「ヒバゴンの足跡」53年ぶりに故郷に帰還! かつての関係者や現場の徹底取材で見えてきた獣人の正体とは?
今年、53年ぶりに地元に帰ってきたヒバゴンの足跡。これを好機と捉え、現地を取材し、かつての騒動をもう一度検証した筆者。そこで見えてきたヒバゴンの正体とは?
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毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、UFOの目撃や異星人との接触など、UFOがらみの事件が起こるたびに出没する謎の男たちを取りあげる。
UFO研究界では以前から、目撃者の口を封じようとしたり、市井のUFO研究家に研究を止めるよう圧力をかけたりする無気味な男たちの存在が知られている。
多くの場合彼らは、黒っぽいスーツに黒い帽子、黒いネクタイに黒い靴、黒い靴下と、真っ白なワイシャツ以外は上から下まで黒ずくめの姿で登場する。その衣装にはしわひとつなく、ズボンにはきちんと折り目がついて、まるで新品のような印象を受けるという。
愛用するのはビュイックやキャデラックなど黒塗りの大型車で、目撃者や研究家がひとりでいるときにふたり、あるいは3人で現れることが多い。
容貌については、漠然と「外国人らしい」という印象を受ける場合が多く、肌の色については「青ざめていた」とか「かなり日焼けしていた」という証言がある。
その黒ずくめの服装から、アメリカの超常現象研究家ジョン・キールは、彼らのことを「メン・イン・ブラック」、略称「MIB」と呼んだ。
「メン・イン・ブラック」という言葉自体は、トミー・リー・ジョーンズとウィル・スミスが主演した映画シリーズで一躍有名になり、今では一般にも知られるようになったが、その存在を最初に公表したのはアメリカのUFO研究家グレイ・バーカーで、彼は1956年の著書『空飛ぶ円盤ミステリー』において、同僚の研究家アルバート・ベンダーの奇妙な遭遇について述べている。
ベンダーは「国際空飛ぶ円盤調査局(IFSB)」という研究団体の会長で、バーカーもこの団体の会員であった。ところが、1953年9月、しばらく連絡が届いていないことを不審に思った別の会員、オーガスト・ロバーツとドミニク・ルケシがベンダーに電話したところ、ベンダーはUFOに対する関心をすっかり失った様子で、次のように話したという。
「私はUFOの秘密を知っているが、3人の男がやってきて、UFO研究について何もいうなと要求した。私は研究を止める。アメリカ市民の名誉にかけて、これ以上話すことはできない。機関誌のバックナンバーもすべて押収された。これ以上UFO研究に時間と金を費やしても無駄だ」
これを聞いたバーカーは10月4日、ロバーツとルケシを伴って自らベンダーを訪ね、さまざまな質問をした。3人の男がやってきた正確な日時やその正体も含め、ベンダーはほとんどの質問に「答えられない」と繰り返したが、いくつかの質問には簡潔に答えた。
その内容をつなぎ合わせると、ベンダーはUFOの正体にたどり着き、自分の考えをとある知人に文書で送った直後、3人の男がやってきたようだ。彼らは黒っぽい服に黒い帽子をかぶっており、しかもベンダーが友人に送ったはずの文書を持っていたという。
さらにベンダーは、政府は2年前からUFOの正体を知っていて、近々そのことを公開するとか、これ以上しゃべると自分は刑務所に入れられるだろう、とも語った。
ベンダーは後日、自らの著書で3人の男との顚末を述べているが、その内容はというと、男たちの訪問後、ベンダーは幽体離脱のような形でエイリアンとコンタクトし、南極にある基地を訪れるなどの奇妙なコンタクト・ストーリーと化している。しかも、このエイリアンの本当の姿は「フラットウッズの怪物」にそっくりだとも述べている。
MIBらしき存在の活動は、実際にはベンダー事件よりも以前から確認されている。1905年、イギリスのエグリンで謎の怪光がしばしば目撃された際にも、目撃者の許に3人の黒服の男が現れたという報告があるし、モーリー島事件での登場もよく知られている。
モーリー島事件は1947年6月21日、つまりケネス・アーノルドの目撃により「空飛ぶ円盤」という言葉が生まれる3日前に、ワシントン州タコマのハロルド・ダールという人物が、モーリー島近くのピュージェット河口で、15歳の息子と飼い犬を連れて船に乗っていたとき、頭上にリング形の飛行物体6機を目撃した、というものだ。
このとき、1機のUFOを中心に、他の5機が周辺を旋回していたのだが、中心にいたUFOが他の1機と衝突した際、金属箔のような物体と黒い岩のようなものをまき散らした。落下した物体に触れて息子はケガをし、犬は死亡したという。
MIBらしき人物が現れたのは事件の翌日だった。この日ダールは、見知らぬ黒服の男から朝食に誘われ、その席で男は、彼が目撃したことを話さないよう警告したという。
他方、現在ではこの事件はダールが友人のフレッド・クリスマンと一緒にねつ造したものと考えられており、事件の証拠となる金属片も、スクラップや海岸で拾った石だった。
ところがバーカーによると、ベンダー以外にも黒衣の男に脅されて研究を止めた研究者が何人もおり、しかも同じような奇妙な男たちが、その後数多くのUFO事件でも目撃されているのだ。
メン・イン・ブラックと総称されてはいるが、その服装はかならずしも黒ずくめではなく、稀に女性らしき人物も見られる。そして多くの事例で、彼らは普通の人間とは思えない、非常に奇妙な行動を示している。
たとえばラルフ・バトラーという女性は1966年にUFOを目撃、翌年5月に空軍のリチャード・フレンチ少佐を名乗る人物の訪問を受けた。
胃の調子がよくないというフレンチに、バトラーはゼリーを勧めた。するとフレンチは、ゼリーの入った大きなボウルを両手で持ちあげて飲もうとしたので、バトラーはスプーンの使い方を教えた。後日、空軍に照会したところ、フレンチ少佐なる人物は実在したものの、人相も体つきもまったくの別人で、本人は訪問を否定した。
また、メアリー・ハイヤーの許を訪れたMIBは、机の上のボールペンを取りあげると、まるで生まれて初めて見るものであるかのように、しげしげと眺めていた。
ハーバート・ホプキンズを訪ねた黒服の男は、まるで口紅を塗ったように真っ赤な唇をしており、じっさい会話の途中で、男が手袋で唇をこすると口紅がついていた。そのうち訪問者の話すスピードが鈍ってきて、男はふらふらと立ちあがると、ゆっくりとした口調でいった。
「そろそろエネルギーが切れかけてきた。もう帰らなければ……失礼する」
さらに数日後、ホプキンズの息子ジョンとその妻モーリーンを訪ねてきたのは、年齢は30代半ばくらいに見える男女だったが、女性の乳房はいやに下の位置にあり、腰から両足にかけてのつながりが妙だった。
MIBの報告は圧倒的にアメリカからのものが多いが、フランスのセルジー・ポントワーズ事件でも、目撃者のひとりが黒っぽい服を着た3人の男から警告を受けており、イギリスやスウェーデン、イタリア、ルーマニアなど、世界各地からそれらしき報告が寄せられている。
日本にも、MIBの目撃談がある。
作家でオカルト研究家の中山市朗はその著書で、UFO写真を撮った少年の家庭に、黒い帽子とサングラス姿の、そろって身長2メートルはあろうかというふたりの男が突然現れ、少年の部屋を家捜しして去っていったという話など、いくつかの目撃談を紹介しているし、1990年には御殿場で、黒いスーツのふたり組が何度か目撃されている。また、ある著名なUFO研究家も、怪しいふたりの男の訪問を受けたということだ。
では、このメン・イン・ブラックの正体は何者なのだろう。
まず考えられるのは、いずれかの政府機関が、目撃者や研究家の口封じのためにエージェントを派遣しているということだ。ベンダー本人は、はっきりとは言及しないものの、「アメリカ市民としての名誉」とか「刑務所に入れられる」などの言葉で、政府の関与をほのめかしている。
他方、アメリカ空軍が行ったUFO調査プロジェクト、通称「プロジェクト・ブルーブック」に関する国防省スポークスマンを務めたジョージ・P・フリーマン大佐は、「空軍の制服を着た謎の男たちが、政府機関が発行したらしい身分証明書を携えて、UFO目撃者に沈黙を強要しているが、この男たちは空軍とはいかなる関係もない」と述べて、政府機関の関与に否定的な発言をしている。
ほかにUFO研究家に圧力をかける組織としては、アメリカのコンタクティ、ジョージ・アダムスキーが「サイレンス・グループ」なるものに言及しており、イギリスのジェニー・ランドルスは、APENなる謎の団体に事務所を荒らされたことがある。
MIBについて、神秘的な解釈を行う者たちもいる。
バーカーとともにベンダーに会見したルケシは、アメリカのSFシリーズ「シェイヴァー・ミステリー」について質問したとき、ベンダーが顔色を変えたとして、彼らは地底世界に関係しているのではないかと述べていた。
イギリスの著述家デヴィッド・アイクは、自らのレプティリアン世界支配陰謀論に基づいて、MIBもレプティリアンの変身と考えている。ほかにもトレヴァー・ジェローム・コンスタブルは悪魔的なアストラル界の存在であるとしている。
21世紀になって、MIBの目撃報告はかなり少なくなっているものの、2014年4月13日にはルイジアナ州ニューオリンズの街角で、動作がロボットのような黒服の背の高いふたり組が複数の人間に目撃されている。
さらに2019年1月3日には、イギリスのリバプールに現れた黒服の男が、何か輝く物体を警備員に向けると、警備員が動きを止める映像が防犯カメラにも捉えられている。
どうやらMIBは今でも健在らしい。
●参考資料=『超常現象の謎に挑む』(コリン・ウィルソン監修/教育社)、『空飛ぶ円盤ミステリー』(グレイ・バーカー著/高文社)、『宇宙人第0の遭遇』(アルバート・K・ベンダー著/徳間書店)、『新耳袋第四夜』(木原浩勝、中山市朗著/メディアファクトリー)/「ムー」2017 年5月号(学研)
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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