「悪夢は健康を推進する」研究報告が話題! 一方で「深刻な健康被害」報告も… 世界で悪夢研究が活発化

文=webムー編集部

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    殺人鬼に追われたりゾンビに襲われたりと、さまざまなかたちで見る「悪夢」。恐ろしいことに変わりはないが、なんと「健康促進」につながるという驚くべき主張が展開されている。

    恐怖体験後に炎症レベルが正常値に

     筋金入りのホラー映画好きでも、就寝中まで恐ろしい光景を味わいたいとは思わないだろう。誰もが「悪夢」に対する忌避感を抱いているはずだが、じつは人体にとって“有益”なのかもしれない。デンマーク・オーフス大学の研究者たちから、「悪夢が健康を促進する」という報告がもたらされたのだ。

     海外メディアの報道によると、研究者たちは恐怖を誘発する活動と免疫システムの関連性を調査。自らの意思で見ることができない悪夢の代わりとして「お化け屋敷」を用意し、被験者22人に約50分間、そこで過ごすよう指定した。

    お化け屋敷の様子 画像は「ScienceDirect」より引用

     お化け屋敷は無気味なピエロやゾンビ、チェーンソーを持った役者だらけの環境だったというが、驚くべきことに参加者の80%以上で炎症マーカーの減少を確認。ほぼ半数の被験者の数値が正常レベルに戻っていたほどで、アドレナリンとエンドルフィンの急増を特徴とする「ランナーズハイ」に似た生理的反応を引き起こしていたという。さらに、91人のボランティアが参加した大規模な調査でも、同様の悪夢的体験後に顕著な変化が起きたと報告されている。

     恐怖体験が健康に有益とはにわかに信じがたいが、動物実験では恐怖が闘争・逃走反応を司るアドレナリン系を刺激し、免疫系が傷害や感染に備えることがわかっている。研究者らは「急性の恐怖」は寒さに晒されることで誘発されるストレス反応と同様に、体の防御機構を活性化させる可能性があると理論づけたのだ。

     お化け屋敷にいた参加者たちは中程度から高レベルの恐怖が持続し、心拍数は平均112回/分だったと報告。調査で見られた生理的反応は、アスリートが炎症を抑制するために用いる「冷水浸漬法」と同様の効果を反映しているとも指摘した。

     一方で研究者たちは、恐怖が抗炎症作用を引き起こす役割についてさらなる確認が必要だと訴えている。生理的反応の持続期間を探るための研究を提唱しており、“娯楽としての恐怖”が新たな健康戦略として位置づけられる可能性もあるという。

    悪夢が要因となって死に至ることも

    イメージ画像:「Adobe Stock」

     悪夢の話題といえば、「悪夢がもたらす現実の死」にまつわるニュースを先日お伝えしたばかり。夢の中で殺人鬼に追われるような場合は闘争・逃走反応が働き、アドレナリンやコルチゾールなどの化学物質が大量に放出される点についても触れている。

     しかし、アドレナリンの大量放出は脈拍数が高まりリラックスすることができず、他の臓器にもダメージを与えてしまう。つまり、悪夢が現実の死に直結するわけではないものの、心臓病などの健康リスクを抱えている場合、悪夢が間接的な要因となって(稀にだが)死に至るケースがあるというのだ。

     悪夢で死ぬ可能性があるという主張から間を置かず、健康促進という真逆の内容で注目を集めた今回の研究報告。一体どっちなのかと疑問を抱かずにはいられないが、悪夢研究が盛んになっている状況は、脳のメカニズムを解明する上でも注目すべき傾向と捉えるべきだろう。

    【参考】
    https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0889159124006780

    webムー編集部

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