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聖書から除外された『トマスの幼年福音書』に記されたキリストの真実――。数々の教えや奇跡で民を救ったイエスには、知られざる幼少期があった!
水を葡萄酒に変え、嵐を鎮め、病を治す…… 数々の奇跡を起こして多くの人を救ったとされるイエス・キリスト。その生涯や教え、そして死と復活は新約聖書の「マタイ」「マルコ」「ルカ」「ヨハネ」の4つの福音書にまとめられ、イエスの高潔さや慈愛の精神などを物語る多数のエピソードが今に伝わっている。

しかし、本当にイエスはその生涯を通して完全無欠の“聖人”であり続けたのだろうか? 実は約1900年前に書かれながらも、聖書から除外された『トマスの幼年福音書』が存在する。この書物には、後世のイメージとは随分と異なる幼いイエスの衝撃的エピソードが綴られている。
ある日、幼いイエスの肩に誤って別の子どもがぶつかった。するとイエスは、ぶつかられた報復に子どもを呪い殺してしまった。村人たちはイエスの仕打ちに憤慨し、ヨセフ(養父)と聖母マリアに訴え出たが、今度は幼いイエスは告発してきた者を呪い、盲目にするという罰を下したという。

また、大司祭アンナスの息子が、安息日にイエスが汲んだ水をいたずらで撒き散らしたとき。幼いイエスは「その身は焼け焦げた枝のように枯れるだろう」と、アンナスの息子に対する呪いの言葉を吐いた。すると少年の体は即座に枯れ果ててしまった。
前述の4つの福音書に登場するイエスは、若くてもせいぜい12歳だ。しかし『トマスの幼少期福音書』はイエスが5歳の頃の記述から始まっており、言わば救世主であるイエス・キリストとなる前、まだその能力の正しい使い方を心得ていなかったイエスの姿が記されているのだ。とはいえ、あまりにも“神の子”のイメージとは乖離したエピソードの数々は、聖書から外されたのも納得の衝撃度だ。

初期のカトリック教会は、幼いイエスの暴力的かつわがままな姿を伝える『トマスの幼年福音書』を、正統的なキリスト教の教えと矛盾するとして拒絶。さらに、この書物が執筆された時期が他の聖書に比べて遅いことや、グノーシス主義文献との関連性も見出されることから、正当性がなく異端であるとみなされた。
ただし、『トマスの幼年福音書』に記されているのは幼いイエスの暴力的でわがままな面ばかりではない。足を負傷した木こりを癒やしたり、屋根から落ちて命を落とした友人を復活させる、さらに一粒の小麦を数百倍に増やして困窮する人たちに分け与えるなどの奇跡で、他者を救ったイエスの姿も数多く描かれているのだ。

幼いがゆえの不安定さだったのか、それともイエスには本当に知られざる一面があったのか? いずれにせよ、イエス・キリストが幼い頃から人智を超えた力をもっていたことは間違いないようだ。
webムー編集部
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