古代の航空機、南極地図、電球…!? 文明史を覆す”場違いな工芸品”オーパーツの基礎知識/ミステリー入門
世界各地で、その時代、その場所にはありえない、あってはならない遺物が見つかっている。「場違いな工芸品=オーパーツ」と名づけられたそれらの品々は、いつ、だれがつくったのか? 先史文明の痕跡ともいわれる、
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200年前にニュージーランドで発見された「タミルの鐘」。日本でほとんど知られていない、この謎多きオーパーツの詳細とは!?
その時代や場所にそぐわない出土品のことを“Out of Place Artifacts”、略してオーパーツと呼ぶ。「アンティキティラ島の機械」や「クリスタル・スカル」がお馴染みだが、日本でほとんど知られていないが世界的に有名なオーパーツの一つに「タミルの鐘」がある。
1830年代後半、ニュージーランド北島の最北端に位置するノースランド地方ファンガレイ近郊で発見されたタミルの鐘。同地に到着した英国人の宣教師で植物学者ウィリアム・コレンソ(1811~1899)は、先住民であるマオリ族の女性が、奇妙な鍋でジャガイモを茹でていることに気づいた。
高さ約16cm、直径約15cmの鍋を詳しく調べてみると、表面に古いタミル語の文字がエンボス加工されている。そのことから、鍋は500年ほど前に南インドで栄えたタミル人の王朝である後期パンディア朝に関連するものと考えられた。しかし、これまでタミル人とマオリ族の間で交易が行われていた記録は存在しない。それどころか、当時のマオリ族は青銅の加工技術を持たないうえ、同地に足を踏み入れた最初の外国人はコレンソその人だったとされる。
では、いったいなぜマオリ族がタミル人に由来する品物を所持しているのか? コレンソが女性に尋ねると、この鍋は祖先が嵐で倒れた木の根元から見つけたもので、何世代にもわたり受け継がれてきたものだと言う。これはただの鍋ではない――すでに確信していたコレンソは、交渉の末に持参していた鉄鍋と交換してもらうことに成功。以来、生涯にわたり宝物として手元に置いていた。
コレンソの手に渡って以降、さまざまな角度から鍋の分析が行われた。そして、表面にエンボス加工された古タミル語の文字は「Mukaiyyatīṉ vakkucu uṭaiya kappal uṭaiya maṇi」で、(諸説あるものの)英語に訳すと「Mohoyiden Buks ship’s bell(モハイディーン・バフシュの船の鐘)」となり、これが鍋ではなく(おそらくは船に搭載するための)鐘であることまでは判明している。しかし、この「モハイディーン・バフシュ」が船の持ち主を示しているのか、それとも船自体の名前なのか今も不明だ。
もちろん、タミルの鐘がそもそもどのようにして南インドからマオリ族の元へとやって来たのか、最大の謎も依然として謎のままである。実は1000年ほど前からタミル人たちがニュージーランドに進出していた、貿易船が難波して海に落ちた鐘がニュージーランドへと流れ着いた、そもそも鐘の大きさはジャガイモを茹でるために十分ではなく、コレンソは最初から嘘をついていたのではないか――などさまざまな説が唱えられているが、どれも憶測の域を出ていない。
1899年にコレンソがこの世を去ってから、タミルの鐘はニュージーランド国立博物館テ・パパ・トンガレワに寄贈され、現在に至るまで同館が保管するとともに、100年以上にわたり多くの研究者を魅了し続けている。
昨今では2019年、シンガポールの歴史博物館であるインディアン・ヘリテージ・センターの学芸員ナリーナ・ゴパール氏が改めて全力調査に乗り出すも、解決に至るどころか謎を補強する事実しか見つけることができず、もはやタミルの鐘の存在理由を説明することは完全に不可能であるとして「まるでUFOのようだ」と結論づけた。
まるで時と場所を間違えて現れたかのように、解決の糸口さえ掴めないオーパーツ、タミルの鐘――この謎に突破口が切り開かれる日はやってくるのだろうか?
webムー編集部
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