獣人ヤフー、地下ペンタゴン、正体不明の民族…! 未知の宝庫・米アパラチア山脈のミステリー/ブレント・スワンサー
ミステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!
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ステリー分野で世界的な知名度を誇る伝説的ライター、ブレント・スワンサーが「日本人がまだ知らない世界の謎」をお届け!
超常現象研究者の中には、良くも悪くも他の研究者よりもはるかに有名な人たちがいる。例えば、ウォーレン夫妻は、多くの批判にもかかわらず非常に人気がある。このレベルに確実に近づいているもう一人の研究者が、ハンス・ホルツァー(1909〜2003)だ。
故オーストリア系アメリカ人の作家で超心理学者だったホルツァーは、悪名高い「アミティヴィル・ホラー」をはじめ、世界中で数え切れないほどの事件を調査し、超常現象に関する120冊もの本を執筆した。多くの懐疑論者さえ魅了し、超常現象研究の大物の一人として広く認められており、その作品は古典的とみなされている。彼が取り上げた数多くの超常現象や超能力、心霊スポット等のなかでも、とりわけ奇妙でユニークなものが、19世紀末にイリノイ州の農家を苦しめた悪魔的存在に関する事件だ。
この奇妙な物語の舞台は、レモントという長閑な田舎町だ。そこは誰もが顔見知りで、犯罪もなく、平凡であまり面白いことも起こらない農村だった。ところが1901年の秋のある日、ウィルマンス一家が静かな夕食をとっていると、突然どこからともなく何かがテーブルの真ん中に落ちてきた。驚いた父親が身を乗り出すと、それは手紙だった。
父親が警戒しながらその手紙を拾い上げると、そこにはごちゃごちゃしてスペルミスの多い筆跡で次のような警告が書き殴られていた。
「10日以内に家を出なければ、重大な結果を招く」
誰がこの脅迫状を書いたのか、ましてやどうやって突然そこに現れたのか、また、もしも警告に従わなければどうなるのか、なにもかも不明だった。家族全員が怯えたが、父親はただ燃やして忘れようと決めた。しかし、これはおそらく間違いだった。
決められた10日間が過ぎ、11日目のこと。家族は自分たちになにか恐ろしいことが起こるのではないかと戦々恐々としていた。すると、死や怪我などの災難ではなく、脅威は手紙という形で現れた。次から次へと、どこからともなく手紙が現れるようになったのだ。その内容は一通目よりも悪質で、攻撃的で、下品な言葉になっていた。さらに不吉だったのは、手紙には誰も知るはずのない個人情報が書かれており、その情報を使って恐怖におののく家族を嘲笑う内容だったことだ。
時を同じくして、ウィルマンス一家を奇妙な現象が悩ませ始めた。飼い犬が理由もなく隅にうずくまったり、自分だけに見える何かを見つめて吠えたり、時には野生動物がそこにいるかのように襲いかかる素振りを見せることさえあった。特に状況が悪化したのは、手紙が届いたときだ。飼い犬が必ずと言っていいほどパニックに陥るため、異常行動で手紙の出現を予測できるほどにまでになった。
さらに、一家ではさまざまなポルターガイスト現象も起きるようになった。物が勝手に動いたり、消えて別の場所に現れたり、電気がついたり消えたり、ボロボロに破れた服が庭に落ちていることもあったた。ある時、妻はバターの中に指を突っ込んだような跡があることに気づいた。さらに奇妙だったのは、息子と父親が牛の乳を搾っているときにペール缶を覗くと、すでにチーズが固まっていたことだ。また、見慣れない黒猫が敷地内に現れ、彼らを見つめるようになった。追い払おうとしても猫は必ず戻ってきたし、手紙も届き続けていた。
困り果てた一家は、自分たちが邪悪な超自然的力に翻弄されているのではないかと疑い、地元のウェスタープ神父に連絡を取った。突然現れる手紙、ポルターガイスト、そして謎の黒猫を目の当たりにした神父は、これらは悪魔の仕業であり、悪魔払いこそが最善の策であると確信。そして、もう一人の神父に助けを求め、祈りと聖水ですべての部屋を清めた。すると3日間、超常現象は止んだ。一家は、ついに悪魔から解放されたと信じたが、それは早計だった。
またしても、手紙は現れた。そこには、実際に行われた悪魔祓いを嘲笑したり、神父のアドバイスを容赦なく馬鹿にする内容が記されていた。一家は、家の中から紙や筆記用具をすべて排除すれば手紙が現れなくなるかもしれないと考えたが、やがて木片や衣類にもメッセージが書き込まれるようになった。そこには、すべて哀れで無駄な努力だと記されていた。
最終的に一家は引っ越し、邪悪な存在に悩まされることはなくなった。彼らを恐怖に陥れたものが何であったかは不明だ。子供たちの悪ふざけに過ぎないとする説や、何者かが不動産の価値を下げるために計画した狂気の計画だったとする説もある。しかし、これでは手紙が空中から現れたことやポルターガイスト現象は説明できない。やはり、牧師が言ったように悪魔の仕業か、それとも幽霊だったのか。目撃者はとうの昔にいなくなり、この事件はほとんど忘れ去られ、ホルツァーの作品の中に埋もれてしまった。不吉な手紙を書いた存在の正体と目的については、今では想像することしかできない。
Brent Swancer(ブレント・スワンサー)
豪ミステリーサイト「Mysterious Universe」をはじめ数々の海外メディアに寄稿する世界的ライター。人気YouTubeチャンネルの脚本、米国の有名ラジオ番組「Coast to Coast」への出演など、多方面で活躍。あらゆる“普通ではない”事象について調査・執筆・ディスカッションを重ねる情熱と好奇心を持ちあわせる。日本在住25年。『ムー』への寄稿は日本メディアで初となる。
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