米アパラチア地方に伝わる「月眼人」とは何者なのか? 青い目をした夜行性の先住民族の謎
月明かりの下で活動する夜行性の部族「月眼人」とは――。ネイティブアメリカンよりも先に北アメリカ大陸にいたのは「月の眼を持つ人々」であったという。
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英国の歴史に翻弄された“運命の石”に刻まれた数字の意味とは――!? 13世紀からスコットランド君主の戴冠式に使われてきた「スクーンの石」の謎に迫る!
スコットランド王室に伝わる“運命の石”こと「スクーンの石」は、歴代の王の戴冠式で重要な役割を果たしてきた、スコットランドを象徴する文化遺物だ。その寸法は66センチ✕42.5センチで、高さは27センチ、重さは約152キロ。式典で国王はこの石の上に座ったとされている。
スコットランド王室の家宝であるスクーンの石だが、1296年にイングランドがスコットランドに侵攻した際、イングランド王のエドワード1世がこの石を奪い去り、ロンドン・ウェストミンスター寺院の王座に組み込まれた。以来、「エドワード王の椅子」として知られるこの木製の王座は、メアリー1世とメアリー2世を除くすべての国王の戴冠式で使用されてきた。
スコットランドの民族主義者たちがそれを快く思っていなかったことは想像に難くない。1950年のクリスマスの日、スコットランドの学生4人がスクーンの石を奪い、スコットランドへと運び入れたのだが、その4か月後にスコットランド東海岸にあるアーブロース修道院に放置された状態で見つかった。イングランドの警察はすぐに石を回収し、ロンドンのウェストミンスター寺院に戻している。
学生たちがスクーンの石を運び出した際、落とした衝撃でスクーンの石は2つに割れてしまっていたのだが、年明けすぐに石工に修理させて元の姿に復元したという。石工は2つに割れた石を貼り合わせる際、接着面に真鍮の棒を差し込むよう指示されたのだが、この棒の中には紙片が入っていたといわれている。神聖なスクーンの石を再び割ってみることはできないため、そこに何が書かれているのかは今も不明である。さらに修理作業の過程で、石工は運命の石を少し砕いて小さな破片をいくつか入手したといわれている。
時は流れて1996年、ジョン・メージャー政権によりスクーンの石は1296年以来、700年ぶりにスコットランドに返還された。とはいえ、英国王室の戴冠式の際にはスクーンの石が一時的にウェストミンスター寺院に運ばれることが取り決められ、実際に2023年5月6日のチャールズ3世の戴冠式の際には移送されている。
そして同じく2023年、スクーンの石を管理しているスコットランド歴史環境局の科学者らは、石のレーザースキャンを実施した。分析に参加したスターリング大学の考古学者サリー・フォスター教授によると、レーザースキャンで石の表面にローマ数字の35である「XXXV」という微妙なマークがあることが明らかになった。
いったいこの数字は何を示しているのか。フォスター教授は、1951年にスクーンの石の修復を行ったスコットランドの民族主義者で石工のロバート・グレイが付けたものだと考えている。
修復作業中に30以上の破片が取られたと考えられているが、1975年に死去したグレイはその正確な数を明らかにしないまま他界した。しかし、今回発見されたこのローマ数字から、破片は合計34個あったことが示唆されることになった。つまり、34の破片にはそれぞれ番号が記され、その本体に「35」の数字が刻まれたというのである。
「グレイのユーモアのセンスと、石に彼自身の印を残すという彼のやり方に合っています」(フォスター教授)
スクーンの石の行方不明の破片を探す捜索も行われているが、破片の1つは元スコットランド首相のアレックス・サモンドに贈られ、SNP(スコットランド国民党)本部に保管されていることが分かっている。
フォスター教授によると、スコットランドのオークニー諸島にも個人所有のままの破片がいくつかあるという報告をすでに受けているということだ。
では、スクーンの石に刻まれた数字の謎はこれで一件落着ということになるのだろうか。
一方、セント・アンドリュース大学の歴史学者イアン・ブラッドリー教授は、戴冠式で使われた石が本物であるかどうかは「極めて疑わしい」と述べている。同教授によると、この石はスコットランド中部パースシャーのスコーン周辺では「比較的一般的」な砂岩の一種であり、似たような石が比較的簡単に用意できるという。
1296年にイングランド王エドワード1世がスコーン修道院からスクーンの石を略奪したと伝えられているが、ここに来て、その石が偽物であった可能性が指摘されることになったのだ。もしそうだとすれば、本物のスクーンの石はどこかに今も隠匿されていることになる。
スクーンの石を管理し、2023年のレーザースキャンを実施したスコットランド歴史環境局は、刻まれた数字に関する前述のフォスター教授の結論について「石にこれらの刻印がいつ刻まれたのか、またそれが何を意味するのかは、はっきりとは分かりません」と語っている。
「ローマ数字のように見えますが、必ずしもローマ時代のものであるというわけではありません。刻印の外観と、これまで記録されていないという事実から、最近刻まれた可能性もあります。これがさらなる研究の領域となることを期待しています」(同局広報担当者)
ちなみに、フォスター教授の研究は国際学術誌に提出中で、査読と受理を待っている段階にあるということだ。
現在はスコットランドのパース博物館で一般公開されているスクーンの石だが、その謎の数字についてはまだ疑問が残っているようだ。しかも近年になって、そもそもこの石が本物なのかという謎まで浮上している。もしも石を割って真鍮の棒の中に入っている紙片に書かれた内容を確認できれば、かなりのことがわかりそうだが、それはできない相談なのだろう。スクーンの石をめぐるミステリーはまだまだ収束しそうにない。
仲田しんじ
場末の酒場の片隅を好む都会の孤独な思索者でフリーライター。興味本位で考察と執筆の範囲を拡大中。
ツイッター https://twitter.com/nakata66shinji
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