超古代文明アトランティスは大西洋か地中海か? ジブラルタル海峡を挟んだ2つの有力候補

文=遠野そら

関連キーワード:

    超文明アトランティスは大西洋の向こうに栄えたのか? それとも地中海に沈んだのか?

    2000を超える仮説がある

     古代ギリシアの哲学者プラトンの時代から遡ること約9000年前。ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡)の向こうには温暖な気候と豊かな実りに恵まれたアトランティス大陸があった。それはリビアと小アジア(現在のアナトリア)を合わせたよりも大きく、海神ポセイドンを祖に持つ王たちによって治められていた——

     プラトンが著書『ティマイオス』及び『クリティアス』の中で海に沈んだ大陸「アトランティス」にまつわる記述を残してから、約1万2000年の時が過ぎた。

     はたして、超古代文明アトランティスはどこにあったのか?
     今ではその比定地として実に2000近い説が提唱されているが、とりわけ支持者が多く、学問的にも有力視されているのが大西洋説と地中海説ではないだろうか。

    アトランティスの首都ポセイドニアの想像図。後方には美しい山々が連なり、豊かな森と湖が点在していたとされる。画像=https://valencianoticias.com/la-atlantida-podria-haber-estado-en-valencina-de-la-concepcion/

    ジブラルタル海峡の向こうへ……「大西洋説」

     謎めいた海底遺跡が数多く発見されている大西洋。なかでも「アトランティスの痕跡」として多くの研究者を魅了しているのが、バハマ諸島ビミニ島沖に沈む全長約600メートルの石畳「ビミニ・ロード」である。

    最大4.5m四方の石が整然と並べられたビミニ・ロード。画像=https://www.bahamas.com/islands/bimini

     年代測定の結果、これらの石は人工的に形成されたもので、約1万5千年前には地表に露出していたことが明らかになっているが、その正体はいまだわかっていない。だがカリブ海域では他にも建造物の一部と思しき大理石の石柱や、巨大な石壁などが複数発見されていることから、これらはこの地に高度な文明圏が存在してた証拠——つまりアトランティス大陸の痕跡として推測されているのである。

     アトランティス大西洋説の根拠として支持されている理由が、なによりプラトンの伝えるアトランティスの場所が「ヘラクレスの柱(ジブラルタル海峡)の向こう」とされているからだ。プラトンの言葉に忠実に従えば、自ずとアトランティス大陸は大西洋にあったと推測せざるを得ない。

     また状況証拠も多い。大西洋側で栄えたマヤ、プレ・インカ文明と、遠く離れた地中海文明——これらの文明に太陽信仰やピラミッドの建造、暦など高度な天文学が共通している。いずれも卓越した文明の植民地であったか、または、その末裔が各地でこれらの文化を継承したとしか考えられないほどまでに、一致しているのだ。

    メキシコ・マヤのチチェン・イッツァ。エジプトや中南米の他にも、南太平洋、中国、東南アジアにもピラミッドは存在している。画像=Wikipedia

    ミノア文明がアトランティスなのか?「地中海説」

     アトランティスを語るうえで避けて通れないのが地中海説である。

     現在はその比定地としてミノア文明の中心地であったクレタ島を始め、マルタ諸島やザキントス島、サルデーニャ島、サントリーニ島などが提唱されているが、近年は海底にグリーンランドに相当する大陸棚が確認されたことで、地中海に浮かぶ島々は、その昔ひとつなぎの大陸=アトランティス大陸であり、中央部が海底に陥没したことで分断された「アトランティス大陸の欠片」説も広く取り上げられるようになった。

     アトランティス伝説を地中海とする根拠のひとつが、紀元前1628年ごろ、サントリーニ島で起きた海底火山の爆発的噴火である。今でこそ5つの小島からなるサントリーニ島だが、昔は直径約18キロの円形の島であった。しかし突如発生した大噴火により島の中央部は大きく吹き飛び、地中海で最大波高90mの大津波が発生、その他、地震や降灰などの大災害をもたらしたことが学術的に立証されている。
     この噴火は人類史上最大規模の火山噴火とされていることから、サントリーニ島の四散をアトランティス沈没伝説の原型として提唱しているのである。

    中央部が大きくえぐれている現在のサントリーニ島。引用=Wikiwand

     また他にも、地中海の島々にはまるでオーパーツとも言える高度な天文学や建造技術を用いた遺跡が点在していることから、これらを「アトランティスの遺産」と主張する研究者も少なくないようだ。

     しかしながら冒頭でも伝えた通り、プラトンの物語にあるアトランティス大陸の滅亡は今から約1万2千年前。紀元前4世紀に著した『ティマイオス』及び『クリティアス』から遡ると紀元前9500年前頃となる。サントリーニ島の爆発的噴火は紀元前1628年頃とあることから、時代に矛盾が生じているが、これには数字の誤訳や、アトランティス伝説をプラトンに伝えたギリシアの政治家ソロンが、エジプトの年代算出法を誤った等の説があるようだ。

     いずれも本筋において根拠としては十分であるが、いまだ大西洋説、地中海説ともにアトランティスの実在を決定付ける物的証拠は発見されていない。現在は上述した地域の他にも、大西洋に付属する北海や、ヨーロッパ、アフリカ、アジア、中南米、オーストラリアの他、南極など、様々な説が提唱されている。はたしてアトランティス大陸はどこに眠っているのだろうか。地球上のどこかに存在していたーーあるいは、ひそかに眠っている。そのことに間違いはないのだ。

    イメージ=PIXABAY

    遠野そら

    UFO、怪奇現象、オーパーツなど、海外ミステリー情報に通じるオカルトライター。超常現象研究の第一人者・並木伸一郎氏のスタッフも務める。

    関連記事

    おすすめ記事