蛇神トウビョウ探訪記 古代出雲の龍蛇様を継ぐ憑き物/高橋御山人
独特な形状と生態から、忌避されつつも神聖視され「神」と崇められさえした、蛇。そんな蛇神の一種であるトウビョウは、ある地域では恐怖の対象とされたが、本来はまったく異なる性質のものだった可能性がみえてきた
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妖怪博物館に「新資料」登場! あの予言獣や犬神にゆかりのものがお披露目された。
不思議でありながら、人々を驚かせたり怖がらせたり、時には可愛らしい姿で魅了する妖怪たち。
そんな妖怪を専門に扱う湯本豪一記念日本妖怪博物館(三次もののけミュージアム)に、新たな所蔵品が加わった。2025年9月には湯本豪一名誉館長による新規寄贈資料の贈呈式が行われている。
三次もののけミュージアムは2019年にオープンし、その際、湯本氏は約5,000点もの資料を寄贈している。その後も湯本氏は資料収集に力を注ぎ、以前の寄贈資料を補う形で、新たな展示の展開を可能にする貴重な資料を集めてきた。
今回は室町時代から昭和にかけての絵巻物や写真など約700点が新たに寄贈された。
特に注目すべきなのは室町時代の絵巻である。
「是害房(ぜがいぼう)絵巻」と呼ばれるこの絵巻は、全幅714.6センチ、縦27.2センチの大作。中国から日本へ渡ってきた大天狗・是害房が、比叡山の僧侶と法力で力比べをし、敗北したのち、日本の天狗たちに介抱され無事に帰国するという説話が描かれている。
江戸時代以前の妖怪絵巻は現在、各地の博物館などで厳重に保管されており、室町時代の作品が新たに収蔵されることは非常に珍しいという。
湯本氏は「貴重な500年前の絵巻が、さまざまな地を巡った末に広島県三次市のもののけミュージアムに落ち着いた。絵巻もようやく安住の地を得たのではないか」と語った。
またこちらは、三本足の猿のような姿をした絵は、コロナ禍で話題になった予言獣・アマビエとも関わりの深い「アマビコ」の錦絵である。この錦絵には、肥後国(現在の熊本県)に現れたアマビコが「6年間の豊作と流行病の流行」を予言し、「自分の姿を写して貼っておけば病気を免れる」と告げて消えた、という内容が記されている。
多くのアマビコの絵は簡素な筆描きや一色刷りのものが多い中、この多色刷りの錦絵は非常に珍しく、アマビコ関連資料の展示をさらに充実させる貴重な一点となっている。
専門家の間では、アマビコはアマビエの「コ」と「エ」の書き間違いから生まれたとする説が有力であり、コロナ禍でアマビエが全国的に広まったのは、偶然が重なった“イレギュラーな出来事”だったとされている。
さらに今回は、記録性の高い珍しい資料も寄贈された。
それは「土佐奇獣図」と呼ばれるもので、土州汗見川村(現在の高知県本山町)に出現した奇妙な生物を詳細に描いた記録だ。
足が極端に細く、耳が大きく、虎のような縦縞を持つその“奇獣”が村を騒がせ、最終的に捕獲・焼却されたという出来事が、体長や重さまで含めて克明に記されている。
また、当時の土佐や他地域の識者が「これは犬神の一種ではないか」と論じた記録も残されており、当時の人々の思想や風俗を知るうえで非常に貴重な資料となっている。
湯本氏は「これら多様な資料によって、新たな切り口の展示が可能になるだろう。数年かけて整理を進め、ミュージアム10周年に向けてさらに充実させていきたい」と語った。
現在、会期中の夏と秋の特別企画展「妖怪を描いた浮世絵師たち」は、世にも珍しい“妖怪づくし”の浮世絵展だ。酒呑童子や九尾の狐、幽霊など、さまざまな妖怪が浮世絵で表現されており、その美しさと迫力は日本を代表する芸術の一端を感じさせる(この企画展は11月18日まで)。
さらに、今回紹介した資料などが「湯本豪一名誉館長新規寄贈資料 お披露目展」として10月28日まで行われているのだ。今後ますます進化していく「もののけミュージアム」に、大きな期待が寄せられている。
湯本豪一記念日本妖怪博物館(三次もののけミュージアム)
広島県三次市三次町1691番地4
https://miyoshi-mononoke.jp/
おかゆう
オカルトライター。現地取材が好き。一般社団法人 超常現象情報研究センター、つちのこ学会所属。
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