定義できないUFOへの不可知論的アプローチ/レスリー・キーン「UFOs」プレビュー

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    「UFO現象は国家安全保障上の脅威である」ーーアメリカ政府を動かした“衝撃のUFO証言録”邦訳版をプレビュー公開!

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    UFO問題とアメリカ政府

     私は、最も説得力のある本質的な事実のいくつかを膨大な量の資料から抽出するために最善を尽くした。アメリカでは、UFOはメディアによって報道されて、大衆の関心と多くの目撃があった一九四〇年代後半に国家的な問題になった。冷戦の始まりによって複雑化したこれらの事件への対処において、空軍が主導権を握り、UFOから世間の目をそらすために、多くの事例を可能な限り合理的に説明しようとした。舞台裏では、この話題は最高レベルの重大な関心事であるものの、空軍は、自由に行き来する可能性のある、未知であるが、明らかに現実の現象から国民を守る手段を欠いていた。一九五〇年代初頭、空軍は、市民からの報告を受け、それを調査してメディアや一般大衆に説明するために、ささやかな調査機関であるプロジェクト・ブルーブックを設立した。これは、UFOの目撃を既知の自然現象もしくは人工物として合理的に説明することを目的とした大規模な広報活動として、徐々に固定化していった。

     何百ものファイルが蓄積されたものの、空軍は一九七〇年にプロジェクト・ブルーブックを閉鎖し、多くの衝撃的なUFO事件の説明をすることなく、すべての公式調査を終了した。本書の寄稿者によって提示された事例はすべて、プロジェクト・ブルーブック終了以降の一九七六年から二〇〇七年までの期間のものである。

     私たちの政府はUFO論争から手を引いていて、増大する懸念に対処するための適切な政策をもっていない。歴史的な枠組みのなかで、以下の章では、UFOを既知の現象もしくは人工物として合理的に説明するプロトコル(手順)を確立する上で、中央情報局(CIA)の役割、UFOの取り扱いについてのアメリカ政府と他国政府の対照性、UFO事例に関連する航空安全と国家安全保障の問題、UFO問題をタブー視する心理学、そしてアメリカ政府の隠蔽工作の問題などを検討する。

     アメリカ国民の多くは、証拠が時間とともに増大するにつれて、UFOに関する政府の否定的態度にますます不満を募らせている。UFOの写真は、偽造が容易であるとはいえ、デジタルカメラや携帯電話が今では当たり前になっているため、新しいテクノロジーによる恩恵を受けて、ほぼ毎日撮影されている。太陽系外の惑星が発見され、科学者が宇宙の別の場所で生物存在の可能性を認めるにつれて、無視されてきたUFO現象を研究する必要性が不可欠になっている。本書を読み終える頃には、UFOの謎を解くための新たな希望と、その努力の重要性について、あなたは納得することだろう。

    定義不可能な物の定義:UFOとは何か?

     何らかの物理的な存在を示すデータがあるという理由だけで、私も他の寄稿者もエイリアン(異星人)の宇宙機が私たちの上空を飛んでいると主張しているわけではないことを、最初に明確にしておく。「UFO( Unidentified Flying Objects :未確認飛行物体)」という用語は誤用され、大衆文化の一部になりすぎたため、本来の(そして正確な)定義がほぼ完全に失われている。ほとんどの人が、「UFO」という用語を地球外生物による宇宙機と同一視しているため、この頭字語は、未確認のものではなく、特定されたものを意味するように変容している。UFOを必然的にエイリアンの宇宙機であるとする広範囲にわたる仮定は、この用が誇張されて、混乱を引き起こしている理由である。地球外仮説が有効であるという認識は、証明されていないが、科学的な精査に値する可能性があり、それがすでに証明されたかのようにUFO問題に向き合うことは適切でない。

     歴史的に、約五〇年前、「フライング・ソーサー(空飛ぶ円盤)」というポピュラーでありながら奇妙な表現の代わりに「未確認飛行物体」という用語を考案したのはアメリカ空軍であった。空軍は、「UFO」を「性能、飛行特性、または異常な特徴によって、現在知られている航空機またはミサイルに合致しない、または見慣れた物体として明確に識別できない飛行物体」と定義していた。これは、本書のすべての寄稿者が採用している定義であり、関連するすべての政府文書およびパイロットによる公式報告書で採用されている。

     空中にある物体を特定できないが、それでもデータが多ければ特定できる可能性がある場合、それは本当の意味で未知とは言えない。そのような状況では、それが何であるか、何でないかを判断することはできない。繰り返しになるが、本書が扱っている本物のUFOは、たとえば、レーダーで記録され、複数の適格者によって観察されて、十分なデータが得られていて、既知の技術を超える並外れた性能を示し、他の既知の可能性を排除するために十分な調査が行われている物体を指している。

    「UFO」という用語には付随する夾雑物が非常に多いため、一部の科学者や他の専門家は、真摯な研究をより軽薄なものから分離するために新しい用語を採用している。「UFO」の代わりに、一部の寄稿者は「UAP(Unidentified Aerial Phenomenon/Phenomena:未確認空中現象)」を使用することを選択した。UAPは、単数形と複数形の両方で使用できる。NASAの元上級科学者で航空安全の専門家であるリチャード・F・ヘインズ博士は、UAPを次のように定義している。

    「空中に見られる物体または光としての目撃報告を生じさせる視覚的刺激であって、その外観もしくは航空力学が、従来の航空機を合理的に示唆せず、利用可能なすべての証拠を綿密に精査しても識別されず、技術的識別と常識的識別の両方を行うことができる人物によってまったく識別できないもの」

     本書では、UFOとUAPという用語は本質的に同じ意味で使用されているが、一部の寄稿者はどちらか一方の使用に固執する傾向がある。「UAP」は、たとえば飛行物体ではないように見える可能性のある、おそらくより広範囲の現象を組み込んだ事例を示唆している。いずれを使用しても、「UAP」は、静止または(ヘリコプターのように)ホバリングしていて、飛行していないことがあり、特に夜間に明るい灯火が物理的構造の観察を凌駕する場合は、固形物体ではなく単に異常な光として見られることがある。「UAP」は、これらの異常な物体や光が、さまざまなソースから発生する多くの種類の現象を表している可能性があるという明確さをもっている。

     二番目の根本的に重要な点は、UFOの目撃例のおよそ九〇〜九五パーセントが合理的に説明できるということである。残りの五〜一〇パーセントの範囲で、物体が適切な基準によって本物のUFOであると判断されるのは、それが既知のものではないというだけである。人工物または自然現象か、あるいはまったくのデマが多く知られている。UFOと間違われることがある現象の例としては、気球、熱気球、太陽フレア、編隊飛行する航空機、極秘の軍用機、太陽を反射する鳥、太陽を反射する飛行機、飛行船、ヘリコプター、金星、火星、流星、隕石、宇宙ゴミ、ロケット、ミサイル、人工衛星、幻日、火球、氷の結晶、雲からの反射光、地上の光またはコクピットの窓に反射した光、逆転層、レンズ雲、穴あき雲など、残念ながら枚挙にいとまがない。目撃報告の大部分は通常、右記のいずれかで説明できるが、もちろん、私たちが興味をもっているのは、それらでは説明できない報告である。

    UFO問題への不可知論的アプローチ

     ところで、よく尋ねられる質問に、「あなたはUFOを信じますか?」というものがある。よく訊かれるが、実際には曖昧な問いで、際限のない議論を引き起こす。未確認の空中物体が存在し、アメリカ空軍や世界中の他の政府機関によって公式に記録され、それらがUFOとして定義されていることを私たちは知っているので、その質問には意味がない。五〇年以上の間、未確認飛行物体は現実のものであり、信念や信仰の問題でも、また意見や選択の問題でもなかった。むしろ、UFOの正しい定義を理解すると、それは現実の事柄である。航空機やミサイル、ロケット、その他の人工機器など、従来の識別される物体と同様に、これらの識別されていないものも写真に撮られ、レーダー反射を伴い、地上に痕跡を残し、別々の場所にいる複数の独立した目撃者によって観察および説明されている。信念の面では、その質問者は、「エイリアンの宇宙機を信じますか?」と尋ねているのだろうが、それはまったく別の問題である。UFOに論理的に向き合うためには、その本質や起源に関して不可知論的な立場をとる必要がある。というのは、私たちはまだ答えを知らないからである。私たちは、不可知論者として、大きな一歩を踏み出した。非常に多くの場合、UFOの議論は、どちらかを支持する立場を表す二極性を煽っている。一方で、「信者」は、UFOがエイリアンの乗り物であり、地球外生物が宇宙から地球へ来ていることをすでに知っていると公言し、他方で、「デバンカー(すべてのUFOを合理的に説明できると固執する懐疑論者)」は、UFOなどまったく存在しないという極端な言説を主張している。この対立する論争は、残念ながら長い間、公的な言論界を席巻してきたが、混乱を極め、結局は科学的(不可知論的)アプローチを遠ざけただけであった。

     原則的な懐疑論は、本書の基本的な前提ではある。『アストロフィジカル・ジャーナル』と『ジャーナル・オブ・サイエンティフィック・エクスプラレイション』の元編集者である天体物理学者バーナード・ヘイッシ博士が、真の懐疑論者を「判断を一時保留し、科学的方法論に倣って論理的で冷静な推論に従い、従来の信念に基づく偏見を排し、代替の説明を検討する意欲を示し、証拠を探して、その有効性を注意深く精査する人物」と定義している。本書に提示されている資料を不可知論の視点から、客観的に、公平で真に懐疑的な目で見ていただきたい。

     今、私たちは魅力的な旅に出ることができる。探求と発見の過程で私に大きな影響を与えた最も強力な資料のいくつかを紹介する。その過程で、他の寄稿者と私は読者に次の点で信憑性を検討するように求める。それは私がUFO問題を調べた一〇年間の資料に基づいて書いた本書の終わりで再度考察する。そこでは次の五つの前提が、すべての証拠によって徹底的に評価され、説明されている。

    ①世界中の空には、知的に制御されているように見え、現在の既知の技術を凌駕する機動性(マニューバー)、速度、および発光が可能な固形物体による現象が存在する。
    ②UFOの侵入は、しばしば制限空域において、物体が明白な敵対的な行為を示していなくても、航空
    安全上の危険を引き起こし、国家安全保障上の懸念となる危険性がある。
    ③アメリカ政府は、UFOを恒常的に無視し、国民から圧力をかけられると虚偽の説明をする。その無関心もしくは放置政策は、無責任であり、信頼できる専門家に対して無礼であり、潜在的に危険である。
    ④UFOが地球外または異次元起源であるという仮説は合理的であり、入手しているデータに基づくと、考慮に入れなければならない。しかし、UFOの実際の起源と本質はまだ科学者によって解明されておらず、不明のままである。
    ⑤その潜在的な影響を考えると、得られた証拠は、アメリカ政府の支援と国際協力を含む体系的な科学的研究を必要としている。

     本書を読んでいただけば、聡明な皆さんが、当初思われたのと同じくらい注目に値する、あるいは想像もできないこれらの五つの立場を受け入れるか、少なくとも、もっともらしいと認めるだろうと私は信じている。

    (文=レスリー・キーン)

    「UFOs 世界の軍・政府関係者たちの証言録」
    著/レスリー・キーン、訳/原澤亮
    2100円+税 二見書房
    https://www.futami.co.jp/book/index.php?isbn=9784576220826

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