1855年「悪魔の足跡」事件の未解決ミステリー! 一夜にして出現した全長260kmの奇怪な痕跡
悪魔が通ったのか――。大雪の翌日、一夜のうちに不気味な足跡が260キロもの距離にわたって刻まれていた。雪が積もった誰もいない深夜、ここぞとばかりに悪魔が大手を振って闊歩していたのだろうか。
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8月6日と7日、上村木の夜を異形の神々が練り歩く。3年ぶりに開催された北陸・富山の奇祭を追った。
いよいよ登場した「アジロ」たち。その中で、筆者は織姫も彦星も逃げ出しそうな、一際恐ろしい姿の「アジロ」に目を引かれた。
白と青の網代を纏い、左手には長刀を、右手には采配を持ち、長い髪と髭の生えたご尊顔は、爬虫類の鱗の如き線が入った鬼の形相――まるで大魔王のようなこの「アジロ」は、すべての神々を束ねる「大鬼神」。2012年の100周年記念で誕生した厄払いの神様らしい。
大鬼神と言えば、平安時代に百鬼夜行が現れたという伝説の地、京都の一条通に鎮座する「大将軍八神社」を思い出す。平安京を厄災から守護する為に創建された神社で、元々は陰陽道において方位の吉凶を司る八将神の一柱、「大将軍」を祭神としていた(現在は同一視されたスサノオが祭神)。
大将軍は別名「魔王天王」とも呼ばれる大鬼神で、金星にまつわる星神(太白神)。陰陽道では、金が刃物に通じる事から、金星は不吉な星とされる。その為、殺伐を司り、3年ごとに居を変える大将軍がいる方角は、万事が凶になると恐れられた。
そして、この荒ぶる星神は、天空から飛来する鬼神――即ち、天狗とも同一視されている。
あたかもそれを物語るように、筆者の訪問時は神社最寄の店前に、“鞍馬天狗”のオブジェがあった。
一条通の大将軍商店街が別名「一条妖怪ストリート」と称し、通りのあちこちに設置している妖怪アートの一つだ。
鞍馬天狗としても有名な「護法魔王尊」は、650万年前に金星から鞍馬山に降り立ったとされる。
また、修験者が唱えた「天狗経」の真言「オン・アロマヤ・テング・スマンキ・ソワカ」は、「アロマヤ」が金星を指す。
このように金星と縁が深い天狗だが、そもそも、その名は古代中国で“流星”を意味し、やはり凶兆として捉えられていた。日本で天狗の文字が初出する『日本書紀』でも、飛鳥時代に出現したという、雷に似た轟音を立てる流星を指している。
そうした事を知ってか知らずか、大正時代に上村木の少年3人が、奇しくも星に願う七夕(星祭)において、最初の「アジロ」として天狗を起用している点は興味深い。
もしかしたら、平安京が恐ろしい大将軍を味方につけて都を護ったように、あえて妖星の権化たる天狗を引き入れ、村の平和を願ったのだろうか。いずれにせよ、彼らの鋭いセンスには恐れ入るばかりだ。
さて、行列が提灯の連なる通りに差し掛かると、すべてのものが赤く染まり、まるで“異界入り”したかのような、和風ホラーな雰囲気に包まれた。
それと同時に、祭りはヒートアップ。
リヤカーはバグったみたいに回転乱舞し、屋形船は荒波の如く威勢よく跳ね上がり、歓声と拍手が巻き起こる。
一方、「アジロ」も活性化したように蠢き、時には民家の窓を覗き込み、室内の住人をも驚かす。
これは以前取材した、宮古島のパーントゥを思い出す“来訪神しぐさ”だ。
そして午後8時半頃、行列が魚津駅前の通りに辿り着くと、祭りはクライマックス。
交通規制などの準備が整った後、合図とともに少年、屋形船、リヤカー、そして「アジロ」達が猛ダッシュを開始。皆、駅前ロータリーまで進むとUターンして、通りの反対車線へと全力で駆け抜けていく。
さながら“妖怪運動会”といった感じで、妙に白熱した折り返しであった。
その後も行列はひとしきり練り回ったが、午後9時頃に上村木神明社の横にある公園に到着し、久々の七夕祭は無事終了。「アジロ」達も満足そうに鳥居の奥へ去っていった。
今年はコロナ対策で、例年より巡行ルートの短縮を余儀なくされたそうだが、それでも1時間以上に渡って移動し、個人的には十分長い距離に感じられた。
午後9時過ぎ、祭りの余韻に浸りながら、筆者は魚津駅を目指して歩いた。
すると、つい先程まで喧騒に包まれていたはずの駅前通りが、何事も無かったみたいに静まり返っている。他に道行く人も、車も見当たらない。まるで蜃気楼の如く、すべて掻き消えてしまったかのようだ。
しかし、童心が生んだ妖しい七夕祭は、時代を超えて今も確かに息づいていた。
得体の知れぬ海の虚像が“吉兆”と見なされ、この街の名物となったように――。
(おわり)
影市マオ
B級冒険オカルトサイト「超魔界帝国の逆襲」管理人。別名・大魔王。超常現象や心霊・珍スポット、奇祭などを現場リサーチしている。
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