ジャージーデビルとモケーレ・ムベンベなど4種のUMAに共通項? 地下トンネルと電波的異常が異形生物を生み出す?
世界各地で目撃されているUMA(未確認動物)のうち数種に、意外な共通点が指摘されている。なんと、特定のUMAが出没する地域にはトンネルのような地下構造物があり、同一パターンの電波的異常が見られるという
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超常現象の宝庫アメリカから、各州のミステリーを紹介。案内人は都市伝説研究家の宇佐和通! 目指せ全米制覇!
アメリカ中西部、五大湖のうち4つ(ヒューロン湖、ミシガン湖、エリー湖、スペリオル湖)と接するミシガン州で最も知られている都市は、間違いなくデトロイトだ。自動車産業の中心として「モーターシティ」というニックネームもあるが、アメリカの音楽史に大きな影響を与えた「モータウン・サウンド」の発祥地という一面も忘れてはならないだろう。
長い間アメリカ経済をけん引してきた自動車産業のメッカとしてのプライドと、モータウン・ミュージックという言葉が放つきらびやかさから、ミシガン州は未来的な建物が立ち並ぶ大都会というイメージが浮かびがちであるようだ。
しかし北部にはひたすらに大自然が広がる地域が存在し、そこを舞台にするミシガン州ならではの都市伝説がある。主人公は「ドッグマン」という名前のUMAだ。
ドッグマンの最初の目撃報告は1887年にまでさかのぼる。ロウアー半島北西部のウェックスフォード郡で、2人の木こりが人間の体と犬の頭を持つ生き物に遭遇したという記録が残っている。この最初の目撃が数十年という長いスパンで進化し続け、ミシガン州の文化に深く根付いたフォークロアとなっていった。
しかし、このドッグマン伝説のルーツは、さらに古い時代までさかのぼることができる。実はミシガン北部の森は、オタワ族をはじめとするネイティブアメリカンが代々語り継いできた奇妙な生き物に関するストーリーの舞台であり続けてきた。そこに、東海岸から上陸したヨーロッパの入植者が故郷から持ち込んだ狼男など半人半獣の生き物にまつわる話が融合し、フォークロアの土台が形成された。
古代の伝説には人間から動物へと変身する存在が数多く登場するが、人間世界と精霊の領域との境界線を曖昧にする働きをしていた。ドッグマンという存在は、まさにこうした神話的要素を背景に、ネイティブアメリカンと入植者双方の文化を組み合わせる形で生まれたユニークなアメリカの伝説と言えるだろう。
ミシガン・ドッグマンは身長2メートルを超えるヒューマノイド型UMAだ。暗闇で光る眼は青色または琥珀色をしている。そして、まるで人間の悲鳴のような響きの遠吠えを上げる。後ろ足で真っすぐ立った直立二足歩行姿が大きな特徴だ。
伝説によれば、ドッグマンは10年周期で現れ、7で終わる数字の年に目撃が集中するとされている。この部分がいかにも都市伝説らしい。特定の周期や年数という要素が伝説に予測性を加え、目撃の波がいつ起こるか考える人が増える。そして、一つひとつの目撃事例が伝説を強化し、ドッグマン神話に新たなディテールを加えてきたのだ。
ドッグマンの目撃事例は、特にロウワー半島の北西部で数多く報告されてきたが、よく知られているのが「1957年の聖なる恐怖」と呼ばれている事件だ。ロウワー半島のとある教会の木製のドアに、鋭く深い爪痕が発見されたが、このような痕跡を残せる生物の身長は、直立したときの身長は低くても7フィート(約2メートル10センチ)と考えられた。そのため、この事件はドッグマンの生息域が深い森から人間の生活圏へと拡大していることの裏付けとされた。教会のような聖なる建物にさえ攻撃を加えるドッグマンーー。周辺住民に安全な場所はないという事実を突き付ける出来事だった。
1970年代に入ると、ドッグマンの存在を具体的に証明する証拠が現れた。「ゲーブル・フィルム」という名前で知られる不鮮明な映像だ。ミシガン北部で休暇を楽しんでいた人物が目撃・撮影したいう映像は瞬く間に拡散し、それまで口伝えの情報が中心だったドッグマン伝説の新しい発火点となった。
しかし後日、目撃・撮影者とされるマイク・アグルーサという男性が、自作のフェイク映像であることを認めた。この告白によって、ドッグマン伝説が全否定されるかもしれないと考えた人も少なくなかったはずだ。しかし実際には正反対の方向の効果ばかりが目立ち、ドッグマン伝説の信者たちが製作者アグルーサ本人の意図を完全に無視する形で、「彼は映像の信憑性を否定するよう圧力をかけられた」と強く主張したのだ。
さらに1987年、トラバース・シティのラジオ局WTCMのスティーブ・クックというDJが、エイプリルフールのジョークとして、ドッグマンをリスペクトする『ザ・レジェンド』というタイトルの歌を公表した。この曲が伝説に与えた影響は計り知れない。散在していた多数の逸話を一貫した物語に織り上げたもので、ミシガン州に住む人々の心に強く響いたようだ。だが、『ザ・レジェンド』の影響はそれだけではなかった。ドッグマン伝説を“標準化”する役割も果たしてしまったのだ。
『ザ・レジェンド』の発表前、ドッグマンの描写は事例ごとに大きく異なっていた。しかし発表後は、ドッグマンの外見や行動についての事例報告の内容がより一貫したイメージに収束し始めたのだ。ドッグマン伝説は、ミシガン州特有の文化的要素の一つになったといっても差し支えないだろう。その後に登場する数多くの本やドキュメンタリーフィルムも、このときに完成したドッグマンのイメージを踏襲している。
結局、ドッグマン現象の本質とは何なのか。夕暮れや夜明け時の薄暗い森の中、あるいは恐怖や興奮の影響下で、目撃者がオオカミやクマ、ピューマなどの野生動物を未確認生物と誤認した可能性も否めない。一方、ドッグマンが古代の墳丘を守護する聖獣である可能性を追究している研究家までいるが、その背景にネイティブアメリカンの伝説があることは間違いなく、もはや単なるUMA以上の存在であるともいえそうだ。
また、インターネットとソーシャルメディアの進化がドッグマン伝説に新たな生命を与えたという指摘も無視できない。数えきれないほどのプラットフォームでドッグマン信者たちがナラティブ(広範囲で語られている物語)を共有し、仮説や議論を展開し、絶対的な証拠を探す探検隊の設立を試みている。ドッグマンの物語は、これから先も数々の新しい要素とともに、さまざまな形で紡ぎ出されていくことだろう。
宇佐和通
翻訳家、作家、都市伝説研究家。海外情報に通じ、並木伸一郎氏のバディとしてロズウェルをはじめ現地取材にも参加している。
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