寒さを感じなくなる「抗寒薬」を米軍が開発へ! 大寒波を克服するDARPAの最先端バイオハック技術
「マッドサイエンティスト集団」にも喩えられる米国防高等研究計画局(DARPA)が今、寒さを感じなくなる薬に注目しているという。そのメカニズムとは――?
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毎回、「ムー」的な視点から、世界中にあふれる不可思議な事象や謎めいた事件を振り返っていくムーペディア。 今回は、神秘と伝説に満ちた開祖が創設し、理想の社会を目指して密かに人類を導いているという秘密結社を取りあげる。
「シナーキー」あるいは「シナーキズム」と呼ばれる政治体制がある。
その意味する内容は時代により、また論者によってかなり異なっているが、フランスの神秘思想家アレクサンドル・サンティーヴ=ダルヴェイドル(1842〜1909)はこれを、人類最高の叡智を有する秘密の集団に指導される政治体制とした。
つまり、世界のどこかに人類を導く世界最高の頭脳集団が存在することを前提に、その指示に従って運営される統治形態が、彼のいうシナーキーなのだ。
しかし、そのような秘密の団体が現実に存在するものだろうか。サンティーヴ=ダルヴェイドルはそれが実在すると考えた。そして、シナーキーを定義するにあたって彼の念頭にあった秘密結社こそ薔薇十字団である。
薔薇十字団の起源は、神秘と伝説の闇に覆われて判然としない。伝えられるところでは、この団体は超古代から蓄積された聖なる秘密の知識を守り伝えており、その団員はカバラの奥義や錬金術などの秘義に通じ、さまざまな超能力を身につけているという。
結社の存在は一般の人間には完全に秘匿される一方、「見えない学院」という秘密の教育機関を運営し、団員たちは市井に紛れて無償で治病を行うなど善行を施しながら、これはと見定めた人物に秘義を伝えているともいう。
このようにして密かに人類全体の進歩を促しながら、彼らが理想とする社会を実現するため、歴史の流れを影で動かしているともいわれている。
その存在は17世紀初頭、ドイツで一連の薔薇十字団関連文書が公表されたことで明らかになった。
まず1614年、カッセルで『世界の普遍的改革』と題する書物が刊行され、その付録という形で登場したのが『ファーマ・フラテルニタティス(友愛団の名声)』である。
この文書によれば、薔薇十字団は謎の人物クリスチャン・ローゼンクロイツ(1378〜1484)によって結成されたことになっている。
ローゼンクロイツは、ブロッケン山近くの貧しい没落貴族の家に生まれ、4歳で両親を失ってからずっと修道院で教育を受けていた。
16歳になると、ローゼンクロイツは聖地エルサレム巡礼を思いたち、同僚の修道士と一緒に旅に出る。この同僚はキプロス島で病死してしまうが、ローゼンクロイツはひとりになってもエルサレムを目指し、ダマスカスまでたどり着いた。
ところがここである噂を聞いた。アラビア半島にはダムカルという神秘の都市があり、そこにはカバラの奥義や錬金術に精通した賢者たちが住んでいるというのだ。
そこで彼は目的地を変更、知識を求めてアラビア半島に分け入り、ダムカルに着いた。するとダムカルの賢者たちは、ローゼンクロイツこそ彼らが長らく待ち望んでいた人物であるとして手厚く迎え、アラビア語、数学、自然学をはじめ、彼らの間に伝わる東方の聖なる秘密の知識を伝授したという。また彼は、『Mの書』という書物のアラビア語の翻訳にも邁進した。
ローゼンクロイツはダムカルに3年滞在した後、モロッコのフェズに赴き、そこでは自然界の精霊と自在に交流する術を身につけたという。
こうして、アトランティス時代から東方に伝えられていたあらゆる知識を身につけたローゼンクロイツは、意気揚々とドイツに戻ってきた。
ドイツでは、自身がラテン語に翻訳した『Mの書』を各地の王侯や知者として知られる人々に示して、自らが理想とする社会を実現しようと働きかけた。ところが、そうした人々の反応は冷たかった。
これにより、自らの知識を世間一般に広めるのは時期尚早と悟ったローゼンクロイツは、自分の邸宅で勉学に励み、5年ほどして7人の弟子とともに薔薇十字団を結成したのだ。
ローゼンクロイツは1484年、106歳で世を去るが、その際「自分は120年後に甦るであろう」という謎の言葉を遺した。
はたして120年後の1604年、ある団員が彼の墓に通じる隠し戸を偶然に発見した。中に入ってみると、そこは七角形の埋葬室で、棺は部屋の中央にある祭壇の下に置かれ、天井では永遠に輝きつづけるランプが光を放っていた。
ローゼンクロイツの遺体はまったく腐っておらず、生きているときそのままの姿であったという。
他方、薔薇十字団は、じつはローゼンクロイツよりも前から存在していたという説もある。中には、薔薇十字団をシオン修道会の下部組織として位置づける者もいる。このシオン修道会もまた、謎に包まれた秘密結社である。
ヨーロッパには、ゴルゴタの丘で磔にされたイエス・キリストが密かに生きのび、マグダラのマリアと結婚して子をもうけたという伝承が残っている。
そうした伝承のひとつに、中世フランスの王家メロヴィング朝こそ、このイエスの末裔の血筋だとするものがある。
シオン修道会はこのイエスの血統を密かに守るために結成されたとされ、そのグランドマスターには、伝説的な錬金術師であるニコラ・フラメル、ルネサンス期の万能の天才レオナルド・ダ・ヴィンチ、画家のボッティチェリ、近代科学の始祖ともいうべきアイザック・ニュートンや作家のヴィクトル・ユゴー、詩人のジャン・コクトーなど、歴史上の人物も大勢名を連ねているという。
『ファーマ・フラテルニタティス』に続いて1615年、同じくカッセルで刊行されたのが、『コンフェッシオ・フラテルニタティス(友愛団の信条)』だ。これは、世界の普遍的改革という薔薇十字団の目的を示した、一種の綱領書である。
そして、1616年にシュトラスブールで出版された『化学の結婚』は、ローゼンクロイツを主人公とした小説の体裁をとっている。
内容は、ローゼンクロイツがイースターの宵に某王家の華燭の典に招かれ、さまざまな障害を乗り越えてなんとか披露宴に出席するのだが、翌日黒ずくめの男が現れて王と王妃を殺害する。そこで、ローゼンクロイツと仲間たちが協力して王と王妃を復活させ、黄金薔薇十字の騎士となる、というもので、錬金術の極意を寓話の形で示した奥義書ともいわれている。
これら3つの文書は、政治的、宗教的な対立が原因で騒乱が絶えず、終末思想が蔓延していた当時のヨーロッパの精神風土に大きな影響を与えた。その結果、多くの知識人やオカルト哲学者がその思想に共鳴し、薔薇十字団との接触を試みた。
近代哲学の祖ともいわれる有名なフランスの哲学者ルネ・デカルト(1596〜1650)も薔薇十字団に入団しようと団員を捜し求めたという。
神聖ローマ帝国皇帝ルドルフ2世の侍医も務めたミヒャエル・マイエル(1568〜1622)やイギリスのイライアス・アシュモール(1617〜1692)などの錬金術師たちも薔薇十字団の秘義を追い求め、イギリスのロバート・フラッド(1574〜1637)などは自ら薔薇十字団員を自称して活動していた。
18世紀になると、薔薇十字団との関連が囁かれるさまざまな秘密結社や魔術団体が誕生しはじめる。その代表的なものが、世界最大の秘密結社フリーメーソンである。
フリーメーソンは公式には1717年に設立されたというが、設立にあたっては薔薇十字団の支援があり、薔薇十字団員が大勢加盟したともいわれている。フリーメーソンと薔薇十字団の関係は、スコッチ儀礼に「薔薇十字の騎士」という位階が存在することからも明らかである。
さらに19世紀になると、イギリス薔薇十字団、カバラ薔薇十字団、アメリカ薔薇十字団、カナダ薔薇十字団など、薔薇十字の名を持つ団体が続々と誕生した。そして近代魔術結社の源流ともいわれるゴールデン・ドーンもまた、こうした薔薇十字系統の団体といえる。
そもそも、ゴールデン・ドーンの共同設立者であるウイリアム・ウイン・ウェストコット、サミュエル・リドル・マグレガー・メイザース、ロバート・ウッドマンの3人は全員フリーメーソンであり、先に述べたイギリス薔薇十字団の団員でもあった。
さらにウェストコットが文通し、魔術結社設立の許可を得たとするアンナ・シュプレンゲルは、薔薇十字団の教義を継承する大陸の結社の魔術師であるとされている。そうなると、ゴールデン・ドーンから分かれた多くの魔術結社もまた、薔薇十字団の継承団体といえよう。
20世紀以降も、薔薇十字を名乗る団体は次々と結成され、多くの団体が21世紀の現代に至るも活動を続けている。
一方で、薔薇十字団の実在については懐疑論が存在するのも事実だ。
17世紀のドイツに現れた、薔薇十字団に関する3つの文書のうち、『化学の結婚』はルター派神学者ヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエの作品であることはほぼ明らかとなっている。
ほかのふたつの文書も、アンドレーエ、あるいは彼の仲間たちのねつ造として、薔薇十字団の存在そのものを疑問視する見方もある。
シオン修道会に至っては、1956年にピエール・プランタールが設立したものであり、その伝説も彼の創作とする見方が有力である。
だが、薔薇十字を名に持つ多くの団体が現在も実在し、活動を続けているという事実は、究極の叡智を守り伝えつつ、人類を密かに導いている謎めいた結社に対する憧憬が、今も大勢の人々の胸の裡に宿っていることを示しているといえるだろう。
羽仁 礼
ノンフィクション作家。中東、魔術、占星術などを中心に幅広く執筆。
ASIOS(超常現象の懐疑的調査のための会)創設会員、一般社団法人 超常現象情報研究センター主任研究員。
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