勝手に転がり、震える「ベッツ家の謎の球体」とは? 50年を経ても続くミステリー

文=仲田しんじ

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    1974年に米フロリダ州の家族が発見した金属球は、その後「ベッツ家の謎の球体」と呼ばれ、さまざまな憶測と“陰謀論”を引き起こしてメディアの注目を集めた。勝手に転がりはじめたり振動を発生したりもするというこの謎の金属球の正体とは――。

    「ベッツ家の謎の球体」は地球外由来なのか?

     1974年3月27日、米フロリダ州フォートジョージ島に住むベッツ一家は近くで発生した小規模な山火事の鎮火した現場を見に行った。アントワーヌとジェリーの夫妻とその息子のテリーの3人家族は、そこでボウリングのボールほどの大きさの金属球を見つける。彼らが最初に考えたのは、その球体は大航海時代の艦隊の砲弾ではないかという推測で、ともあれ彼らはその金属球を家に持ち帰ることにした。

     金属球は直径約20センチ、重さは約10キロもあり、最も大きいボウリングのボールよりも重い。

    「ベッツ家の謎の球体」 画像は「Wikipedia」より

     数日後、息子のテリーが家でギターを弾いている時、部屋の片隅に置いてあった金属球がギターの音に反応してドクドクと脈打っているよう見えることに気づいた。

     その後、球体が勝手に転がったり止まったり、方向を変えたりすることが判明した。テリーは興味本位で金属球をハンマーで叩いてみると音が反響し、球体を振ってから床に置くと動き出すことも発見した。

     ベッツ夫妻はこの球体が何度か勝手に動き、家の者を追いかけてくることもあると報告した。結局、彼らは金属球を普段は箱に入れて物置に保管し、友人や親族に見せる時だけ取り出すようにしたのだ。

     この「ベッツ家の謎の球体(Betz Mystery Sphere)」が地元紙「セント・ピーターズバーグ・タイムズ」で紹介されると多くの注目を集め、その正体についてさまざまな憶測を呼ぶことになった。その中にはエイリアンの技術で作られたものだとする見解もあった。

     地元のラジオ番組の司会者であり超常現象研究家でもあるロン・キベット氏は、金属球を取材した最初の人物の一人であり、ラジオ番組で奇抜な自説を展開した。

     キベット氏は「その金属球は地球のものであるはずがない」と断言した上で「宇宙の知性が不透明な目的で作った装置」と説明したのである。

     ジャクソンビルの地元新聞もこの話題にすぐに飛びつき、謎の金属球についていくつかの説明を提供した。

     レポーターであり、後にこの金属球に関するポッドキャスト番組の司会者を務めたリンジー・キルブライド氏によると、この金属球は当時、熱狂的なUFOファンの支持を集めていたという。つまり、金属球は地球外由来であり、UFOかあるいはその一部ではないかというのである。

     こうしてUFOファンや超常現象ファンの期待を膨らませた金属球だったが、米海軍が調査に乗り出したことで風向きが変わりはじめた。米海軍はベッツ家から金属球を2週間預かり、メイポート海軍基地で詳しく検査した。

     当時の報道によると、海軍報道官は金属球はステンレス鋼でできており、それが何なのか、どこから来たのかは分からないと述べたものの、地球由来の物体であることは明言した。

     報道官らは金属球の表面には小さな三角形の欠けがあり、置かれ方によってはバランスが崩れるため、金属球が動き回ったのではないかと主張。動きが続いたのは家屋の床の傾きや凹凸のせいだと説明した。

    「家の構造が原因だと思います。古い石の床がデコボコしています。ボールはほぼ完璧にバランスが取れているので、床が少しへこんでいるだけでボールが動いたり、方向が変わったりします」(米軍報道官)

    画像は「The Sun」の記事より

    アーティストが落とした「ボール逆止弁」の部品なのか?

     こうしてミステリアスな部分が剥ぎ取られてしまった「ベッツ家の謎の球体」であったが、これにはベッツ家も落胆し、彼らは金属球を隠して二度と人々には見せず、それについて何も話さないことを決め込んだ。

     それでも好奇心に駆られたメディアや人々は、ことあるごとにベッツ家の屋敷の前にやって来たという。

    画像は「The Sun」の記事より

     2012年、謎解きで有名な受賞歴のあるポッドキャスト番組「Skeptoid」が「ベッツ家の謎の球体」の謎に挑み、より現実的な回答が導き出された。

     アメリカの作家で同番組プロデューサーのブライアン・ダニング氏が、この金属球はベル・アンド・ハウエル社が製造した「ボール逆止弁(ball check valve)」の部品である可能性が高いことを明らかにしたのだ。

     ダニング氏らは、その大きさ、重量、構成が当時製造されていたものと一致していることを突き止め、ボールが勝手に動くという話はあっても、実際には決して自発的に動いていなかったのだと結論づけた。

     しかしなぜ、ボール逆止弁の部品である金属球がベッツ家の近所にあったのか。

    「Skeptoid」は、当時この付近で彫刻に使用する金属くずを収集していたニューメキシコ州の芸術家、ジェームス・ダーリング・ジョーンズ氏の行動に着目。彼が譲ってもらったボール逆止弁を載せた愛車のフォルクスワーゲンを走らせていたところ、そのいくつかがジャクソンビルの地域で転がり落ちてしまい、そのまま紛失したという。それは1971年の4月頃のことであったということだ。発見されたのは同年3月27日だが、記憶の誤差の範囲内ではあるだろうか。

    「Skeptoid」はこの時に紛失した金属球がベッツ家の近くで発見されたのだと結論づけている。

     こうして金属球の正体がなんとなく浮き彫りになってきたのだが、それでも一部ではまだまだ陰謀論が囁かれている。その中には米海軍が調査した際、球体の“中身”が盗まれたのだと訴える声もあるようだ。その内部には、原子爆弾が仕込まれていたとの説もまことしやかに語られている。

     この先、「ベッツ家の謎の球体」が再び世の注目を浴びることがあるのだろうか。ジャクソンビル地域で複数個紛失した金属球のほかの個体が出てくるようなことがあれば、事態は一気に進展しそうではある。

    【参考】
    https://www.thesun.co.uk/news/25576785/ufo-betz-mystery-sphere-ball-aliens-conspiracy/

    仲田しんじ

    場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
    ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji

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