昆虫食で育てた家畜や魚に奇跡の変化! 革命的長寿薬の発見につながる可能性
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一部の科学者は、我々がもうすぐ加齢から開放される“脱出速度”に到達すると信じている。しかもそれは若返りのプロセスへと移行し、ついに永遠の命の獲得へと至るというのだ――!
地球の重力から自由の身になるためには、脱出速度(escape velocity)を超える移動速度に到達しなければならない。地表では秒速11.2キロメートル以上でこれが可能になるのだが、重力ではなく、加齢から自由になれる脱出速度があるのだろうか。
医学界では、最近になって「寿命脱出速度(longevity escape velocity、LEV)」という概念が議題にのぼることが増えてきている。寿命脱出速度とはその名の通り、加齢に伴う寿命から自由の身になれる脱出速度のことである。そして、一部の研究者は2030年までには我々人類は寿命脱出速度に達すると主張している。
これまでの1歳の加齢が、医療技術の1年間の進歩による1歳の若返りが実現することで相殺され、さらにその直後から加齢がマイナスに転じて人間が不老不死になる日がすぐそこまで来ているというのだ。
長寿研究者のオーブリー・デ・グレイ氏は、寿命脱出速度という用語の創始者の一人であり、最も熱心な支持者の一人でもあるが、このLEVのバラ色の最良シナリオが2030年代のある時期で起きると説明している。
「老化は悪いことだと誰もが知っていて、誰もが悪いことだと言っているが、誰もそれについて何もしない」と、デ・グレイ氏は昨年10月初旬の声明で述べている。
「悪天候のように、人々は努力しても何もできないという思い込みにとらわれている。私たちはその思い込みを捨て去りたいと思った」(デ・グレイ氏)
一方、未来学者のレイ・カーツワイル氏の見込みはさらに近く、LEVへの到達は2028年か2029 年になると示唆し、それ以降は加齢が逆行して若返ることになると語っている。
そして現在、ますます多くのアンチエイジング研究の先駆者たちが、今後の科学研究は細胞レベルで生物学的老化のプロセスを逆転させることに重点を置くべきだと呼びかけている。
米ハーバード大学の遺伝学者ジョージ・チャーチ氏は、(もう少し控えめに)我々が生きている間にLEVに到達するかもしれないという考えを述べ、また「Longevity Vision Fund(長寿ビジョン基金)」の戦略責任者であるソウラブ・シンハ氏は、適切な投資を行えば数十年以内にLEVが実現可能になるかもしれないと示唆している。彼らが語るように、我々が不老不死になる未来はすぐそこまで来ているのだろうか。
長寿医療技術開発のスタートアップ企業「Gero」は先日、最も一般的な加齢関連疾患のいくつかに対する新しい治療法を見つけるために600万ドルを調達して「大規模健康モデル(Large Health Model)」を開発したことを発表した。
これを受けて未来学者で哲学者のニック・ボストロム氏は、年を重ねるにつれて人々がより健康に暮らせるように努めることは、私たちの道徳的義務であり、またそうあるべきだと考えている。同氏は近い将来の人間が15歳の子供のような状態で、きわめて長い間、おそらく1000年ほど生き延びる未来を思い描いているのだ。
ボストロム氏は、我々が本当に必要としているのは、医療技術の開発と新薬の発見を推進する高性能AI(人工知能)だと語る。製薬会社はすでにAIを使ってよりよい治療法を特定する方法を模索しているが、ボストロム氏はさらに先を見据え、コンピュータが生物学の難問を完全に解決できる日を予想している。
AIが老化に伴うあらゆる病気に対する究極の治療法を特定できれば、人類の「無期限寿命(indefinite lifespan)」が実現できるとボストロム氏は期待している。
しかし、社会がこのような急激な変化にどのように対処するかは、未解決の問題である。
「これは人間社会の多くの事柄の完全な変革となるため、そのような世界での生活がどのようなものになるのか、詳細かつ具体的なイメージを描くのは本当に難しくなる」とボストロム氏は言及する。
ボストロム氏は「無期限寿命」が社会に及ぼす影響を指摘しているが、LEVの実現に疑問を呈する専門家も少なくない。
世界で最も大規模かつ最も厳密な百歳以上の高齢者の研究を行っている科学者、トーマス・パールズ氏は、加齢に伴う病気を予防しようとするのは立派な大義だが、長寿脱出速度が永遠の命を与えてくれるという考えは時代錯誤で的外れであると述べている。
「もちろん、これらの億万長者たちは、十分な資金を投じれば特定の問題は解決することを理解しています」とパールズ氏は米ウェブメディア「Insider」の取材に答える。
「私たちは人々の平均寿命を少しでも延ばすため、老化関連疾患を遅らせたり、それを回避するためにできることをしたいと思っています。しかし、これらが永遠に生きるという考えにつながるとは思いません」(パールズ氏)
同氏は永遠の命を追求する前に、健康寿命を延ばすことが先であるとし「健康寿命にこだわり続けましょう」と自説を結論づけている。
不老不死に近づくLEVの試みはバラ色の未来を描くかもしれないが、長寿の秘密はまだまだ謎だらけであることも確かだ。長寿医療の研究開発は今のところはややビジネスと投資が先行してしまっているのかもしれない。それでも不老不死の追及は抗えない人間の永遠のテーマの一つなのだろう。まずは、今後5~6年の間に長寿研究がどこまで進むことになるのか注目していきたい。
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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