバーデーモンとは何なのか。

     龍幸伸によるオカルティックバトル&青春物語「ダンダダン」。幽霊や妖怪、宇宙人、UMAなどの怪異を題材にしながら、高校生たちの青春と成長を描く物語である。幽霊を信じる女子高生・綾瀬桃と、宇宙人を信じる男子高生・高倉健の出会いを起点に、2人は次々と超常現象に巻き込まれていく。

     繊細でありながらダイナミックな作画と圧倒的なスピード感、そしてホラーとギャグ、そしてアクションの融合も注目を浴びたポイントであるが、さらに本作は作中に登場する怪異の多くが実在の都市伝説や民間伝承、事件に基づいており、オカルトファンに対しても訴求力が高い。現代の感性と古典的な超常現象が見事に融合した、異色かつ中毒性の高い作品である。               

    クセ強ソングを披露「ドーバーデーモン」

    「ダンダダン」には、現実世界で語り継がれてきたさまざまな未確認生物(UMA)が登場する。その中でも読者の目を惹きつけたキャラクターの一体が、「ドーバーデーモン」だ。アニメ版ではエピソード8の「なんかモヤモヤするんじゃよ」の後半から登場したドーバーデーモン。セルポ星人のギグワーカーという設定で登場するドーバーデーモンは、シャコのように水中で強力なパンチを繰り出すことから、作中では通称”シャコ星人”と呼ばれている。

     ムキムキなボディ、手にはグローブ、そして「チキチータ~ ユメナイカ~」と、一度聴いたら頭から離れなくなる歌を口ずさみながら登場するシャコ星人。セルポ星人に栄養剤を注入されると、まるでウルトラマンに登場するバルタン星人のような姿に変身して、攻撃力もパワーアップする。何故か「ビジネスマ~ン ビジネスマ~ン」と、栄養ドリンク・リゲインのCMソングを口ずさみながら攻撃を仕掛けてくるのだ。

     そんな強烈な印象を残したドーバーデーモンとは、一体何者なのだろうか?

     記録に残るこの怪人は、「ダンダダン」でのパワフルでコミカルなキャラクターとは異なり、異様で繊細なヒューマノイドなのである。

    少年たちの前に現れた謎の存在

     事件は1977年4月21日、アメリカ・マサチューセッツ州の閑静な町、ドーバーで発生した。最初の目撃者は17歳のウィリアム・バートレット。彼は友人2人と共に車で夜道を走行中、石垣の上を這って歩く奇妙な生き物を目撃したという。それは異様に手足が長くて小柄で体毛がなく、肌はザラザラしており、目はガラス玉のようで橙色に光っていた。体長は1~1.2メートルほどで、細い身体に不釣り合いな巨大な頭部、そして目以外は顔に口も鼻もないという、なんとも不気味な容姿である。

     謎の生物の目撃情報はこれだけでは終わらない。同じ日の夜、近隣に住む15歳の少年ジョン・バクスターが、恋人の家から帰宅する途中の道で同様の生物を目撃していたのである。そして翌日には、アビー・ブラバムという少女が類似の生物を目撃。そしてこの謎の生命体は目撃者によってスケッチが描かれ、町の名前にちなんで「ドーバーデーモン」と呼ばれるようになった。

     2日間で4人以上の若者がこのドーバーデーモンを目撃したが、それ以降は姿を現すことはなかったという。ビッグフットやネッシーのように継続的に目撃される存在と異なり、UMAの中でも極めて稀なパターンである。

    正体は動物か? それとも異星からの訪問者か?

     このドーバーデーモンの正体について、一部では迷子になったヘラジカの子供ではないかという説が語られている。ところが、目撃された時期はヘラジカの子供が生まれるシーズンにはまだ早かったこと、また目撃された場所はヘラジカの生息地からかけ離れているということから、懐疑的な意見も多いようだ。他にも、犬、突然変異した野生動物、ペットのテナガザルが逃げ出した説、ティーンエージャーたちのいたずらなど、さまざまな可能性が挙げられている。

     中には、アメリカやカナダに住む先住民族・オジブワ族に伝わる半人半獣の生物「マンネギシ」が現れたのではないかという意見も。また、グレイタイプの宇宙人との類似点もいくつかあることから、この生物の起源は地球外なのではないかとも言われている。

     さまざまな説が挙げられているが、2日間だけ目撃されたドーバーデーモンの正体は今日に至るまで解明できていない。ドーバーの町に現れた謎の生物、それは人類への警告として出現したのか、あるいは単なる偶発的接触だったのか。真実はいまだ霧の中にある。

     1977年以来目撃されていないドーバーデーモン、また突然「チキチータ~ ユメナイカ~」と歌いながら我々の世界に現れる日が来るかもしれない。

    webムー編集部

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