異星人遭遇者が45年ぶりに記した事実とは? 「パスカグーラ事件」の真実/並木伸一郎・フォーティアンFILE
1973年にアメリカのミシシッピー州で起きた、恐怖のアブダクション・ケース、「パスカグーラ事件」を改めて検証する。
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人気実話怪談師・いたこ28号氏が怪事件?に巻き込まれている。 それはツチノコの魚拓…「蛇拓」をめぐるなんとも不可解な話だった。
実話怪談の草創期から活動する斯界のトッププレイヤー、いたこ28号氏。イベントや動画配信など今も第一線で怪談の発信を続けるいたこ氏だが、現在、当の本人がなんとも奇妙な事案に巻き込まれつつあるという。
親類からツチノコの拓本、魚拓ならぬ「蛇拓」を譲り受けることになったというのだ。いったいどうしてそんな話に……との疑問をいたこ氏本人に尋ねると、「蛇拓」というキャッチーな響きからは想像もつかない、一族を巻き込んだ奇妙で不可解な経緯がみえてきた。
いたこ氏が「蛇拓」の存在を知ったのは今から7、8年ほど前、いたこ氏が年末に帰省したときのことになる。実家での団らんの最中、母方のおばから唐突に「お化けちゃうからあんた興味ないと思うけどな、今うちにツチノコの魚拓あんねん」と打ち明けられたのだという。
持ち主はおばの息子、いたこ氏にとってはいとこにあたるAさんで、ある日の真夜中、Aさんに友人から「ツチノコが死んでるんだけど、お前ほしい?」と電話が入ったのが一連のできごとのすべての発端だった。
Aさんの友人は出先で偶然ツチノコの死骸を発見し、好事家として友人間で有名だったAさんに連絡を入れたのだという。なんでも山奥の滝を訪れた帰り道、道路脇の草むらにツチノコらしきものが死んでいるのが目に入ったのだとか。
純粋にツチノコを見たいという気持ち半分、また「本当にツチノコだったら、死んでいても100万円くらいになるんじゃないか」と思ったAさんは即、その死骸を持ち帰るよう依頼した。本当はすぐにでも引き取りに行きたかったのだが、仕事の関係でその日は断念。
そして数日後、あらためて電話を入れてツチノコ回収に向かう旨を伝えたのだが、友人はいいにくそうに、
「申し訳ないんだけど、あれな、急に腐り始めてものすごく臭くなったもんだから……」
ツチノコの死骸はビニール袋に入れて持ち帰ったのだが、ちょうど前日から急に腐敗が進み、原型をとどめないほどドロドロになってしまった。焼くか埋めるかしようかとも思ったが、あまりに臭いがひどいのでその日の朝、生ゴミとして捨ててしまった、というのだ。
がっかりするというよりも、Aさんはこの時点では「これは友人に担がれた」と思ったのだそうだ。ところが、悪い冗談としていったん話が終わり、Aさんもツチノコの件は忘れかけていた一週間ほど後のこと。再び友人から、またも真夜中に電話が入る。
電話口に、友人はAさんにこんなことを打ち明けた。
ツチノコは捨ててしまったのだが、実は捨てる前に写真を撮っておいた。また、腐りはじめる前日に、趣味の釣りの要領でツチノコに紙をあてて魚拓……ツチノコなので「蛇拓」をとって残してある。
そして、その蛇拓をお前に譲るから、今すぐに引き取りにきてほしい。
この真夜中に「今から引き取りにこい」とは、いくらAさんが物好きといっても尋常の依頼ではない。なにか裏があると感じたAさんが問い詰めると、友人はぽつぽつと一週間のうちに起こったことを語り始めたという。
「蛇拓」をとったのは、ツチノコを捨てる前日。実はツチノコの死骸は蛇拓をとったとたんに急速に腐敗が激しくなり、手の施しようがなくなってしまった。ひょっとすると、蛇拓が腐りだすきっかけになったのかもしれない。そして死骸はゴミに出したが、写真と蛇拓は一緒に捨てるのもはばかられ、手元に残しておいた。
だが、その日以来、どうにもよくないことが立て続いている。
まずは蛇拓をとったその日、自宅内で家具に足をぶつけて指を骨折してしまった。その程度なら不運ではあるが、そこまで珍しい話でもない。だがその数日後、母が原因不明の体調不良を訴えだし、入院することになってしまう。その直後、今度は職人をしている父が仕事中に大怪我を負う。それはベテランと呼べるキャリアの父には考えられない事故だった。
そして極め付けに、自分が車で交通事故を起こしてしまった。母が体調を崩したのはツチノコを捨てた日。自分が交通事故を起こしたのは、あの蛇拓を燃やしてしまおうかと考えた日だった。もう今すぐにでも手放したいのだが、しかしおそろしくて捨てることもできない。どうしようかと悩んでいたのだが、
「それでな、ツチノコ様に聞いたら、お前になら渡してもいいって答えたんだよ」
友人はAさんにそう告げたのだという。
たった一週間で相次ぐ事故、なによりも「ツチノコ様が許した」という友人の言葉に不気味さを覚えつつも、Aさんは魅力に抗えず蛇拓を譲り受けることにした。そこには本当にツチノコだったら蛇拓でもそれなりの値がつくかもしれないとの下心もあったというが、やはりというべきか、今度はAさん一家が立て続けに災難に見舞われることになってしまうのだ。
まずAさん自身が、持病の心疾患が悪化して入退院を繰り返すようになってしまう。さらにAさんの両親が相次いで体調を崩し、ふたりそろって入院。友人の家族から引き続き、偶然にしてはあまりに確率が高すぎる。
そして、ここでさらに奇妙な引き寄せのようなできごとがおこる。蛇拓を譲り受け、家じゅうがそんな状況になっているさなかに、10年以上も音信不通だったAさんの兄がふらっと家に帰ってきたのである。そして、事情を聞くなり「〝先生〟に見てもらおう」と提案したというのだ。
先生……とは、自分が世話になっている師匠だ、と兄はいう。この10年、諸事情で各地の飯場を転々としていたAさんの兄は、いつのまにか霊媒師を目指して修行をしていて、弟子入りのようなかたちで指導を受けたのが「先生」だというのだ。
他に頼るあてもないAさんは、兄に連れられるまま「先生」のもとを訪れる。持参した写真と蛇拓を見るやいなや、その「先生」はこう断言した。
「ツチノコなんてとんでもない。これは、『龍の子』じゃないか!」
こんなものを軽い気持ちで持っていたのならば、それは障りがあって当然だ、と。
ツチノコの写真は、その場で「先生」によってお焚き上げされることになった。蛇拓も同様に処分するよう頼んだのだが、「先生」はしばらく黙考し、「粗末に扱えば障りがあるが、これはご家族で丁寧に祀るのであれば家の守り神になるだろう。こちらで対処できなくもないが、どうされるか」と言った。
結局、Aさんは蛇拓を持ち帰ることにした。「先生」によって整えられた蛇拓は額装して家の一室に飾られ、毎日水を供え、月に何度かは生卵も供えて丁重に祀られることになる。そうしてようやく、Aさん一家に降りかかっていた災難の連鎖は収まったのだという。
その後は凶事というほどのこともなく過ぎていたが、一度だけ、蛇拓をめぐって不思議な出来事が起こっている。それは蛇拓を祀るようになって数年経った頃のこと。
ある晩、リビングで家族とくつろいでいたAさんは、ふと、蛇拓ももうずいぶん拝んだし、そろそろお寺に供養に出してもいいのではないか……というようなことを口にした。ちょっとした思いつきのようなものだったというが、その瞬間、別室からものすごい音が鳴り響いたのだ。
瞬間、Aさん一家は全員が「蛇拓だ」と直感したという。
蛇拓を祀っている部屋に直行したところ、案の定額装された蛇拓が落下し、周囲のものを巻き込んで床一面がひどい有様になっていた。割れたガラスなどが散乱して大変だったが、掃除をすませてみると、当の蛇拓の額だけは傷一つつくこともなくきれいなまま。
やはり、蛇拓は家から出してはいけないのだーー。Aさんはこの時、そう確信したという。
いたこ氏が蛇拓の存在を聞き、譲り受けるという話になるのはさらにこの数年後のことだ。しかし、家から出せないと確信した蛇拓を、いたこ氏が引き取ってもいいものなのか。Aさんは、それについていたこ氏にこう語ったという。
「そこはな、ツチノコ様の許可を得たんだよ」
我が家はもう十分にご利益を得て、これ以上はもらえない。今度はお前に大切に祀ってほしい。Aさんは親族、広い意味では家族の一員でもあるいたこ氏を祭祀の後継者に指名したわけだが……その言葉に裏がないことを願うばかりだ。
ところで、Aさんの友人がツチノコを発見した滝とはどこだったのか。友人の話によれば、そこは和歌山県の某所で、修験者が滝行をおこなうこともある知る人ぞ知る滝だという。そこでAさんが兄にその話をしてみると、なんとAさんの兄もその滝で何度か滝行をおこなったことがあったことが判明した。
Aさんの兄はこの滝で真冬の滝行、いわゆる寒行をおこなったことがきっかけで顔面神経痛を発症してしまい、霊媒師をあきらめることになったのだとか。
編集部でも調査したところ、そこは和歌山県の「野槌の滝」と呼ばれる滝である可能性が高いことがわかった。Aさんの兄の話によると、滝の近辺には今も龍神信仰が残され、近隣の住民はツチノコを目撃することもあるのだとか。ただし、この一帯でもツチノコは「龍の子」とされており、いずれは龍になって昇天するためその死骸がみられることはない、といわれているのだそうだ。そうすると、蛇拓のツチノコはやはり、龍になることなく命を落としてしまった幼龍だった、ということになるのだろうか。
興味深いことに、「野槌の滝」にも近い和歌山県の有田郡周辺は、江戸時代からツチノコや怪蛇の目撃情報が多発しているエリアでもあるのだ。宝暦5年(1755)、紀州在田郡湯浅(現在の和歌山県有田郡湯浅町)で足のある蛇がみつかったことが記録に残されている。また文政6年(1823)には同じく在田郡の山中で、まさにツチノコといった奇妙なかたちの蛇が発見されているのだ。
さらに、滝のすぐ近くを流れる日高川は、歌舞伎の演目「京鹿子娘道成寺」の原型でもある道成寺伝説でしられるところ。男を慕う娘が執念のあまりに大蛇となり相手を取り殺してしまうという、日本でも最も有名な怪蛇物語の伝承地でもある。半径10kmほどのあいだにこれほど「蛇」にまつわる怪異が密集している地域は、全国にもそうないのではないだろうか。
現在、いたこ氏は蛇拓を引き取るべくAさんと連絡をとっているが、コロナ禍などで数年間帰省がかなっていない状況もあり現物はまだ入手できていないという。いたこ氏が正真正銘の蛇拓の継承者となったとき、どんなことがおこるのか……。続報を待ちつつ、引き続き取材を進めていきたい。
鹿角崇彦
古文献リサーチ系ライター。天皇陵からローカルな皇族伝説、天皇が登場するマンガ作品まで天皇にまつわることを全方位的に探求する「ミサンザイ」代表。
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