神の怒りは古代の核爆発だった!? 旧約聖書の背徳の町「ソドムとゴモラ」の基礎知識
淫欲と悪徳により神の怒りを受けたソドムとゴモラ。『旧約聖書』の「創世記」に記されたこの恐るべき滅亡の物語は、実際に起こった出来事だったと考えられている。
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今もその行方は謎に包まれている「契約の箱」。宗教史上最も象徴的、かつ最も謎に包まれた遺物の一つとされる。新たな研究では、この箱は古代イスラエル人によるアンチ偶像崇拝の象徴であったことが指摘されている。
旧約聖書の「出エジプト」直後に作られたとされる「契約の箱(Ark of the Covenant)」は、民族の隷属を断固として拒んだ古代イスラエル民族のアイデンティティーを象徴する聖遺物でもある。
これまで「出エジプト」で流浪の民となったイスラエル人たちのための移動式の神殿であると考えられてきた契約の箱だが、単なる神聖な箱という以上の意味が込められていたことを新たな考察が指摘している。そこには反エジプト、さらには反偶像崇拝まで表現されていたというのだ。
『The Ark of the Covenant in Its Egyptian Context: An Illustrated Journey』(2020年刊)などの著作をもつエジプト学者のデイビッド・フォーク氏によると、契約の箱はエジプトの儀式用の調度品、具体的には彫像や偶像を安置するために設計された神殿を小さくしたようなデザインだという。
しかし、エジプトの神殿とは異なり、契約の箱に偶像は入っていない。つまり、イスラエル民族にとって神(ヤハウェ)の存在に物理的表現は必要ないことを示すためにこの契約の箱が作られたのだ、とフォーク氏は述べる。
古代エジプトにおいて神殿は、聖なる空間を守るシンボルである火を吐くウラエウス像で飾られることが多かった。また、王座を飾っている翼をもつ女神は、守護と神の力を象徴していた。契約の箱はそのようなエジプト文明様式の意味を逆手に取り、箱の上部「慈悲の座」に2体のケルビム(天使)を配置、翼の間に(反偶像崇拝を示す)神聖な空間を敢えて作ったのだ。
フォーク氏が正しければ、契約の箱のデザインには意図的な宗教的イノベーション、つまり当時のエジプトの宗教的規範を否定する意図が込められていたことになる。
旧約聖書には、イスラエル民族が何世代もエジプトで過ごし、エジプトの文化や宗教的イメージのあらゆる側面を吸収したと記されている。しかし、イスラエル民族にとって神はヤハウェのみである。そしてユダヤ教では、神を人間の姿で表す偶像を作り拝むことは固く禁じられている。神は唯一絶対であり、人間の手で作られたものに神を閉じ込めることは冒涜につながるとされる。神は姿のない存在なのである。
紀元前1500年頃、イスラエル人は「出エジプト」に際して、(これまで甘んじて受け入れてきた)エジプトの文化様式と単に決別するというよりも、(契約の箱を通して)エジプトの宗教的象徴のビジュアルを意図的に“借用”し、ユダヤ教に則して作り直すことでその優位性を改めて際立たせることを目指したのだ。つまり契約の箱は、古代エジプトへの隷属を拒否した古代イスラエル民族の宗教的復興を体現する遺物であったことになる。
ユダヤ教ブログ「Bible History Daily」に寄稿したフォーク氏は、「3300年前には誰もが知っていたものの、現代ではほとんど失われてしまったビジュアル表現を用いて契約の箱は製作されました」と述べている。
エジプトの神殿跡や工芸品は(博物館に保存されているが)その意匠と影響力は風化している。一方で、偶像を拒絶した契約の箱はイスラエル民族のアイデンティティーと抵抗の強力な象徴として、今も色褪せない威光を放っているということだ。
なお、金箔で覆われ、アカシア材で作られた契約の箱がエジプト様式を“借用”していたことは、箱の両側面に取り付けられた(4人の担ぎ手のための)棒が、エジプトの儀式用の箱と一致していることからも疑いようがないという。
旧約聖書「出エジプト記」によれば、モーセは十戒の石板を契約の箱の中に納めてしばらくは旅に帯同させていた。その後、一時的な聖域である幕屋(テント)の中に保管されるなど紆余曲折を経て、最終的にはソロモン神殿に安置されるも、紀元前586年にバビロニア人がエルサレムを略奪する直前に行方不明となってしまう。長い年月を経た現在、契約の箱はいったいどこに眠っているのか? それを見つけ出そうとする研究者たちの試みは今も続いている。
【参考】
https://www.dailymail.co.uk/sciencetech/article-15492129/Ark-Covenant-new-findings-biblical-relic.html
https://www.biblicalarchaeology.org/daily/biblical-artifacts/artifacts-and-the-bible/ark-of-the-covenant-in-egyptian-context/
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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